「 ( 何がどうしてこうなったんだっけ? ) 」






 そう、あれは・・・と記憶をフラッシュバックさせる暇も与えてくれない。
 その理由は、次から次へと身体を襲う快楽のせいだ・・・っと、また、ッ!!


「 ・・・・・・ッ!! 」
「 李典、ねえ、きもひ、イイ? 」
「 あ、ああ・・・だ、からさ、、もうやめ・・・、っ! 」


 ちゅる、と咥えていた『 それ 』を口から引き抜いた思えば、


「 嬉しい 」


 一言そう言って、再度咥え込む。それも喉の奥の奥まで。
 さすがに少し苦しくなったのか、喘ぐように漏らした吐息が、逆に気持ち良くて。
 ふは・・・と漏らした吐息に、が薄らと微笑んだ気がした。
 これまたその視線が蠱惑的で。背筋がぶるりと震えて、脳髄を快感の波が満たしていく。


「 ( やべ・・・こ、れじゃ、マジでイくぞ、俺・・・っ ) 」


 初エッチで、いきなり咥えられてイっちゃう男ってどうよ!?


 ダメだ、そんな『 俺 』を俺が許せねえしッ!!と心を入れ替えて、眼下のを睨む。
 急に毅然とし出した俺の様子に気づいてか、彼女が視線だけ持ち上げた。
 必死に俺のモノを咥え、額に薄らと汗を浮かべた
 興奮に頬を、瞳を赤く染めた彼女は、まさに愛らしい兎のようだった。


「 んん? 」
「 あっ、う、喋るなッ・・・うッ!! 」
「 ・・・んんぅ 」


 吐息による柔らかい刺激。ちょっと擽ったい。でも、嫌いじゃ、ねえ、しッ!( くそっ )
 いつもの、隙のない真面目なスーツ姿の面影が、俺の中から消えていく。
 純真な優等生は、こんなにも淫らな淑女だったってワケか。何だよそのギャップ萌え。
 んだよ・・・ああ、堪らねえ。堪らねえよ。マジ気持ち良い。もっともっと咥えて欲しい。
 彼女に申し訳ないと思う反面、堪えていた気持ちが溢れだした瞬間。
 さすがの俺もこれ以上堪えることが出来なくなった。


「 ンッ、ち・・・っく、しょ、ッ・・・!! 」
「 んんんッッ!!! 」


 俺はとうとう彼女の後頭部を掴んで、自ら咥えさせた。
 今までで一番、喉元奥まで俺のモノを咥えることになったの、くぐもった声。
 目尻に涙を浮かべ、苦悶の表情を浮かべる。なのに、は抵抗しなかった。
 僅かな隙間から酸素を取り込んで、より一層奉仕に励みだす。


「 はあ、ああ、っ、やばい、やばいッ、ああ・・・っ、ッッ!! 」


 彼女の名前を呼びながら、自分のリズムに引き寄せる。
 もタイミングが解ってきたのか、次第に俺たちはひとつの塊のように動き出した。
 ぎし、ぎしっ、とベッドが立てる不器用な軋みがその証拠。


「 くうっ、出すぞッ!うああ!!あっ・・・ッ、あッ、あッ、ああああッ!! 」


 加速してしまえば、あっという間に昇り詰めていく。


 脳髄の快感が、器から零れる。そこに・・・理性は無かった。
 の苦痛なんか欠片も思いやれない。俺は、ありったけの力での頭を抱き込んだ。
 精を吐き出す。俺の視界も真っ白になった。


 打ち寄せていた波が引いていく頃、俺はようやく荒い呼吸を整えながら我を取り戻す。
 吸い付いていたの頭を、無意識にシェイクしてしまったようだった。
 その手が震えている。快感に打ち震えているのか、それとも後ろめたさか・・・。
 そんな風に、自分を観察できるほどの冷静さを取り戻せたのは、ほんの一瞬。
 じゅぽ・・・ん、と栓を抜くような音を立てて、の唇が俺から離れる。
 途端、彼女の喉がこくりと上下に動いた( ま、さか )


「 うわわッ!!だ・・・ダメだ、!俺の手の上でいいから戻せ!吐けってば!! 」
「 ・・・・・・ううん、も、飲んじゃ、った 」


 両手を器の形にして彼女の前に差し出したが、長い沈黙の後、首を振った。
 けほ、と整えるように咳払いをして、無垢な瞳が俺を見上げる( おいおい、嘘だろ!? )
 涙目の、大きな瞳に映った俺は、対照的に焦った表情をしていて・・・唇を噛んだ。
 情けなくて、悔しくて・・・脳内を過った黒い悪戯を止めることは出来なかった。
 未だ熱の冷めやらぬ彼女の身体を押し倒して、躊躇いもなくそこへと指を挿し込む。
 突如上がった甲高い声に、ようやく余裕が生まれて、俺は口の端を持ち上げた。


「 へえ、随分と濡れてるんだな。俺の姿見て、興奮しちゃったってわけ? 」
「 んんあ、ッ・・・り、李典!!やぁ、っ!! 」
「 ここまでされて嫌とか言うなっつーの。今度は俺が、を気持ちよくする番だ 」


 秘所を探れば、溢れ出す愛液。強張ったの身体を強引に押さえつける。
 夢から醒めたようにもがく彼女の両手を、シーツに縫い付けた。


「 やられっ放しってのは好きじゃないんだよな、俺。さて、と・・・観念しな 」
「 李典、わた、私はいいのっ!私は、貴方が気持ち良くなってくれれば・・・あんッ! 」


 舌先を固くして、耳元から鎖骨へと這わせる。
 の背が浮いた。露わになった胸に吸い付き、乳首を舌先で転がす。
 その度に喘いで反るから、反対側を吸ってやる。または喘いで、身体を反らした。


「 ・・・綺麗な肌、してんな。正直、想像以上だ。
  いきなり咥えてくるくらいだから、どれだけ男に慣らされてんのかと思ったけど・・・ 」
「 そっ、んなこと、な・・・っ!あ!んやあっ、李典ッ、あああんっっ!! 」


 胸を揉みしだいていた手を、抱き締めるようにお尻の後ろから回して。
 ずぶ濡れになった秘所へ挿し込む指を増やす。身体の一層強くなった。
 彼女のナカを擦って、抜き差しを繰り返せば、あっあっ、とが歓びの声を上げた。


「 ほら、言ってみ。どこを攻めて欲しい?はどこが気持ちいいんだ? 」
「 んうっ、あっ、ひぁ・・・あああ、や、り、てんッ・・・っ!ふっ!ああんっ!! 」
「 ここだな・・・ほら、気持ちよくなってよ、。とりあえず俺の手でイっとけ! 」
「 ・・・・・・ッ、あァ・・・ッッッ!!! 」


 元々ぐしょぐしょだったっつーことは、それなりに彼女も興奮していた訳で。
 呆気なくはイった。声を無くしてしまった人魚姫のように、悲鳴すら上げずに。
 びくっ、びくっと大きく弛緩する。それが収まるのを待ってから、俺は腕の力を緩めた。
 ゆったりとベッドに沈み、無防備に投げ出される肢体。目元を縁どる睫毛が震えていた。
 、と呼ぶと、浅い呼吸を繰り返していた彼女は、ようやく瞳を持ち上げる。
 わなわなと小刻みに震えていた唇が、李典・・・、と乾いた音を紡いだ。


「 ・・・お前が欲しい。貰うぜ 」


 返事は待たない( いや、正確には待てなかったんだ )
 ・・・彼女との、初めてのセックスを想像しなかった訳じゃない。
 でも想像していたより余裕もないし、優しくもしてやれていないだろう。
 それだけ・・・彼女を欲していたのだと今更ながら気づく。
 ぺたりとベッドに両膝をつけて座ると、彼女の腰を引き寄せて、両脚を高く持ち上げた。
 当然、が羞恥にかっと頬を染めて抵抗するが、もう遅い。
 俺は素早く自分のモノを当てがり、コンセントプラグを差し込むように挿入した。


「 ふっ、あああああんッ!! 」
「 んんッ、は・・・やっぱ、イった後は締まって、んなぁ・・・ッ!! 」


 そ・・・れにしてはキツ過ぎるような・・・と思ったが、思考はすぐに途切れる。
 意志に反して、既に腰が動ていた。ぎゅちゅ、と醜い水音と肉のぶつかる音が交互に響く。


「 あんッ、は、ぁあ、っ、やん!んんンっ!あああんッ!! 」


 声を取り戻した彼女は、背を丸めた俺の下で啼いた。
 圧迫感に眩暈を起こしたのは俺も同じ。けれど、俺の腰はますます加速していく。
 水音が軽いものに変化する。どんどん濡れてきている証拠だ。動きがスムーズになってきた。
 気を良くした俺は、更に腰を振った。ぐちゃぐちゃっと音を立てた愛液が、俺の股を濡らす。
 一際大きな嬌声を上げたの胸が、ワンテンポ遅れて揺れるのが、また扇情的だった。


 ・・・きっと、彼女の耳にはこの卑猥な音も届いていたない。自分がどんな声を上げているかも。
 二人裸であることも忘れて、濡れた髪を振り乱して、ただただ快楽を貪っている。


「 ( やっべーな・・・実は、喰われてるのは俺の方かも・・・っ!! ) 」


 真下には、自分のモノと彼女が深く繋がっているのがまざまざと見えた。
 忙しなく繰り返されるピストン運動に、愛液が泡立ち、二人のモノを覆っていた。
 俺は、いつの間に乾いていた唇を舐めて、奥歯を噛みしめる。
 小さな気泡の中で、ぷくりと腫れた赤い豆を親指の腹で擦った。
 が一際大きく喘ぎ、痙攣したように弓形に身体を反らした。その時、見てしまったのだ。


「 ( ・・・・・・っ、エロ過ぎ、んだよッッ!!ああ、もうッ!!! ) 」


 ぱっくり開いた彼女の口の中で、糸を引いていたのは・・・俺の精液。
 それを見て、完全に箍が外れる。吼えた俺は、更に背を丸めて快感を更に追及していった。
 彼女のナカの弱いところを、自分のモノで突く突く突く!とにかく突く!
 その度に、涙の筋をいくつも作ったが啼いて、次第に今までとは違う強張りを見せた。
 正気の欠片も失せてしまったような瞳が、終点が近いことを示している。


「 あう、あああっ、も、もぉッ!んんんッ、はぁ、んッ、り、てんっ、李典!! 」
「 いいね、その表情・・・っ、気持ち良くなれよ、ほらほら・・・ほら、ぁああッ!!! 」


 息を止めて、気合いのひと突き。がぎゅっと瞳を閉じた。


「 やぁあ、あっ!は、あああああんッッ!!! 」


 ぎゅううう、っとナカが締まり、はち切れんばかりに膨れ上がっていた俺のモノを締め上げる。
 マズいと思ったのに止まらなかった。今日、二度目の精液は彼女のナカに吐き出された。


「 ・・・・・・っく、っ、ッ!!・・・は、っ!! 」
「 んッ、ああ、っうう、んんんぅ・・・ 」


 残滓まで全て出してしまうように、彼女ごと揺らして絞り出す。
 摩擦に反応して、眉根を寄せたは掠れた嬌声を上げた。
 ・・・やがて、律動が止まる。の両脚を解放して、俺は前髪をかき上げた。


「 は・・・はあ・・・っく、はっ、はあ、は・・・ 」


 ・・・時既に遅し。自分のしたこととはいえ、蒼褪める。
 同じように荒い呼吸を繰り返すの腹の上に、一粒、汗が零れた。
 乱れた髪を頬に張り付けたが、ぶるりと震える様が・・・っと、やべえだろ!もうダメだろ!
 断腸の思いで、俺は自分のモノを引き抜く。んぅ!と切ない声が上がった。
 床に落ちていたタオルケットを彼女の身体にかけて、手の甲で汗を拭った俺は隣に寝転ぶ。
 瞼を閉じたまま、快楽の余韻に浸る愛しい人を抱きしめようとして・・・その手を止めた。


「 ・・・あ・・・のさ、・・・ 」


 確認したいような、確認したくないような。
 そんな複雑な気持ちに捕らわれながら、俺は勇気を出して一歩を踏み出す。


「 何でいきなり、その・・・こういうこと、してきたわけ? 」




 ・・・ようやく、不鮮明だった記憶が蘇ってくる。




 雨に降られた俺たちは、誘われるままの部屋へとやってきた。
 家主である彼女がすぐに入浴し、俺はその後にシャワーを貸してもらった。そこまでは良い。
 そのまま出てきてくれて構わないから、と投げかけられた言葉に甘えて。
 「 油断してんなぁ、俺の悩殺ボディ見て気絶すんなよ? 」くらいの気持ちで。
 洗面台にあったバスタオルだけを腰に巻いて出たのは、『 男 』として意識してほしかったから。
 ( よく漫画にあるような『 きゃっ! 』って目を隠すような彼女が見たかったんだよっ )


 ところが、意識させるどころかリビングに入った瞬間・・・。


「 犯されたって思ってんだけど、俺・・・に 」


 息を整えたが瞳を薄く開いて、申し訳なさそうに俺を見つめた。


「 あ、あの、お・・・し、倒したのは、悪いと思ってる・・・よ? 」
「 何で疑問形!?そもそも、何で裸で待ち伏せして、俺を寝室に連れ込んでるんだよ!
  ・・・お前まさか、いつも男を連れ込んではこんなことやってんのか!? 」
「 ち、違うよ!こ・・・これには、ちゃんと理由があって・・・っ・・・! 」


 そこで、ひく、っと喉の攣る音がして、の瞳から大粒の涙が零れていく。
 息もできないほど、枕にずっぽりと顔を埋めて泣くに、俺は慌てて身体を起こして宥める。


「 わ、悪かったよ、。お前がそういう奴じゃないって知ってたのにな・・・俺、実はずっと、 」
「 甄姫、せんぱい、が 」




 『 告白 』は見事に失敗した。




 つーか、とんでもない名前がの口から出てきた。
 おいおい、今、『 甄姫センパイ 』って言ったよな!?取締役代表の奥方だぞ!?
 ・・・そうか。は以前秘書課にいたから、知り合うきっかけがなかったワケじゃないのか。
 ( いや、論点はそこじゃない )
 泣き腫らしてぐしゃぐしゃになった顔で、黙り込んだ俺を見上げた。


「 ほ、本気で好きになった男性に尽くし、愛を与えることは女性の義務だって・・・。
  まずは自分が如何に好きで、尽くせるかを態度で示すことが大切だから、そ、その・・・ 」
「 ・・・・・・・・・・ 」


 かあああ、と頬を染めて、また枕の中へと顔を埋める
 ・・・うん、確かに尽くしてもらいましたよ、俺。予想を遥かに上回った行為だったけどな。
 溜息を吐きたいのを必死に我慢して、天井を仰ぐ。ようやく合点がいった。


「 ( そういや・・・こいつ、筋金入りの『 優等生 』だった・・・ ) 」


 尽くす方向、間違ってるけど。
 憧れの甄姫センパイに愛とは何かと聞いて。説法に、真剣に頷くを想像する。
 ( それが曹丕&甄姫夫婦のみに通用する『 愛情表現 』だとは知らずに・・・うう )
 ・・・なりに、一生懸命考えてくれたのだろうか。
 俺を『 好き 』な気持ちの分だけ尽くす方法。尽くす方向、間違ってるけど( 二度言った )








 ・・・・・・・・・・ん?








「 なあ、、ひとつ聞いていいか? 」


 俺の問いに、なかなか顔を上げなかったが・・・観念したのか、そろりと目線だけ持ち上げた。


「 お前、俺のこと・・・好き、なのか!? 」


 と言うと、彼女は驚いたように身体ごと浮かせた。
 裸なのに気づいて、慌てて身体を隠すが・・・今はそこにときめいている場合じゃない。


「 ええええっ、何で、い、今頃その質問!? 」
「 何でが驚くんだよ!だって俺、聞いてねえぞ!? 」
「 ・・・え??そう、だったっけ?私、言ってなかった?? 」
「 言ってねえよッ!だ・・・だから・・・ 」
「 好き 」


 俺が言いたくても言えなかったことを、彼女はあっさりと口にする。
 そしてゆっくり微笑む。ああ、これ・・・雨の中でも見た、俺の一番、好きな・・・。




「 李典が、好き 」




 きっと、今の俺は史上最高にマヌケな顔をしている。
 まさか彼女から先に言われるとは。でも・・・でも、もう内心嬉しすぎて爆発しそう!!


 こんな予感してたんだよなあ。さすが、俺!・・・なんてな!!( 予想以上に幸せだ! )


 が抱き締めていた枕ごと、俺は自分の胸の中に閉じ込める。
 結構ここまで紆余曲折したけど、結果が良ければオールオッケーだろ!
 ( 課題は残るけれど、甄姫センパイにも一応感謝!一応、な! )




「 俺も大好きだっ!!!! 」












 ( あー感無量!やっと・・・や っ と 言 え た 、 俺 !! )














勝ち取りました!!

( どんな君も愛しいと思うのは、恋の為せる魔法!最高に幸せだぜ、俺♪ )


Title:"TigerLily"