『明日、朝一番に訪れる。待っていてくれないか』
そう子龍様が仰られたものだから、私はいつもより早く目が覚めた。
朝一番に……とは、何事だろう。
私は少しづつ外が明るみ出すのを感じて、布団から上体を起こす。
昨日、戦場から帰ってきた子龍様をお出迎えして、
私を見るなりそう仰った彼。承知致しました、と返せば、満足されたご様子で。
……一体、何をお考えなのかしら。
そんな事を昨日から考えながら、髪を梳かし、服を着替える。
子龍様にお会いするのであれば、綺麗にしなくては。
とん、とん。
『、私だ。……起きているか?』
戸の外側で、控えめに響く声がした。
「はい、起きております。どうぞ中にお入りくださいませ、子龍様。」
お声をかければ、早朝故か音を極力立てずに静かに入ってくる。
今日はいつもの鎧甲冑では無く、ゆったりとした着物を着ていた。
『早くに押し掛けてすまない。よく眠れたか?』
「ええ、ご心配にはお呼びません。」
気になってあまり眠れませんでした、とは言わずに嘘をついておく。
きっと彼の事、心配して帰り兼ねないから。
『そうか……それなら良かった。今日は誕生日だろう?』
そう言って子龍様は私の手を取り、同じ目線まで屈んだ。
『何を贈れば良いのかと、ずっと考えていたんだ……。
だが、髪飾りや召し物では芸がないだろう?』
柔らかく微笑む、彼。
『でもなかなか、浮かばなくてね……。
だから、劉備殿に頼んで今日一日休みを頂いたよ。
今日は貴女とずっと二人きりで。貴女が望む事をなんでもしよう。』
添えていた手を、口元へ近づける。
『この趙子龍、今日一日の為に。
どうか、好きに使ってやってくれ』
「え、でもそんな……」
『貴女に何かしてあげたいんだ。私の一番大事な、貴女に。』
光が充満した部屋の中、暖かいと思ったのは太陽のせいか
それとも目の前で愛しそうに見つめてくる龍のせいか。
「でしたら……お願いが御座います。」
『ん?何だ、遠慮は要らないから言ってくれ。』
「あ、あの……、そ、添い寝、を……」
羞恥の余り顔が俯く。
一度、してみたいと思っていた事。
子龍様に抱き締められて、安堵しながら眠りたい。
今日は輪をかけて寝不足だから(本人にはやはり言えないけど)
好きにしていい……と、いうのなら。
でも、朝から不埒だと思われてしまっただろうか……。
言ってしまった側から後悔が押し寄せてきて、子龍様の反応を恐る恐る待つ。
……ぎゅ。
『可愛らしい事を言うな……。
では、これから2人で、二度寝でもしようか』
幼子をあやすように、ゆっくりゆっくり私を寝台へ寝かせた後、子龍様も私の隣へ寝そべった。
『とりあえず、おやすみ。起きたらまた、考えるとしよう』
私の髪をサラサラと撫でながら、愛おしそうに見つめるのを、心地良いと思いながら
彼の心音を子守唄にして眠った。
委ねて、捧げて。
(この身、この心を、余す事なく貴女へ贈ろう。)
『うさぎとワルツ。』のうさみみさんよりいただきました。
うさみみさんは、有難いことに当サイトへの感想をいただいたことをきっかけに、仲良くなったお友達です。
それもこの度、まだサイトを立ち上げたばかりでお忙しい中、灯の誕生日を知って書いて下さったとのこと。。。
大変恐縮です、という一言に尽きます(笑)本当にありがとうございました!
実はこのお話・・・サイトにアップしました〜と嬉しいご連絡をいただいて、すぐお邪魔して感想を送ったんです。
「 添寝でお願いします、って絶対言うな俺 」的なメッセージを見て・・・追加してくださったんですwww
最初は『 龍のせいか。 』のところで終わっていたはずなのに!はずなのに!(きゅーん)
うさみみさん、欲望丸出しの灯の願いを叶えてくださってありがとうございますw
灯も、うさみみさんの素敵な小説に負けないよう、精進します!本当に嬉しかったです、ありがとうございます。
|