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 朝の強い光が、眠りの世界の奥底まで、照らした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 あと5分寝かせろよ、オフクロ・・・と呟きかけて、口篭る。
 ・・・あっぶねー・・・ココ、合宿所だ。
 
 
 
 
 なのに、周囲に部員の気配がしない。
 朝食時間なのだろう。誰か気を利かせて、起こしてくれてもいいものを・・・。
 と、思ったが・・・俺の寝起きが悪いのは、部員なら誰でも知っていること。
 起きそうにもない俺を置いていく、彼らの気持ちもわかるような気がした。
 うー、起きるの面倒くさ・・・もう少しだけ布団に潜って・・・。
 
 
 トタトタトタトタ・・・
 
 
 足音がして、次の瞬間、スパン!と勢い良く襖が開く。
 薄く開いた瞳に、エメラルドグリーン色のジャージの裾と
 白い靴下を履いた小さな足が映った。
 
 
 「 慎吾さーん、朝ですよーっ!みんな食堂で、朝食食べてますよー!! 」
 
 
 元気の良い声が、室内に響く。
 失礼します、と一声かけて、俺の枕元にちょこんと座った。
 
 
 「 か 」
 「 はいっ!おはようございます 」
 「 ん・・・はよー 」
 
 
 がふふ、と微笑んで、頷いた。
 朝イチバンに好きなヤツの笑顔を見て『 おはよう 』の挨拶が出来るなんて
 まるで新婚生活みたいだな、と、俺も口の端を上げる。
 
 
 
 
 
 
 ・・・・・・あ、いいコト、思いついた。
 
 
 
 
 
 
 「 あっ・・・う、ううぅ・・・っ!! 」
 「 ど、どどどどうしたんですかっ!? 」
 
 
 突然、身体を丸めて呻き出した俺の身体を、の手が揺さぶる。
 慎吾さん、慎吾さん!と何度も、心配そうに名前を呼んだ( かわいーな! )
 深く顔を歪めて( いるであろう )俺は、薄く目を開いてを見つめる。
 
 
 「 俺・・・実は、ビョーキ持ちでさ・・・ 」
 「 そう、だったんですか!? 」
 「 ああ。朝、目が覚めた時だけ、なんだけどさ・・・どうしよ、マズイな 」
 「 え、何がマズイんです・・・? 」
 「 『 目覚めのキス 』がないと、俺の眼ぇ、これ以上開かないんだ 」
 
 
 キス・・・で、す、か。
 そう呟いた後、ぽ、との頬に赤い灯が点る。
 ・・・うん、ま、当然の反応だけど、もうひと押しかな。
 
 
 「 うぁっ!く・・・る、しぃ・・・!! 」
 「 やっ!慎吾さん、大丈夫ですか!? 」
 「 ・・・うう、・・・頼、む 」
 「 わ・・・わかり、ま、した!!どこにすれば、いいんですか!? 」
 
 
 ココ、ココ、と唇を指差して、彼女の腰を引き寄せる( やべ、急ぎすぎた )
 小さく驚きの声を上げて、が俺の胸に倒れこんだ。
 
 
 「 ・・・ 」
 
 
 唇を、親指で撫でる。弾力のあるそれは、魅惑の果実のように思えた。
 緊張した面持ちのが、顔を上げる。
 
 
 「 慎吾、さん・・・い、いきます・・・っ!! 」
 「 おう( どんとこい! ) 」
 
 
 ゴクリ、と息を呑む気配がして。
 固く瞳を瞑った彼女の顔が、少しずつ近づいてくる。
 少しだけ尖らせた口が、何とも愛らしくて・・・。
 逸る気持ちを抑えるのに、全身全霊の理性を、総集結だ!( オラに力を! )
 
 
 あと、5cm
 
 
 3 、 2 、 1 ・・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「 ー、慎吾のヤツぁ起きたかー?? 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 大きな足音が聞こえたかと思うと、あっという間に近づくいてくる。
 呑気な声に、反射的に肩を震わせたのは、彼女だけじゃない。
 げ・・・っ、この声は・・・・・・っ!!
 
 
 「 か・・・かかっ、和さんっ!! 」
 
 
 彼女が、飛び上がるように身体を離す。
 畳の上に座り込んでいると、柱の影から大きな身体がぬっと現れた。
 
 
 「 慎吾ー、早くしないと朝食時間が終わるぞ 」
 「 ・・・お・・・おう、わりぃな 」
 「 もういいぞ、。お前も食べて来い。ありがとうな 」
 「 は、はいっ! 」
 
 
 両手で頬を包み込むようにして、素早く部屋を立ち去る。
 和は、その様子を不思議そうに見送って、何かあったのか?と尋ねてくる。
 肩を竦めた俺は、さーねぇ?・・・と呟いて、天井を仰いだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ちぇー、もう少しだったんだけどな
 
 
 
 
 まぁ・・・いっか
 は最後、俺の様子を確認もせずに、部屋を出て行ったみたいだから
 明日も少しだけ寝坊して、同じ罠を仕掛けてみるかな
 
 
 
 
 首を傾げている和の目を盗んで、一瞬だけ、瞳を閉じる
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 瞬時に染まった、あの頬の色を思い出して
 
 
 
 
 俺は、堪らず・・・・・・クツクツと笑った
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
夢から醒めても
 
 
 
 
 そばにいて
 
 
 
 
 
 
 ( これで断然、明日の朝が待ち遠しくなった )
 
 
 
 
 
 
Material:"24/7"
Title:"ラブバード"
 
 
 
 
 
 
 
 
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