| 
 ・・・花び、ら
 
 
 
 
 
 柔らかい、春の日差しの中で目覚めた。
 目元を覆った銀糸の向こうに見えた朱い模様に、夢現な僕は釘つけだ。
 ふと、小さな寝息と、時々むにゃむにゃ・・・と何かを呟く声に。
 
 
 「 ・・・あ・・・」
 
 
 思わず上がった声。慌てて口を塞ぐ。
 そ・・・っと隣を見れば、安らかな君の寝顔があった。
 まだまだ夢の世界の、深いところにいるのだろう。
 起きた気配は、全くなかった( よかった )
 
 
 「 ( そうか、花びらだと思ったのは、昨夜の・・・ ) 」
 
 
 ベージュのシーツに横たわった彼女は、そのまま日差しに溶けてしまうかと思った。
 光を受けた髪が、水面のように輝いている。
 左腕の赤い指を伸ばして、そっと唇に寄せる。
 意識のない彼女が、にこ、と微笑んだ気がした。
 ・・・その幸せそうな顔に、僕の頬まで緩んでしまう。
 
 
 
 
 
 
 今、この瞬間、彼女の寝顔を独り占めできる自分は・・・何て幸せ者なんだろう。
 
 
 
 
 
 
 ここまで辿り着くのに、だいぶ時間がかかってしまったけれど。
 辛い日々も悲しい時間も、全てこの瞬間の為にあったかもしれない、
 ・・・なんて錯覚してしまうから、不思議だなぁ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 マナ・・・僕は、幸せ、なんです・・・今、とても・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 明日になれば、戦場へと駆け出していく僕たち
 心に闇が降りようとしても、
 今日、この瞬間を思い出せば、きっと耐えていける
 
 
 
 
 君、という光があれば
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 花びらに、啄むようなキスを送って
 
 
 僕も、まどろみの世界へと戻っていった・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
03:
桜散る頃
 
 ( 愛してる、なんて平凡な言葉しか送れないけれど )
 
 ing.
 
 拍手、有難うございました。
 
 
 
 01「 蕾が花開く時 」
02「 この場所から始まった 」
 03「 桜散る頃 」
04「 10年後のこの日にまた逢おう 」
 
 
 |