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「 アレンが書いてよ 」「 嫌です 」
 
 
 このやりとりを、かれこれもう一時間も続けている。
 さすがに飽きてきたけれど、僕もここまできたら、後には引けない。
 ( 自分でも驚くほど、僕は意外に意地っ張りだったらしい )
 
 
 「 アレンくんは年下でしょ?そして後輩でしょ? 」
 「 報告書に上も下も関係ないですよ 」
 「 こーいうのは、下っ端の君が引き受ければいいと思うの 」
 「 上司だからこそ、最後まで統括すべきなんじゃないんですか? 」
 
 
 と言うと、彼女はとうとう堪忍袋の緒が切れたらしい・・・。
 『もーっっ!!!』と、外に立っている探索部隊員まで驚きそうな
 叫び声を上げて、ポケットを探り出す。
 
 
 「 ・・・コイン? 」
 
 
 彼女の白い掌に、ちょこんと鎮座する銀貨。
 真新しい光を放つそれに、窓から差し込む光が反射して、更に輝く。
 
 
 「 そう、コイン勝負よ!表か、裏かを当てるの 」
 
 
 ふんぞり返った彼女が、まるで子供のようで可愛らしかった。
 吹き出しそうになるのを、咄嗟に手で隠した。
 
 
 「 私の持ってるコインなら、アレンのイカサマも通じないでしょ? 」
 
 
 銀の硬貨を、くるくると指で転がす。
 勝ち誇ったような彼女の笑みに、僕も笑みを浮かべた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 彼女とは別の意味の・・・意地の悪い、微笑みを・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 「 さぁ、いくわよ!! 」
 
 
 キイィ・・・ン!
 
 
 小気味良い金属音が響いて、銀貨が宙を舞う。弧を描く。
 一瞬、弧の頂点で止まって・・・そのまま重力に逆らわず、同じ速さで落下した。
 胸の高さで、彼女はさっと手の甲を差し出す。
 反対側の手がすかさず蓋をすると、パチン、と小さな音がした。
 
 
 
 
 
 
 「 表 」
 
 
 
 
 
 
 彼女は、僕がイカサマの天才だと知っているかもしれないけれど・・・
 才能より、武器になるものがないと、イカサマなんかやってられないんです
 
 
 不幸な僕に唯一与えられた、天からの授かりモノ
 
 
 
 
 
 
 「 僕は裏、ですね・・・でも、報告書だけじゃ、つまらないかもしれません 」
 「 へ!? 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 それは、強運
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「 ほ、他に、何を賭けるの? 」
 
 
 何かを悟ったのか、彼女の顔から余裕が消える。
 怯えだした彼女に向けるのは、意地の悪い笑み、なんかじゃなくて。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「 さて・・・何にしましょうか 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 僕は、悩む『振り』をしながら、勝利を確信して・・・
 
 
 極上のエンジェルスマイルを、頬に浮かべた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
03:
「うーんと……じゃあ
 
 
 キス10回分で」
 
 
 ( 彼女のキスも勝利も、全部・・・僕のモノ )
 
 恋する台詞
 
 
 
 
 
 
 拍手、有難うございました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 01 「幸せになるなら、お前とがいい」
  02 「悪いね、好きな子は虐めたくなる性分で」
 03 「うーんと……じゃあキス10回分で」
  04 「ちょっと黙って目ぇ瞑れ」
 05 「あー……愛されてるって感じ」
 
 
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