「 Wait!それを入れるなっ! 」
ぱしゃーん、と小さな水音を立てて、鍋の中に強制突入していく食材。
止めようと思って、伸ばした手が、宙を掴む。
彼女がまな板を片手に、不思議そうな顔を俺に向けている・・・どっと溜め息が漏れた。
「 あ・・・あれ、もう入れていいんじゃなかったっけ? 」
「 まだだ!今、俺が用意している調味料を入れてからだっつっただろーが!! 」
「 ・・・ごめんなさい 」
「 Ah・・・気にすんな。上手に混ぜりゃ、そんなに気になんねえだろ 」
・・・Shit、怒りすぎたか?
まな板を置いた彼女の手が、少しだけ震えているのが解る。
怒る気なんかこれっぽちもないのに、ちょっと声を荒げるだけで、彼女に怖がられてしまう。
俺は持っていた包丁を安全な場所に置いて、鍋の様子を睨んだ。
よく煮えている・・・しばらく、このままでも平気だろう。
念のためにかき混ぜて、手を洗うと・・・立ち尽くしていたままの、彼女の手を引いた。
「 ま、さむね・・・? 」
「 Come here,・・・少し、休憩しようぜ 」
うん、と頷いたのを確認して、リビングの椅子に2人並んで腰掛けた。
真新しいソファは、まだ硬くて。重さに抵抗するように、ぎし、と音を立てる。
・・・沈黙が、流れる。
俺はそっと彼女を盗み見ると、申し訳なさそうに、小さく丸くなって固まっていた。
膝の上で握り締められた彼女の拳に、俺の掌を重ねる。
「 ・・・Honey,俺は欠片も怒ってないぜ? 」
「 う、うん・・・わかってる 」
「 わかってねえだろうが。もっと堂々と構えていろよ、な? 」
「 堂々ったって・・・・・・きゃっ! 」
ようやく本音が出てきたのか、拗ねたように口を尖らせたアイツを抱き締める。
驚いた表情で、俺の胸にすっぽりと収まった。その顔を俺のほうへと向かせ、視線を上げさせる。
彼女の曇りない瞳には・・・にやりと微笑んだ俺が映っていた。
「 俺が心底惚れて、嫁に迎えてえと思ったのは、他の誰でもない・・・お前だけだ。
だから堂々としてろ、って言ってんだ。この伊達政宗の妻だって、胸張って生きろ 」
愛してるぜ、Honey・・・と呟いて、その唇に軽く吸い付く。
唇と唇の離れる音に、彼女がぽっと頬を染める。そして、照れたように微笑んだ。
甘えるように胸に額をくっつけて、しばらく抱き合った後・・・ふと、彼女が鼻をひくつかせる。
「 ねえ、政宗・・・なんか臭わない? 」
「 ・・・Shit!! 」
台所まで確認しに行くまでもねえ・・・この、焦げ臭さ!
こりゃ、手作りの昼食は諦めて、外食したほうが良さそうだな。
俺は頭を掻いて・・・火を止めて肩を落としている彼女に、外食を提案してみる。
自分のせいだと思っていやがる彼女は( こんなの、誰のせいでもねえだろうが )
少し躊躇っていたようだが・・・もう一度強引にキスすれば、苦笑交じりに頷いた。
その笑顔を確認すると、車のキーを手にとって、反対側の手で彼女を誘う。
まあ・・・たまには、こんな日もあるさ
エンドレス・ラヴストーリー