たまには、陽介くんちでも、いいよ。






 そう言ったのは、彼女だった。ちょっと照れたように、はにかみながら。
 俺は「 ・・・え? 」と聞き返したのは、言うまでもない。


 だって、だって、だって。
 えええええっっ!?いいのか、いいのかよっ!!!
 お、おれおれおれ俺のっ自宅に、だだだ男子の部屋にあがるって・・・。


 そ・・・そーいう、コトだよな( 俺、期待されてる!? )


 掃除、して、た、かな・・・急に心配になってきた!
 最低限のモノはちゃんと隠したよな。うん、昨日はしてねーから平気。
 授業以上に( というか今世紀最大 )考えを廻り廻らせている俺の前に、
 ちょこん、と彼女が仁王立ちした( それもまた可愛いのっ! )


「 コラ、ヨースケ!!聞いてる!? 」
「 ふぉ・・・聞いてる聞いてるぜ!? 」
「 ( ふぉって・・・!? )じゃあ、いいの? 」
「 お、おう。お前こそ・・・いいのか。こ、心の準備とか 」
「 ん 」


 少しだけ笑って、コクンと頷いた。
 お・・・おっしゃ、俺もオトコだ、うん!
 彼女がいいなら、俺も覚悟を決めるぜ。と、黙ってその手を握る。






 手を繋いだ影が長く伸びる頃・・・俺と彼女は『 そこ 』にいた。






「 えっぶでえーやん、らい、じゅ、ね、す♪ 」


 ちょっと音痴な歌が聞こえてくる( それも英語、言えてねーし! )
 俺んち・・・俺んち、なぁ。確かに俺んち・・・なのか!?
 ジュネスのフードコートで、対称的な雰囲気を出している俺たち。


「 ねぇねぇ!新ソフトクリーム、マロン味だって!買ってきていい? 」
「 ・・・・・・ああ 」


 好きにしろよ、と言いたげな俺の不機嫌さに気付かず、嬉しそうに駆け出す。
 ちっくしょ・・・ジュネスのことだったのかよ( ・・・考えて損した )
 ベンチでたそがれていると、両手にソフトクリームを持って彼女がやってきた。


「 んっ! 」


 にっこり満面の笑顔で、彼女がソフトクリームを差し出す。


「 ・・・ヤだよ、いらねー 」
「 え、どうして??せっかくヨースケの分も買ってきたのに 」
「 食べるような気分じゃねーの 」
「 ええーっ、私一人でふたつは無理だよーっ!!・・・イケるかなぁ? 」
「 ( 食べる気満々じゃん・・・ )じゃあ、条件 」
「 何?? 」


 不審そうに、じと・・・と俺を見上げる仕草。
 アイスクリームよりも食べちゃいたい彼女を、お仕置きする方法はコレだ!


「 ”あーん”ってやつ・・・やって 」


 俺の真似をするように、あんぐりと口を開けた彼女。
 1秒、2秒、3秒・・・5秒経って。
 彼女の頬がちょっとだけ染まったのは、理解できた合図。
 伝染したように、俺の頬まで染まった( バカやろ、こっちまで照れるだろ )
 しばらくもじもじ、と躊躇った後に。


「 ・・・いいよ 」
「 え( マジ!? ) 」
「 はいっ!ヨースケ、”あーん”して?? 」
「 !!! 」


 頬を染めたまま、首を傾げて。
 溶けかけたソフトクリームを、俺の口に差し出す。
 提案したのはコッチなのに、口を開くのにはなぜか勇気が要った( はずい! )


「 美味しい??マロン味 」
「 ・・・おう 」
「 えへへ、よかった!買ってきて!! 」


 そう言って、自分のソフトクリームを頬張る彼女は、今日一番の笑顔。
 ・・・やっべぇ、可愛い。
 そいつが俺の『 彼女 』ってのも、贅沢なくらい幸せだ、と思った。










 『 俺んち 』の屋上から、夕陽に染まる田舎町を見下ろして。




 俺は、幸せの”素”に・・・・・・そっと、キスをした。










02:絶対的に君なんです



( 君の笑顔があるだけで、俺は空も飛べるような気になるんだ )
ユグドラシル

拍手、有難うございました。

01 幸せだよって、笑って、目を閉じた
02 絶対的に君なんです 03 結びなおせよ、赤い糸
04 キスしたふたりのキスのこと