「 ・・・は? 」
「 だーかーらー!俺、が好きだって言ってんの!! 」






 普通さ、告白とかって、放課後の校舎裏とか、人気のない廊下とかさ。
 てっきりそーいうトコロでこっそり発展するモンだと思っていたけど・・・。
 それってアタシの、単なる妄想だったのか、なぁ・・・。


 だって、ここは学校の教室で。
 掃除時間だから、みーんな周囲にいるし( そして呆気に取られている、当然だけど )
 あんぐりと口を開けたアタシの前で、田島が、ニシシと笑った。
 この程度の『 好き 』、流してしまえばよかったのに。
 グラウンドで頑張る田島を見ちゃった( ・・・見なきゃ良かった )ある日の彼に
 とっくにアタシは、一目惚れ・・・・・・流せるワケ、ないじゃない。


「 おーい、?? 」


 瞬きすらしないアタシを、田島が覗き込んだ。
 ワンテンポ遅れて、クラスメイトの黄色い声が教室を震わせる。
 高校生ったって、ガキはガキ。子供のように、私たちを囃(はや)し立てる。
 野次は廊下にいた生徒達の感心を引き、隣のクラスからこぞって人が集まってきた。


「 ちょ・・・ちょ、っと!とりあ、え、ず!! 」


 彼の首根っこを掴んで、一度教室から出ようとする。
 おー!とか言いながら、相変わらずヘラヘラしてるコイツが、と・て・も・ム・カ・つ・く!!
 ドアをくぐろうとしたところで『 ・・・屋上なんかいいかもよ?人いないし 』と、浜田。
 やっさしーなー、ハマちゃん( こーいう人に惚れりゃー良かった、遅いけど )


 忠告通り、アタシは田島を引きずって、屋上へ続く階段を駆け上った。




















 ・・・青空が、目に痛い。
 清々しいほど晴れたお日様の下で、何でアタシはこんなに気分が重いんだろ・・・。
 田島を掴んでいた手を離し、彼とアタシは対峙する。
 風が吹いて、田島の短い黒髪が揺れた。アタシはスカートの裾を気にしながら、彼を睨む。


「 何だよー。襲うつもりなら、もっと色気のある場所にしてくれよなー 」
「 そういう問題じゃないでしょ!?どういうつもりなのよっ!? 」
「 どういうって・・・・・・別に 」
「 別に、じゃ、なーいっっ!!! 」


 ようやく呪縛から解かれたかのように、アタシは捲くし立てる。


「 な、なな、なんっ、何なのよっ!?す、す、す・・・・・・ 」
「 好きだ 」
「 そ・・・そう!それよ!! 」


 どうして、田島はこんなに余裕なんだろう。好きとか平気で言えちゃうんだろう。
 何か・・・動揺しちゃってるアタシが、道化みたいじゃない。
 ・・・あ、ダメ。何だか泣きそう。
 さっきまで、告白されて、一瞬だけでも嬉しかったのに。
 マイナス思考が働いて、あの告白は嘘だったんじゃないかって・・・思えてくる。


「 あれ?・・・おーい、どうしてが泣くんだよ 」
「 だ・・・だって、た、じま、が・・・ふ・・・ふぇーんっ!! 」


 終いには泣き出したアタシに、さすがに焦り出した田島が声をかける。
 スカートのポケットからハンカチを取り出して、その場に座り込んだ。
 どした?どした?・・・と、彼が私を中心に歩き回っている気配を感じる。
 ・・・っとに!落ち着きの無いヤツめ!!


「 、もしかして他に好きなヤツ、いんのか? 」


 その問いに、ぴたりと涙が止まって、アタシは思いっきり首を振った。
 違う、それはないよ!だって、だって、アタシ・・・ずっと・・・
 そう言いたいのに、声の代わりに、止まっていた涙がまた零れ出す。
 なーんだ、良かったぁ!という田島の声が、辺りに響いて。
 ちょっと固い掌が、アタシの頬を包んだ( この手で、三橋クンの球を打つんだ )


「 俺、のこと、好きだ 」


 田島は、相変わらずヘラヘラ笑ってたのに。
 近くで見た瞳は、あの日と同じ・・・とても真剣なものになっていた。
 そうだ、アタシ・・・この、瞳に惚れたんだ。


「 は? 」
「 ・・・・・・え、っ 」
「 は、俺のこと、好きか?? 」






「 好き!! 」






 思わず・・・即答したアタシは、反射的に口を押さえた。
 顔が赤くなっていくのが解る。熱が頭の天辺まで、グングン昇っていく。
 茹でタコになっている( であろう )アタシを見つめて。


 また、ニシシ、と笑った。






「 おう!!ぜってぇ大切にする、ゲンミツに!!! 」
















 ゲンミツに、の意味が解らないよ、田島






 まぁ、いいか、と諦めて( だって、やっぱり嬉しかった! )
 アタシは『 彼氏 』に・・・・・・最高の笑顔を、プレゼントした


















永遠





( そんな貴方に、恋をしたんだ! )






Title:"loca"
Material:"NOION"





覗きに行こうとした生徒たちは、ハマちゃんとミハシが食い止めたという、裏設定あり( いらないし!w )
田島の夢だけは、書くまい、と思っていた、の、に・・・orz