「「 じゃんっ、けんっ、ぽんっっ!! 」」
出されたお互いの手合いを見比べて、
「 勝ったーぁっ!! 」
彼女が高々と拳を掲げた。と、同時に項垂れる、某の拳。
飛び跳ねんばかりの勢いで喜ぶのと、大地にめり込んばかりに落ち込むのには、ワケがある。
「 それじゃ、謝恩会でのメイドコスプレは、幸村ってことで! 」
「 待たれよ!某では意味がない!! 」
「 勝負に負けたクセに文句つけるなんて、卑怯者のすることよ 」
「 ち・・・違う!文句などつけるつもりは・・・ 」
「 じゃあ、何よ? 」
「 ・・・うっ 」
マ、マネージャーのそなたに着てもらう為に、用意したのに、某が着てどうする!
・・・と言いたい所だが、これは内密の話である。
謝恩会で送り出す諸先輩方々の中に、彼女を好いている者がいて。
彼からの『 どうしても! 』なリクエストが、今回のメイドコスプレ、なるものだった。
最初は、侍女の格好のどこがいいものかと思ったが・・・う、うむ。
こう・・・フリルとか、ヒラヒラしたのがたくさんついていて、
か、彼女が着たら、それはそれで似合うんじゃないか・・・と、某も思う。
そこで、意を決して交渉に臨んだのに・・・この様、だ。
「 こ、こういうのは男ではなく、オナゴが着ればいいのだ! 」
「 それこそナンセンスじゃない?今時、性別なんて関係ないわ 」
それにホラ、と不意に彼女の両手が、某に向かって伸ばされた。
一歩引く間もなく、彼女の身体がとん・・・と胸元に収まる。
首元に回された両腕。耳たぶの下を通って、指先が首の後ろで交差した。
も・・・しかして、某、抱き締められ・・・。
「 髪を解いたら、ますます女性っぽくなって幸村にも似合うと思うんだけどなぁ 」
音もなく、ふわりと待った長い髪は、某のもの。
するりと某の胸から抜け出して、手にしていた髪留めをヒラヒラと見せびらかした。
その余裕たっぷりな笑顔に・・・折れたのは、某の方だった。
「 ・・・・・・承知した。某の、負けだ 」
「 さっすが!それでこそ、日本男子だねっ 」
彼女はもう一度、目の前に立つと、少しだけ左に首を傾ける。
「 大好き、幸村 」
そう言って、某の、
01:思いのほか強く手を握るから、
いつものように笑えなかった
( じょ、冗談だとしても・・・心臓に悪いでござる!なんて破廉恥な!! )
31D/サイダー