ドン、と勢い任せにぶつかった壁が揺れた。
「 はあっ、はあっ、は・・・っ!! 」
肩を上下させる。自分でも驚くほど、荒い呼吸。
身体が酸素を求めて、暴れそうなのを、理性が必死に抑えてる。
痺れる手足を動かして、盾にする壁の裏側に回った。
AKUMAの襲来は、相変わらずだ。
アレンやリナリーが苦労して・・・ううん、命を懸けて手に入れた方舟。
移動に時間がかからなくなった分、私たちエクソシストの出動も増えた。
各地に飛び散っては、こうやって任務を遂行している。
「 ( ・・・アレン・・・どうしているかな ) 」
ふと・・・彼を思い出す。
方舟なんて、見つけなきゃ良かったのかな。
異端審問のために、長い廊下に消えていく彼の背中を見て、
ばれないように、私はこっそり泣いた。だって・・・やりきれない。
審問に立ち会ったラビは、心配そうな顔をした私の頭をくしゃりと撫でて、
『 体罰くらったりはなかったさ 』って言ってたけど・・・。
痛みを感じるのは、身体だけじゃないよ。
アレンはそうじゃなくても・・・優しいヒトだから。
辛さも痛みも、一人で全部抱え込んでしまうから、
その細かな傷に気付くのは、とても難しいことだと思う。
・・・きっと、弱音の吐き方も、彼は知らないのかもしれない。
それは、私も辛いんだよ、アレン。
もっともっと頼って欲しい。もっともっと私を受け入れて欲しい。
ちょっと休憩しただけで・・・アレンのこと、思い出しただけで、
身体もココロも、元気が満ちたような気がする。
震えていた指先に力を篭めて、自分のイノセンスを握り締める。
「( ・・・うん、大丈夫 )」
私には『 還る場所 』も『 待っているヒト 』もいるから。
イノセンス発動の声と共に、私は瓦礫の山を飛び降りた。
01:願ったのは奇跡
D.Gray-man「 アレン・ウォーカー 」
( だから、強くなれる )
ユグドラシル