暗闇に目が慣れるのを待って、道の端に寄って腰を下ろした。
右足が熱い・・・恐る恐る触れると、思わず痛みに悲鳴が上がった。
今日のタルタロスの構造は不安だって、風花がちゃんと教えてくれたのに・・・。
迷宮にヒトが迷い込んでいると知って、焦った結果。
みんなとバラバラになって、怪我するなんて・・・私、リーダー失格だ。
自己嫌悪と不安に負けて・・・涙が零れた、時だった。
「 おい、大丈夫か!? 」
「 ・・・荒垣、先輩っ! 」
少し離れたところから、たたた、と足音がして駆け寄ってきた姿は、荒垣先輩だった。
見知った姿を見つけて( でも、それが荒垣先輩だったから、ってこともある )また涙が溢れた。
泣いているのか、と問われて、思わず首を振ってしまったけれど。
先輩はふと、私が座り込んで動かない気づいて・・・そっと、私の脚に触った。
「 痛っ! 」
「 くじいてるみてえだな・・・立てるか? 」
「 ・・・いえ・・・・ 」
「 ちっ、仕方ねえ・・・乗りな 」
と、背中を向けてきたので慌てて断るけれど、荒垣先輩の眼光に・・・負けた。
腕を遠慮がちに回すと、がしっと掴まれて、私の腕を自分の肩に回すと立ち上がった。
力の入らない足首が、宙に浮く。振動で、先輩の首元に首をうずめると・・・先輩の匂いが、した。
そして、私に駆け寄る前に見つけたという脱出ポイントまで、シャドウに見つからないように進む。
「 す、すみません・・・先輩 」
「 気にするな。こういうことは、お互い様だろうが 」
背中越しに聞こえた声は、優しさに満ちていて・・・。
泣き止んだはずなのに・・・ほっとすると同時に胸が苦しくて、一粒だけ、雫が耳元を伝った。
脱出ポイントまでの道のりが、少しでも長ければいい、と不吉なことを考えてしまうくらい。
やっぱり、私・・・先輩のこと、好きです。
* * * * * * * * * *
アイツの、顔色が優れないように見えた。
体調が悪そうだったのだから・・・やはり、止めるべきだった。
タルタロスに入って、階段を昇っている途中で・・・突然、視界が反転した。
風花の奴が言ってた『 不安定 』ってのは、このことか。
気がつけば、探索をしていたメンバーからはぐれちまったみたいだ。
召喚器は・・・ある。シャドウに遭遇しても、上手く避ければ力を消費せずとも戻れるだろう。
幸い、脱出ポイントはすぐに見つかった。入ろうとして、躊躇う。
緑の光に足を踏み入れようとした時、アイツの声が・・・聞こえた気がしたんだ。
「 おい、大丈夫か!? 」
「 ・・・荒垣、先輩っ! 」
左程遠くない距離から聞こえた悲鳴を頼りに、暗闇を辿る。
道端に座り込んだ姿は・・・紛れもなく、彼女だった。
泣きっ面だったが、無事な姿を見つけて、内心ほ、と胸を撫で下ろす。
視線を追えば、脚ばかり気にしている・・・腫れているのか?
「 痛っ! 」
「 くじいてるみてえだな・・・立てるか? 」
「 ・・・いえ・・・・ 」
「 ちっ、仕方ねえ・・・乗りな 」
背中を向けてやれば、ガキのくせに一丁前に照れているのか、動きが鈍い。
いつシャドウに襲われるかわからねえって状況が、コイツ、わかってねーのか!?
俺は少々乱暴に、彼女の腕を引き上げて、自分の肩に背負った。
「 す、すみません・・・先輩 」
「 気にするな。こういうことは、お互い様だろうが 」
彼女の吐息が、俺の耳元をくすぐる。くすぐったいけれど、そうも言ってられねえ。
やはり具合が悪かったのだろう。呼吸は荒く、しばらくするとぐったりと俺にもたれた。
もたれたと言っても、所詮はオンナだ。アキほど重くねえし、オンナの中でもコイツは小柄だ。
・・・明日は、精のつく料理でも作ってやるかな。
学校は休むだろうから、腹いっぱい食べて、ゆっくり寝かせれば回復するだろう。
背中越しに、安心しきった彼女から伝わる体温に、俺の頬も自然と緩んだ。
04.今も片想いで
( 心底信頼されるってのも・・・くすぐってえモンだな )
茨姫
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01.クラスメートで( おおきく振りかぶって:阿部隆也 )
02.幼なじみで( D.Gray-man:神田ユウ )
03.初恋の相手で( ときめきメモリアルGS2:佐伯瑛 )
04.今も片想いで( PERSONA3-P:荒垣真次郎 )
05.実は一回フラれてます( 戦国BASARA:片倉小十郎 )
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