扉を開けば、色とりどりの輝き。
 の唇から思わず漏れた感嘆の声に、
 あたしは思わずにやけてしまう。




「凄い・・・キレイね・・・とってもキレイ」




 綺麗、と何度も呟いて。
 彼女は頬を染める。それが、とても愛らしかった。
 中身の一つを摘んで、掌に乗せた。
 それを今度は、の手の上に乗せようと、
 女の子らしい、ふっくらとした手を引き寄せる。




「わ、エリアーデ!こんな高価な、モノ・・・っ!」
「大丈夫よ。怖がることなんか、ないわ」




 抵抗している腕を引っ張る。
 AKUMAのあたしに、生身の人間が適う訳ない。
 短い悲鳴を上げて、の身体が揺れた。
 その白い手に、宝石を転がした。




「エメラルドよ」
「・・・・・・キレイ」




 まったく、何度呟けば気が済むのかしら。
 諦めと驚きと、深い愛を込めて、あたしはとうとう笑ってしまった。
 はようやく気づいたのか。
 恥ずかしそうに、俯いて。




「・・・もぅ、エリアーデの意地悪・・・」




 拗ねた表情も可愛いわ、なんて言ったら、
 きっと今度こそ腹を立ててしまうだろう。
 箱の石を一粒一粒、彼女の掌に乗せた。




「ルビー、サファイア、アメジスト・・・」




 宝石が淡い光に反射して、の顔を照らした。
 万華鏡のような光の渦の中で、彼女は嬉しそうに微笑んだ。




「アクアマリン。これは3月の誕生石よ」
「・・・誕生石?」




 が尋ねた。




「誕生月ごとに定められた宝石のコトよ。
 自分の生まれた月の石を身に付けると、幸運になれると言われているわ」
「ふうん」
「・・・の、誕生日は?」




 躊躇いがちに、そう尋ねた時。
 あたしは、彼女のことを何も知らないんだって、気が付いた。









 だって、必要なかったんだもの。
 『過去』が無くても、『現在』があればそれで良かった。
 けれど・・・あたしは今、初めて・・・
 のコトをもっと知りたいと思っている。









 少し・・・考えたように、遠くを眺めて。
 一度、俯いて。
 彼女はゆっくりゆっくり、顔を上げた。




「・・・私、両親に捨てられた子だから、正確な誕生日って覚えてないの。
 駄目ね。折角、幸せになれるハズの誕生石を、身に付けられないなんて・・・」




 そう言って、微笑った。
 痛々しそうな笑顔ではなく、何かを既に吹っ切った後の笑顔だった。


 次の瞬間。
 たまらなく愛しくなって、あたしは彼女を抱き締めた。
 胸の谷間から、「苦しいよ〜っ!!」と声がした。
 ( そんなコトくらいで、離すワケがない )












 馬鹿な子ほど、可愛いと言うけれど・・・
 いつになったら、自分自身で気づくのかしら













 貴女に”宝石”なんか、必要ないという・・・・・・真実に











jewel








( あんたには、誰にも負けない宝石があるじゃない )






実は”誕生石”って20世紀以降に定められたものなんで、
このお話、かなーり嘘っぱちなんです・・・( ああ!石投げないでっ!! )





Material:"CELEN"