名前を呼ばれて、顔を上げた。
彼が立っていた。逆光に照らされて、表情まではわからない。
私の足元は、とてもふわふわしていて・・・。
あれは、夢なんじゃないかって、そう、思えるのに。
球場の外は未だ歓声に包まれていて。
選手が球場から去っても、あの勝利が現実なんだって、訴えている。
「 俺さ、約束通り・・・勝ったぞ 」
「 ・・・準、太・・・ 」
「 勝ったんだ!! 」
そう叫んで、準太は駆け寄る。
嬉しそうな彼の表情。私の顔も綻びかけて・・・抱き締められる。
「 準太、準太っ・・・良かった、ホント良かったねぇっ!」
両校の試合を思い出して、涙ぐむ。
マウンドに立つ準太の背中を見て、手に汗握って、声の限り応援して。
苦しい局面もあった。短い時間で、どれだけ葛藤しただろう。
なのに・・・準太は耐えて、試合に勝ったのだ。
彼の雄姿に、胸が熱くなった!
そんな人が自分の彼氏だなんて、すごく誇らしい気持ちになった!!
押し寄せる感慨に、とうとう泣いていると、準太が身体を離した。
「 お前さ、泣くなよ、まるで俺が泣かしたみたいじゃん 」
「 むぅ・・・そう、ね。間違ってはいないかも・・・? 」
強がり発言に、準太はぶふっ!と吹き出して笑い出した。
あ、一度こーなると長いんだよな・・・なんて思ったら、私まで笑えてきた。
緊張の糸が、一気に緩んだように。
二人で笑うだけ笑って、見つめあったその瞬間。
「 好きだ 」
真面目な表情の準太が、そっと唇を重ねてきた。
羽根のように軽い、触れるだけのキス。
だけど・・・準太との、初めてのキス。
もう一度込み上げた涙を見た準太が、ため息ひとつ吐いて微笑んだ。
「 だから・・・俺が泣かせたみたいだろ? 」
それはもう、最高の笑顔で。
02:願ったのは奇跡
おおきく振りかぶって「 高瀬準太 」
( 涙も笑顔も、ずっと貴方の隣で )
ユグドラシル