最初は、嫌なヤツって正直思った。




 無愛想だし、いつも顔をしかめてて。何よりお前って呼ばれるの、嫌だった。
 他の女の子のことは、笑顔を絶やさずに名前で呼ぶのに。
 何で私だけ・・・と思ったら、私にだけ、だったんだ。


 廊下で声をかけられて、約束、覚えてる?と声をかけられた。
 うん、覚えてるよ、来週の動物園のことだよね、と確認する。
 ならいいんだ、と軽く頷いた、彼の手をとる。






「 約束 」






 指切りしたからね、と微笑むと。瑛くんは、はっと驚いたように私を見て・・・俯く。
 その耳が、真っ赤になっていた。隠せない気持ちが、可愛くて、また笑った。
 ( でも、泣きそうな顔していたのは・・・何故なんだろう・・・ )
 そんな彼の様子に心がポカポカして・・・瞬間、悟ったんだ。


 愛想笑いを『 浮かべない 』瑛くんに、急降下で落ちていく・・・この気持ち。
 ジェットコースターみたいに駆け抜けていくけれど、着地は至って穏やかだった。




 あ、私・・・瑛くんが、好きかも。












 それが、私の初恋。












 * * * * * * * * * *












 夕暮れの中の、彼女との思い出。




 泣きべそをかいたまま、俺を見上げる黒曜石のような瞳。
 幼心に、胸が高鳴ったのを覚えていて・・・照れ隠しに、涙に濡れた顔を拭いてやった。


 ごめん、俺はまだ君を攫えるくらい大きくなくて。
 ・・・このまま、どこかに行けたらいいのに。お前と離れずにいられる場所まで。
 小さな手を繋げば、機嫌を良くしたのか笑った。ほっとして、繋いだ手に力を込めた。


 夕陽が沈んでいく。海に消えた時が、タイムリミット。
 でも消えるまでは・・・俺と彼女の『 時間 』だ。






「 また逢える 」






 そう言う俺にしばらく考えてから、彼女が頷く。






「 約束 」






 絡めた小指に、想いを乗せて。
 別れてからも、あの時のことを忘れたことなんてなかった。
 例え君が忘れていたとしても・・・俺は、覚えているから。












 それが、俺の初恋。




03.初恋の相手で


( すれ違った恋でも、いつかきっと、重なる日が来る )
茨姫

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01.クラスメートで( おおきく振りかぶって:阿部隆也 ) 02.幼なじみで( D.Gray-man:神田ユウ )
03.初恋の相手で( ときめきメモリアルGS2:佐伯瑛 ) 04.今も片想いで( PERSONA3-P:荒垣真次郎 )
05.実は一回フラれてます( 戦国BASARA:片倉小十郎 )