ラビのことが、好きなの。


 だから、にも協力して欲しいんだけど。
 どうしてって・・・とラビって、仲良いじゃない。










 そう言われて・・・・・・返答に、困る。
 え、そうなの?私とラビって、仲良かったの??( と、誰かに聞きたい! )
 それじゃヨロシク、と彼女は照れたように頭を下げて、その場をあとにした。
 光射す廊下の奥に消えていった背中を見送りながら、呆然と、その場に立ち尽くして。
 ・・・思わず、大きなため息が出た時だった。


「 立ち聞きは、感心しないわ 」
「 ・・・あちゃー・・・バレてたかー・・・ 」


 振り返ると、ひょっこりと後ろの柱から覗かせた朱色の髪。
 廊下に、他に誰もいないのを確認すると、私の隣に並んだ。


「 いやー、光栄さー。あの子、結構競争率高い女の子なんだぜ、教団内でも 」
「 言っておくけど・・・本気よ、あれは 」
「 さすがにわかるさ。あんな瞳、されたらさ 」


 ラビは、彼女が走り去った方向を見つめ・・・私を、見つめた。
 そのまま右手を伸ばして、私の頬に触れた瞬間、びくりと身体が震えた。
 それも・・・思いっきり露骨に震えてしまったので、ラビが驚いたように私を見て、笑った。


「 ー、そんなに怖がらなくてもいいじゃんかー!あはははっ!! 」
「 だ・・・だっ、て、 」
「 ははは・・・・・・それとも、さ 」


 油断していた私の手を掴むと、そのままぐっと引き寄せる。
 そこは明るかった廊下とは対照的な、真っ暗な柱裏の廊下で。
 視界が闇色に染まりそうで、思わず瞳を閉じた。


「 俺のコト、本気で怖い? 」


 いとも簡単に彼の懐に閉じ込められて・・・唇を塞がれる。


「 ンむぅっ・・・! 」


 有無も言わせない、強引な、キス。
 絡め取られるのは舌だけじゃない・・・心まで。














「 ( 溶けて・・・しま、い、そう・・・・・・ ) 」














 いっそ、溶けてしまえばいいのかな


 彼の『 お人形さん 』になってしまえば、楽なのかな










 歯列をなぞられて、背筋が凍った時と同じように、ピンと伸びて。
 身体が徐々に、ラビの愛撫を受け入れていく。震えは、恐怖から歓喜に変わっていく。
 ぢゅ・・・と唾液を啜る音がして。
 重ね合わせた彼の唇が、腫れたように赤く染まっていた( 髪の色と同じ、の )
 息の上がった私を見て、満足そうに唇を吊り上げた。


「 の部屋、行っても、いい?・・・しようぜ、このまま 」


 耳元で囁かれた呪文に、もう立っていられなかった。
 ずるずるとへたりこんでしまう寸前で、彼は私の脚の間に、自分の脚を挟んで落下をとめる。
 そして、私の返事など待たずに、そのまま私を抱きかかえた。


「 ・・・いい、なんて言ってないんだけど 」
「 んー、でもさ、拒否もしてないだろ、は 」


 彼を好きだと言った、あの子に問いたい。
 ・・・ねえ、ラビってこんなヤツなんだよ。本当にいいの?
 ヘラヘラ笑って甘いことばかり言ってるようで、信じたら魂まで喰われてしまうよ。
 『 恋人同士 』になって、ラビと何したいの?キス、それともセックス?
 そんなの・・・ラビにとっては『 恋人同士 』にならなくても、できちゃうコトなんだよ。




















( 私はラビのコト、好きなのに・・・どうして私たちは『 恋人同士 』じゃないの? )




















「 ・・・・・・ラビの、バカ 」
「 へ?何かいったさ、・・・うぉわっ!! 」
「 何でもない! 」
「 か、噛み付くなよ・・・ 」


 それでも、ラビは私を抱いたまま、足を止めない。
 私も、ラビに噛み付くけれど、結局受け入れている。






 この曖昧な関係を表す言葉なんて、見当もつかないけれど


 それが戻れない『 道 』だってことだけは・・・・・・わかってるんだ







































 ラビの肩越しに、私たちが辿ってきた光射す『 道 』が見えていたけれど




 次第に小さくなっていって・・・最後には、消え、た















一番好きないきものも





一番嫌いないきものも、



( 貴方なのか自分なのか。もう、それすら、わからない )






Title:"群青三メートル手前"
Material:"月影ロジック"





このお話は、もう少しだけ続きます。