キラキラ光るのは、幸せの『 欠片 』なのかもしれない。


 それがラビの身体を包んでいるから、私の瞳に映る彼は、いつだって眩しい存在なのかもしれない。










 そう・・・泣きたくなるくらい、眩しくて。














 声をかけるのも、躊躇われた。
 ソファに横たわったラビは、とてもじゃないけど行儀がいい、とは言えない姿勢で寝転がってる。
 右足はかろうじてソファに乗っているけれど、左足は落ちている。
 大きな寝息が聞こえてくるのは、眠りの深い証拠だ。


「 ( 昨日、眠れなかったのかな・・・ ) 」


 ブックマンと調べものをするから、長くなるだろうと言っていた。
 教団にいる時は、大抵私の部屋に遊びに来るけど、ここ3日訪れなかった。
 やっと来たか・・・と思えば、この状態で。
 思わず、笑ってしまった( もちろん静かに! )


「 ・・・・・・ん、あ・・・? 」


 持ってきた毛布を身体の上にかけようとして・・・手を、掴まれた。
 目隠し代わりのバンダナをちょっとだけ上げて、エメラルドグリーンの瞳が私を見ていた。


「 ・・・ごめん、起こしちゃった? 」
「 うんにゃ、そんなことないさ。人が入ってくる気配はしていたから・・・ふあぁ 」


 大きく欠伸して、まだ覚醒しない身体をゆっくりと伸ばしている。
 私はクスリと微笑うと、ピッチに入っていた冷水をコップに注ぐ。
 受け取ったラビは、枯れた身体に水を注ぎ込んだ。


「 ・・・あーっ!!生き返ったさー。俺、何日くらいココに来なかった? 」
「 3日間。調べ物とやらは、終わったの? 」
「 ああ。ココ来る前に、コムイんとこに報告してきた 」
「 お疲れ様でした 」
「 ん!・・・ねねっ、ご褒美ちょーだい 」
「 ご褒美?・・・あ、っ 」


 ラビは私の身体を両手で抱きかかえると、そのままソファにもう一度横になった。
 不自然な体勢のまま、一緒に寝転んでしまったので、気持ちが悪くて。
 彼の腕の中で、もぞもぞと動いて( ラビは私を離そうという気が毛頭もないことがわかった )
 楽な体勢に向き直ると、ラビの胸に頭を預けて、私もリラックスする。


 ( ・・・暖かい・・・ )


 小さく聞こえる、心臓の音。
 ラビも、私も、生きている・・・その事実だけで、どうしてこんなにも落ち着くのだろう。
 抱き締められている間は、私もキラキラ光っているのかな。
 光に包まれて、祝福された世界に・・・私たち、二人、だけ・・・・・・










「 ・・・調べたヤツ、イノセンスかもしれないんさ。だから・・・ 」










 きっと俺らのどちらかが、任務に出ることになるだろうな。
 ラビは言葉を詰まらせる。心臓が一際ドクン、と跳ねた・・・。
 ・・・優秀な室長のことだ。今日の夜か、明日の朝には、私かラビに任務が下る。
 私を抱き締める腕に、ラビの力が少しだけ篭った。


「 一緒に、行けたらいいね 」


 そんな願い、叶ったこと、ない。
 余程大きな任務でない限り、エクソシストが3人も一緒に行動するなんてことにはならない。
 ラビとブックマンは、双の存在。だから、私か、ラビの、どちら、か。


「 そうだな 」


 そう呟いたラビだって、とうに気づいているはずなのに。
 優しい嘘がつけるほど・・・『 オトナ 』になってしまったのかな、私たち。




 それは・・・果たしてイイコトなのか、ワルイコトなのか
















 瞳に熱いものが込み上げてきたのを、ラビに知られたくなくて




 彼の胸に・・・痛いくらい、目頭を擦りつけた・・・
















02: 今日も明日もあさっても


( 仮初の約束でもいい。こんなに心が休まるの・・・そんな自分が、嫌いになる、けれど )

回遊魚



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