たまにゃあ、散歩にでも行こうや!






 と、連れ出すときに握った手を・・・俺は、まだ離せずにいる。
 彼女は、一段高くなったオレンジ色の煉瓦の上を、器用にバランスをとりながら歩いていた。
 一歩一歩、ワクワクした顔で足取りで歩く姿は、まるで子供のよう。
( そんなところも、すっげえ可愛いんだけどな! )


「 よ、っとっと・・・慶次もやってみる?こーいうの、得意そうだけど 」
「 俺はお前が楽しいなら、それでいいよ 」
「 そ?あ、でも、そろそろ危ない、か、も・・・っ!! 」


 宣告どおり、彼女は足を踏み外してよろける。握っていた手を腰に回して、身体を横から支える。
 まるで掬うように。そのままお姫様抱っこしてやると、彼女はほっと一息吐いてから・・・。
 自分の状態にはっ!と気づいてから、頬を赤らめて・・・拗ねた素振りで、俺を睨む。


「 ・・・慶次、恥ずかしいよ。他のヒトが見てる・・・ 」
「 何で?いいじゃん。俺ら夫婦なのに、照れることないだろ 」


 微笑んで見せれば、俺を非難していた目を丸くして・・・諦めたかのように、ゆっくりと笑顔になった。
 その百面相を堪能してから、俺は彼女の額に小さなキスを降らせる。










 一度は・・・手を、離したヒトがいた。




 離れた手を握り締めることは、二度となかった。
 もう・・・この手に掴めないことを知って、いっぱい泣いて、いっぱい後悔したけれど。
 そんな、臆病になった俺の手を、両手で握り締めてくれるヒトが現れた。




 絶対に、離さないよと、優しく微笑む・・・彼女の『 存在 』、が・・・










「 ・・・慶次、どうしたの? 」
「 うん、やっぱ、俺さぁ・・・ 」


 あんなに嫌がっていたのに、お姫様抱っこはもう気にならなくなったのか。
 しばらく黙ったままの俺を・・・彼女は、不思議そうに見上げている。
 夏の、照りつけるような日差しを避けて、葉陰の中に彼女を下ろす。
 向かい合うように立つと、見つめ合った彼女の唇にちゅ、っと口付けた。




 ( ・・・あ、もちろん、手は握ったまま、で )




「 お前のこと、大好きだなぁって思ってさ 」
「 ・・・っ! 」
「 ホント・・・俺、すんげえ幸せ。すごく、すごく・・・・・・好きだ・・・ 」




 人目なら大丈夫。ここの公園、今の時間ならヒトが少ないからさ。
 なんて、言い訳にならないかもしれないけれど・・・今、キス、したかったんだ。
 この胸に溢れる想いを、どうしても今、お前に伝えたいって思ったからさ。


 彼女は、驚いた表情だったけれど・・・恥ずかしさを堪えて、そっと俺のキスに応える。
 風に揺れる二人の影が、静かに寄り添った。








 閉じた瞳に涙が浮かぶほどの、幸せ。
 ああ、恋っていいなあ・・・恋ってのは、こんなにも俺の心を満たしてくれるのか。
 どんな時でも、どんな俺でも、受け入れてくれる彼女を・・・キスの合間に、そっと盗み見しながら。








 その『 優しさ 』に甘えてしまう俺を、どうか赦して・・・。














 そして今度こそ・・・今度こそ、この手を一生離さずにいられますように








エンドレス・ラヴストーリー



03.Afternoon( 前田慶次 )



( そんな弱い俺でも、きっと彼女なら受け入れていると信じているから )
( どんな慶次だって、好きだから。どうか私の前では素の貴方でいてね )
泪と砂糖水

拍手、有難うございました。貴方の拍手が、私の元気の源です。

01.Morning( 真田幸村 )02.Daytime( 伊達政宗 )03.Afternoon( 前田慶次 )
04.Evening( 猿飛佐助 )05.Night( 竹中半兵衛 )



10.Midnight( ? )