二人で空いた時間を過ごすのは、久しぶりだ。
特に何をするわけでもない。俺はベッドに寝転んだまま、差し込む窓からの光の向こうを見ていた。
彼女はベッドを背もたれに床に座って、一心不乱に両手を動かしている。
季節は、春から夏へと向かおうとしているのに・・・。
「 何で、今頃セーターなんか編んでるんだよ・・・見てて暑苦しい 」
「 酷い!コレ、神田のセーターなんだからね!! 」
「 あ?俺の? 」
「 そう。今の時期から編まないと、任務とかで冬までに完成しないから 」
編み棒に綺麗に絡められた毛糸は、薄い水色。
からかう俺に、桃色の舌をべぇ!と出して、また細かい網目に向かった。
彼女の強情な態度に、思わず息が漏れるが・・・どちらかというと、溜め息ではなく吐息。
修練場での鍛錬も、座禅もいいが、こんな時間も悪くない。
お互い干渉していないようで、二人で過ごすこの部屋の『 空気 』に包まれて・・・安堵する。
昔から知っている、慣れ親しんだ『 空気 』。
何にも換えがたいとわかっているんだ・・・この穏やかな時間が。
彼女の集中力が途切れたら、美味い茶でも入れてやろうかと、柄にもないことを考えて。
俺らしくもねぇ、と・・・独り、口元を綻ばせた。
* * * * * * * * * *
彼に何色が似合うか考えて、昼夜、時間を惜しんで勤しむのが『 手作り 』の醍醐味でしょ。
幼馴染である神田の髪の色は、濃い黒髪だ。
日本人、ってのもあるかもしれないけど、特に美しい部類だと思う。
その髪が一番映える色って何だろう、彼のイメージに合うのって何色なんだろう。
私の中の、色んな『 神田 』を思い浮かべて・・・この『 色 』に決めた。
神田はベッドに寝転んで、窓の外見ている。
私はそのベッドに寄っかかって、編み物をしている。
穏やかな空間、幸せな時間。
こうしていると、殺伐とした戦場に立つ時間が・・・嘘みたい。
増えていく網目は、この『 幸福 』を形にしているみたいだ。
だって・・・網目が増えていくのは、この時間でしかあり得ないことなんだもの。
「 ねえ、神田 」
「 ・・・・・・ 」
「 ・・・ユウ? 」
昔はユウって呼んでたけど、いつしか嫌がるようになった。
その呼び名でも応えないってことは・・・。
ああ、やっぱり。シーツの上で、身体を丸めて眠っている黒猫。
編み物を置いて、神田の足元にあったケットをそっと彼の身体にかける・・・と。
急に眠気が襲ってきて・・・私も、そのままケットに潜り込んだ。
重なる体温が温かい。周囲は静かで、眠りに落ちるのに時間はかからなかった。
瞳を閉じて、くっつけた額・・・夢の中でも、逢えるといいね。
02.幼なじみで
( 心地良い『 時間 』も『 空間 』も・・・それは、貴方が傍にいるから )
茨姫
拍手、有難うございました。貴方の拍手が、私の元気の源です。
01.クラスメートで( おおきく振りかぶって:阿部隆也 )
02.幼なじみで( D.Gray-man:神田ユウ )
03.初恋の相手で( ときめきメモリアルGS2:佐伯瑛 )
04.今も片想いで( PERSONA3-P:荒垣真次郎 )
05.実は一回フラれてます( 戦国BASARA:片倉小十郎 )
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