一夜の過ち・・・というにはあまりに短すぎる逢瀬で。






 僕は、あのヒトを抱き締める間もなかった。
 コトが終わったのを見計らったかのように、彼女は素早く僕の腕をすり抜けて行く。
 パタンと扉が閉まる音は、現実ものだったのかどうかすら、わからない。


 確実に閉ざされたのだ、とわかるのは・・・








 『 僕 』と『 彼女 』の・・・『 友達 』の関係








「 災難だったなあ、アレン 」


 そう声をかけてくるのは、ラビ。
 大して哀れんでるふうでもなくかけてくる言葉は、右から左に流している。
 誰にも『 あの夜 』のことは話していないはずなのに、なぜラビは知っているのだろう。
 僕が話していないのなら・・・彼女、が?


「 ( いや・・・まさか、でも・・・ ) 」


 情事の話をするほど、彼女はラビに気を許している?
 でもそれじゃ・・・『 災難だったな 』と声をかけてくるのは、ちょっとおかしい。
 ラビに問い詰めるのも、おかしなかんじだし・・・どうしたら。
 感情が、グルグル、ゴチャゴチャな気分でいっぱいになって、食事していた手が止まった時だった。


「 あ、来たぜ 」


 食堂の入り口に姿を現したのは・・・彼女だった。
 少し顔色が悪い。こんな短時間でやつれるほど・・・僕は、負担をかけたということか。
 ラビが大きく手を振って、彼女の名前を呼ぶと、一瞬笑顔になってから・・・凍る。
 そして・・・青かった顔色が、朱色に染まったのを・・・見落としはしなかった。


「 ラビ、これあげます 」
「 はァ!?ちょ、アレン!? 」


 目の前に並んでいた大皿を預けると、踵を返した彼女を追いかけた。








 聞いて、確かめるんだ。




 どうして、あの夜、僕に身体を委ねてくれたのか。
 どうして、すぐに自分の部屋に戻ってしまったのか。


 どうして・・・相変わらず、僕を、こうも惑わすのか。








 身体の中に置いていかれた彼女の『 熱 』が、化学反応を起こすように、胸を熱くする。
 遠目でも確認できるほど、耳まで真っ赤になった彼女に追いつくまで。










 あと3歩、2歩、1、歩・・・










03: 僕は君を見るたびに、




あの夜のことを思い出すのだろうか



( もう友達に戻れないと嘆いた彼女に、好きだと告げて、あの日の分まで抱き締めた )

31D/サイダー



拍手、有難うございました。



01 思いのほか強く手を握るから、いつものように笑えなかった( 戦国BASARA:真田幸村 )
02 さながら恋人みたいに( おおきく振りかぶって:島崎慎吾 )
03 僕は君を見るたびに、あの夜のことを思い出すのだろうか( D.Gray-man:アレン・ウォーカー )