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 先生と生徒の恋なんて、漫画か小説の中でしか成り立たないと思っていた。
 なのに私が恋したのは、ひと回り近く違う先生だった。
 
 
 
 
 鏡の前でくるりと回ってみる。シフォン素材のスカートがふわりと舞う。
 清楚で、ガーリーだけど、子供っぽくなく、適度に大人っぽい。
 うん、我ながら完璧なコーディネート。バイト代叩いて、美容院行って服も靴も揃えた。
 ・・・全部、今日の同窓会に合わせて、だ。
 
 
 自宅を後にして、電車に乗る。会社は逆方向だから、この車窓の景色は久しぶりだ。
 
 
 
 
 「 小十郎先生 」
 
 
 
 
 彼の名前を、魔法の呪文のように何度も呟いてた。
 人生初の告白を断られた後も、それだけは変わらなかった。
 
 
 
 
 「 もし俺がお前の目に魅力的に見えたとするなら、それは単なる憧れだ。
 子供の恋愛に付き合ってはやれねえ 」
 
 
 
 
 今考えると、相当・・・いや結構酷いと思う。
 だけど、恋に浮かれた私には効かなかった。
 小十郎先生の腕にしがみついて、どうすれば付き合ってくれるのか尋ねた( 若かったなあ・・・ )
 
 
 
 
 「 10年経って変わらなかったら認めてやるよ 」
 
 
 
 
 他の人とも付き合ってみたけど、やっぱり先生が好き。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 今夜そう告げたら、小十郎先生はどんな顔するかな。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 教師と生徒の恋なんざ、天地がひっくり返ったてあり得ねえ。
 
 
 
 
 若輩ながら、10年教師をやってきて思うことは、生徒はみな可愛い。平等に、だ。
 素行や態度が悪かろうと、どこか素直で、純粋。
 荒削りな魂を持つ、原石のよう。
 
 
 
 
 「 小十郎先生が、好きです! 」
 
 
 
 
 だからこそ、道を誤ることもある。
 教師になって一年目。そう告げた女生徒を救う意味で、俺は突き放す。
 まだ青い。成長して、世の中を知れば、彼女は幻などに騙されなくなるだろう。
 
 
 だけど・・・10年経っても、あの真っ赤に染まった顔が忘れられない。
 あれは幻なんか見てた瞳じゃねえ。
 
 
 
 
 
 
 彼女は確かに恋をしていた・・・よりによって、この俺に、だ。
 
 
 
 
 
 
 「 小十郎先生!お久しぶりです! 」
 「 よお、でかくなったな、みんな 」
 
 
 
 
 『 可愛い 』生徒たちの、成長した姿に感動しつつ( これが教師の醍醐味ってやつだな )
 無意識に・・・アイツの顔を探してる。
 そんな『 俺 』に、自分でもびっくりしてる。
 瞼の裏の、赤面してた表情。クラスで見せてた笑顔、泣き顔。がっかりしてた背中。
 
 
 彼女を知れば知るほど・・・『 イトオシイ 』
 
 
 あの日のことなんか、きっと彼女は忘れているだろう。
 言わなければ良かった。言葉に縛られているのは・・・俺の方だ。
 
 
 
 
 「 小十郎先生 」
 
 
 
 
 後ろから、聞き覚えのある声がした。媚びる感じのない、柔らかな声。
 身体が固まる・・・俺は、緊張しているのか?生唾を飲み込むと、ごくりと喉が鳴った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 振り向き様に恋に堕ちるのは、それから5秒後の出来事。
 
 
 
 
 
 
05.実は一回フラれてます 
 
 ( 教師と生徒の垣根を越えて、俺と彼女は、もう一度・・・出逢う )
 茨姫
拍手、有難うございました。貴方の拍手が、私の元気の源です。
 
 01.クラスメートで( おおきく振りかぶって:阿部隆也 )
02.幼なじみで( D.Gray-man:神田ユウ )
 03.初恋の相手で( ときめきメモリアルGS2:佐伯瑛 )
04.今も片想いで( PERSONA3-P:荒垣真次郎 )
 05.実は一回フラれてます( 戦国BASARA:片倉小十郎 )
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