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 好きです、付き合ってください、と言われたのは、もう一ヶ月前のことだ。
 
 
 
 
 
 
 全く知らない女子であったが、必死に・・・本当に必死に。
 泣いているんじゃないかと思うくらい、肩を震わせて告白に臨んだ彼女を見て・・・。
 某は、思わず頷いてしまったのだ。
 
 
 それもきっかけの一つだ、と周囲は言うけれど、某には、イマイチ納得できないのだ。
 彼女が、遠くからずっと某のことを見ていてくれたのだと言う。
 気がついたら好きだったんです、と頬を染めて語る姿は、とても愛らしい。
 愛らしいとは思うけれど・・・これが、恋愛感情なのかは、わからぬ。
 某に思いを寄せてくれる彼女に、申し訳ないとすら思う。
 
 
 
 
 
 
 その思いに比例するだけの、愛情を還せないこと。
 
 
 彼女のことを・・実は、愛していないんじゃないかと、内心自分を疑っていることに・・・。
 
 
 
 
 
 
 「 ( ・・・あ ) 」
 
 
 今日は珍しく、お互いの講義の終わる時間が同じだったので、一緒に帰ろうと言われていた。
 待ち合わせ場所である、大きな時計台の下に、彼女の姿があった。
 
 
 ・・・が、一人ではないことに気づく。
 
 
 今まで柱に隠れていてわかりづらかったが、某よりも背の高い男の影。
 振り向いた彼女が、男に語りかける。男の唇が持ち上がって、彼女の頭を撫でる。
 嬉しそうに微笑んで、寄り添うように( 恋人なのは・・・某、なのに )
 冗談でも言い合っているのか、身体を並べてじゃれる姿に・・・胸が、握りつぶされる。
 
 
 「 ( あんな、表情・・・某の前では、一度も見せたこと、ないのに ) 」
 
 
 
 
 
 
 無邪気で、明るい笑顔が彼女の魅力。
 彼女の『 笑顔 』が、某の心を、日々紐解くように・・・ほだされていくのが解る。
 
 
 そんな彼女だからこそ・・・某、は・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
 ( けれどそれを、自分以外の男にも見せていることが、こんなにも腹立つのは・・・何故 )
 
 
 
 
 
 
 「 ・・・あれ、幸村くん!いつの間に来・・・・・・、っ!! 」
 
 
 某に気づいて、小さく手を振っていた彼女を、突如胸に抱きすくめる。
 ぎしり、と音が出たんじゃないかと思うほど身体を固まらせたせいで、肩にかけていたバッグが落ちた。
 その音に周囲を歩いていた学生が振り返るが・・・むしろ、某にとっては好都合。
 唇の端が、薄っすらと持ち上がるのがわかった( 彼女に見えなくて、本当に、良かった・・・ )
 
 
 「 ・・・そなたは、某のもの、でござる 」
 「 ゆ、きむら、くん・・・? 」
 「 なあ・・・某のもので、ござるよな、そうであろう? 」
 「 え・・・あ、あの・・・・・・う、うん・・・ 」
 
 
 こく、と頷いたのを確認し、抱き締めていた腕を少し緩める。
 腕の中で、真っ赤に頬を染めて、上目遣いで伺うように見てくる彼女。
 そんな彼女に・・・某は、いつものように優しく『 笑えた 』であろうか・・・。
 
 
 珊瑚色の唇に、周囲の人目も気にせず自分のを重ねた。
 驚愕と羞恥で、どうしようもないほどパニックになっている様子だったが・・・。
 
 
 
 
 やがて、大人しく瞳を閉じて・・・某の成すがままに、身体を預けてきた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 愛しているか、愛していないか、だなんて、何故悩んでいたのだろう。
 
 
 
 
 この感情が『 愛 』だなんて括りに収まらないほど・・・某は、
 
 
 
 
 
 
04.恋 拍手、有難うございました。貴方の拍手が、私の元気の源です。
 
 
 欲しいんです、どうしようもなく
 
 ( 胸中の炎で自ら焼かれてしまうほど・・・狂おしいくらい、そなたが愛しいのでござる )
 capriccio
 
 01.愛( 松永久秀 )02.甘( 片倉小十郎 )03.悲( 猿飛佐助 )
 04.恋( 真田幸村 )05.幸( 伊達政宗 )
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 10.戀( ? )
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