” ラビが任務から帰ってくるのを、真っ先に出迎えたいから! ”


 電話越し、いや、ゴーレム越しにはしゃいでいたのは、誰だっつーのさ!!


















 教団の中庭。緑の多い茂る、ベンチに身体を預けて。
 膝の上に小さな本を載せた彼女は・・・静かに寝息を立てている。


「 はあ・・・やっぱりなー 」


 こんなこったろうと思ったさー。
 ペラリと本を捲ると、難しい論語の本だった。
 思ったより退屈で、うっかり寝てしまった・・・ってとこかな?


 ・・・小鳥の、小さなさえずりが聞こえてきた。
 燦々と降り注ぐ、午後の日差し。


 光のベールに包まれた彼女の姿は・・・女神のように、神々しい。


「 コレがなかったらなー 」


 俺は苦笑しながら、口元のヨダレを指で拭う。
 ひく、と彼女の口元が強張ったけれど、相変わらず寝息は止まない。
 ・・・いい夢でも、見ているんさ?( だと、いいな )
 ふー、と一息ついて・・・芝生に膝をついて、彼女を真正面から見上げた。


「 ・・・もしも、さ 」








 ブックマンじゃなかったら・・・って、あり得ないけれど。
 

 例えば、の・・・仮定の話だとしてさ。








 俺が、ブックマンじゃなくて。君が、エクソシストじゃなくて。
 此処は、教団の中庭じゃなくて、どこか遠い、異国の街で。
 『普通』の、唯のオトコとオンナだったら・・・どうなってた、かな。




 もっと気楽な気持ちで、君の傍らにいられたのかな。
 好き、とか、愛してる、とか・・・幸せな気分だけで、胸中を満たして。
 手を繋いで、頬を寄せて、口付けてさ。
 二人で、幸福な未来を約束していたのかなぁ・・・。




 ・・・ここのところ、彼女のことを想うと、そんなことばかり考える。
 平凡な、人としてありきたりな未来を、望んでいるのか。
 ブックマンとして生きる道を、後悔しているのか、それとも・・・。
















 今だけ、だから。
 今の、この一瞬だけでいいから・・・。






 彼女との、二人だけの世界を・・・夢見ても、いいですか?
















「 目の前の女神様に、お願いするさ・・・ 」
「 何を? 」
「 って、うわあ!!! 」


 夢は・・・本当に本当に、一瞬で弾けてしまい( 儚すぎるさ! )
 ぱちくりと目を見開いた女神様が、俺を見下ろしていた。
 目覚めた彼女は、挙動不審な俺に、不思議そうな目を向けていたが。


 あ、と一言呟いて。






 マリア像のような、慈愛のこもった眼差しで・・・・・・光の中、微笑んだ。





























「 おかえりなさい、ラビ 」










03: 楽園(エデン)で



逢いましょう



( あり得ない、それでも・・・願わずにいられないほど、愛してる )








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