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「 あ、おねーちゃ・・・ 」
 
 
 
 
 
 と、挙げかけた手を・・・静かに下ろした。
 朱い陽が差し込む中で、おねーちゃんの身体が二つに折れた。
 自分の目を疑って、俺は窓にへばり付く。
 柔らかそうな( 実際とても柔らかいんだけど )髪を振り乱して、
 小さく、小さくうずくまる。
 
 
 「 ( ・・・泣いて、る ) 」
 
 
 いつも優しくて、いつも温かくて
 いつも笑顔しか見せたことのないおねーちゃん
 
 
 「 ( そういや、告白するって・・・言ってたっけ ) 」
 
 
 ・・・きっと、フラれてしまったんだ。
 かける言葉もない姿に、俺は違和感を感じた。
 ・・・あれ・・・なんだ、こ、れ・・・。
 おねーちゃん、何だろう。俺さ、なんか変だよ?
 チリ、と焼け付くような胸の痛みに、俺まで泣いてしまいそう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 幾つも年の低い俺が見てもわかるくらい、おねーちゃんは急速に恋をして
 俺は、そのおねーちゃんを応援してやりたいって思ったんだ。
 おねーちゃんの笑顔が、もっともっと・・・見たくて。
 
 
 『 ありがとう、遊くん 』
 
 
 その一言が、聞きたくて
 
 
 
 
 
 
 
 
 ( 窓越しに見える貴女に、いつのまにか恋をしていた )
 
 
 
 
 
 
 
 
 おねーちゃんは、しばらく肩を震わせていたけれど。
 やがて制服のまま、ベッドに入ってしまった。
 部屋のカーテンを閉めると、俺もベッドに潜りこんで。
 足を抱えて、丸くなる。
 
 
 居ても立ってもいられない・・・早く早く、オトナになりたいよ。
 おねーちゃんに追い付けなくても、
 おねーちゃんの隣に並ぶに相応しい男になりたいよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 次に、瞳を開けた時・・・一秒でも多くの時が流れていたらいいのに
 
 
 
 
 
 
 願いは涙に変わって、頬を伝った・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
04:
10年後のこの日に
 
 
 また逢おう
 
 
 ( だからおねーちゃん、もう少しだけ待ってて )
 
 ing.
 
 拍手、有難うございました。
 
 
 
 01「 蕾が花開く時 」
02「 この場所から始まった 」
 03「 桜散る頃 」
04「 10年後のこの日にまた逢おう 」
 
 
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