パタパタ、と隣を確かめれば、温もりのない、冷たい寝床。






 いつものことなので、それが寂しいとは思わなくなった。
 ゆっくり身体を起こして、目を擦る。布団の脇に畳んであった羽織を纏ったところで。
 起きたか・・・と小さな声がした。


「 うん・・・おはよ、元就さん 」
「 起きたのなら、早う来い 」


 ・・・傍に、と。


 私はこっそり笑うと( 本当はとっても寂しがり屋さんなのだ )言われた通り傍に寄る。
 薄い夜着一枚で縁側に座って、夜明けを待つ。空が白んでいるので、もう間もなくだろう。
 隣に腰をかけて、羽織っていた着物を半分こにするように、元就さんの肩にもかけた。
 驚いて、恥ずかしそうにもぞもぞと動く彼を捕まえて、風邪引いても困ります!と諌めた。
 元就さんは意外にも、素直に頷くと、視線を地平線の向こうへと戻した。










 その景色に『 言葉 』は必要なかった。










 この奥間の縁側は海側に面していて、一番美しい夜明けを拝める、唯一の場所だった。
 ( そんな場所に奥間を用意してくれたのは、元就さんが一緒に見たいと思ってくれているから )
 昇ろうとする朝日に包まれて・・・私はうっとりと瞳を閉じる。
 すると、ぐいっと引っ張られて、私の頭は元就さんの肩の上にちょこんと置かれる。
 驚いて見上げれば、彼は一瞥もくれずに、ただ・・・前だけを見据えている。


「 ( いい、ってことなんだよね・・・きっと ) 」


 頬を摺り寄せれば、彼の匂いがした。この世で、一番私を安心させる、匂い。
 ・・・それは先程まで、褥で嗅いだ香りだ。






 元就さんは寝床を出ても、何度も褥に戻ってくるのを、私は知っている。
   自分が布団から出る時も、そっと起こさないように細心の注意を払っていることも。
 自分のせいで起きてしまったのではないか、と、私の眠りを確かめにやってきているのも。






 ふ、と口元が緩んだのを、元就さんは見逃さなかったらしい。
 怪訝そうに眉を寄せて、目を瞑ったままの私を覗き込んでいる気配がした。


「 元就さん、大好きです 」


 乗せた頭をこすり付ければ、元就さんの肩がぴく、と震えて。
 長い沈黙の後・・・重い口を、ようやく開いたのだった。















「 ・・・・・・知って、おるわ。我も同じ気持ちだから、の 」















貴方に溺れる



01.朝( 毛利元就 )

( はっ、恥ずかしい台詞を・・・朝から言わせるでないわ! )
( でもちゃーんと答えてくれる、元就さんが、本当に大好きだよ )
泪と砂糖水

拍手、有難うございました。貴方の拍手が、私の元気の源です。

01.朝( 毛利元就 )02.昼( 長曾我部元親 )03.午後( 徳川家康 )
04.夕刻( 風魔小太郎 )05.夜( 石田三成 )



10.Morning( ? )