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 二人で空いた時間を過ごすのは、久しぶりだ。
 
 
 
 
 特に何をするわけでもない。俺はベッドに寝転んだまま、差し込む窓からの光の向こうを見ていた。
 彼女はベッドを背もたれに床に座って、一心不乱に両手を動かしている。
 季節は、春から夏へと向かおうとしているのに・・・。
 
 
 
 
 「 何で、今頃セーターなんか編んでるんだよ・・・見てて暑苦しい 」
 「 酷い!コレ、神田のセーターなんだからね!! 」
 「 あ?俺の? 」
 「 そう。今の時期から編まないと、任務とかで冬までに完成しないから 」
 
 
 
 
 編み棒に綺麗に絡められた毛糸は、薄い水色。
 からかう俺に、桃色の舌をべぇ!と出して、また細かい網目に向かった。
 彼女の強情な態度に、思わず息が漏れるが・・・どちらかというと、溜め息ではなく吐息。
 
 
 修練場での鍛錬も、座禅もいいが、こんな時間も悪くない。
 お互い干渉していないようで、二人で過ごすこの部屋の『 空気 』に包まれて・・・安堵する。
 
 
 昔から知っている、慣れ親しんだ『 空気 』。
 
 
 
 
 
 
 何にも換えがたいとわかっているんだ・・・この穏やかな時間が。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 彼女の集中力が途切れたら、美味い茶でも入れてやろうかと、柄にもないことを考えて。
 俺らしくもねぇ、と・・・独り、口元を綻ばせた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 彼に何色が似合うか考えて、昼夜、時間を惜しんで勤しむのが『 手作り 』の醍醐味でしょ。
 
 
 
 
 幼馴染である神田の髪の色は、濃い黒髪だ。
 日本人、ってのもあるかもしれないけど、特に美しい部類だと思う。
 その髪が一番映える色って何だろう、彼のイメージに合うのって何色なんだろう。
 私の中の、色んな『 神田 』を思い浮かべて・・・この『 色 』に決めた。
 
 
 神田はベッドに寝転んで、窓の外見ている。
 私はそのベッドに寄っかかって、編み物をしている。
 
 
 
 
 
 
 穏やかな空間、幸せな時間。
 こうしていると、殺伐とした戦場に立つ時間が・・・嘘みたい。
 増えていく網目は、この『 幸福 』を形にしているみたいだ。
 だって・・・網目が増えていくのは、この時間でしかあり得ないことなんだもの。
 
 
 
 
 
 
 「 ねえ、神田 」
 「 ・・・・・・ 」
 「 ・・・ユウ? 」
 
 
 
 
 昔はユウって呼んでたけど、いつしか嫌がるようになった。
 その呼び名でも応えないってことは・・・。
 
 
 ああ、やっぱり。シーツの上で、身体を丸めて眠っている黒猫。
 編み物を置いて、神田の足元にあったケットをそっと彼の身体にかける・・・と。
 急に眠気が襲ってきて・・・私も、そのままケットに潜り込んだ。
 重なる体温が温かい。周囲は静かで、眠りに落ちるのに時間はかからなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 瞳を閉じて、くっつけた額・・・夢の中でも、逢えるといいね。
 
 
 
 
 
 
02.幼なじみで 
 
 ( 心地良い『 時間 』も『 空間 』も・・・それは、貴方が傍にいるから )
 茨姫
拍手、有難うございました。貴方の拍手が、私の元気の源です。
 
 01.クラスメートで( おおきく振りかぶって:阿部隆也 )
02.幼なじみで( D.Gray-man:神田ユウ )
 03.初恋の相手で( ときめきメモリアルGS2:佐伯瑛 )
04.今も片想いで( PERSONA3-P:荒垣真次郎 )
 05.実は一回フラれてます( 戦国BASARA:片倉小十郎 )
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