ただいまー・・・と玄関に自分の声が木霊する。






 返事はない。チャイムを鳴らした時に、反応ないから期待はしてなかったけれど。
 締め付けられていたネクタイを緩めて、真っ暗だったリビングに足を踏み入れる。
 あえて電気はつけずに、気配を消して中央にあったソファに近づくと・・・。




 ( ・・・やっぱり )




 想像通りで、思わず苦笑してしまう( それすら、気づかれないようにするけれど )
 ソファの隅で、タオルケットを被って震えている、小さな塊がある。
 抜き足差し足でソファの向かいに立ち、一気にタオルケットをめくった。




「 ・・・・・・・ッッッ!!! 」




 悲鳴も上がらないほど、怖がっていたのか・・・。


 彼女の顔が大きく歪んだ。日頃見ないような、きっつい眉間の皺に、溜まらず苦笑する。
 一瞬、そんな俺様に激怒したみたいだけど・・・安堵感の方が勝ったのか。
 ぐしゃぐしゃの泣き顔をさらにゆがめて、佐助ぇ・・・!と抱きついてきた。


「 おいおい、どうしたんだよ・・・まァた怖い番組でも見ちゃったワケ? 」
「 だ、だって!TVつけたら、いきなり放映しているほうが悪いんだもんっ!! 」
「 そーいうときは、すぐチャンネルを変えなさいって、言ってあるでしょうが 」
「 ふえ・・・、ふえぇえん、佐助、佐助ぇ・・・ぇっ! 」


 余程こらえていたのだろう。もう俺様の声も通らないくらい、うわんうわんと慟哭する彼女。
 こっそりため息を吐いて、彼女を抱えてソファに座る。
 膝の上に乗せて、背中を撫でてやれば・・・俺の首に両腕を巻きつけた。


 ・・・・10分も経った頃、だろうか。
 双肩の揺れが小さくなって・・・ようやく、泣き止んできたようだ。
 力を抜いて、ことん、と肩に頭を預ける。小さく、ごめんね、と聞こえた。


「 ・・・ドラマ、見てたの。旦那さんの、亡くなるシーンで・・・つい、佐助と重ねちゃった・・・ 」


 俺様は、まず『 ホラー番組じゃなかったんだ 』と驚き、『 ドラマと重ねちゃうんだ  』と呆れた。










 ったく・・・ホント、子供じゃないんだから・・・。
 がっくりと脱力するけれど、嫌じゃない。彼女の、そういうことろが好きで、俺は結婚したんだ。
 お調子者に見せているだけで、本当は心の底まで冷え切った部分のある俺様と。
 感情の起伏が激しいくらいだけど、心根まで暖かい彼女。


 夫婦で足りないところは補いあって・・・なんて、クサいセリフは嫌いだけど。






 でも・・・そんなカタチもアリなのかな、って思えるのは、彼女のおかげ。










「 俺様、残念ながらそんなヤワじゃないから。お前を残して、死んだりしないよ 」


 ・・・ホント?と首を傾げる彼女に頷いて見せれば、ようやく笑ってくれた。














 弱々しかったけれど、俺様がつられて微笑ませるには、十分な笑顔で。


 いつもより少し強めに愛と力を込めて・・・彼女を、抱き締めた








エンドレス・ラヴストーリー



04.Evening( 猿飛佐助 )



( 豆腐の角に頭をぶつけて死んじゃう、っていうコメディドラマだったんだけどね )
( ちょ・・・そんな男と、この俺様を一緒にしないでくれる? )
泪と砂糖水

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01.Morning( 真田幸村 )02.Daytime( 伊達政宗 )03.Afternoon( 前田慶次 )
04.Evening( 猿飛佐助 )05.Night( 竹中半兵衛 )



10.Midnight( ? )