今日はたくさん笑ったな









 お前とプラネタリウムに行くのは、もう何度目になるんだろうな。






 季節によって、説明の内容が変わるだろ?
 その度に足を運んでるから・・・数えてないけど、結構な回数、だよな。
 受付の人にも、顔、覚えられたし。
 チケット売場でも、言う前に2枚分の料金を提示してくれるようになった。
 『 私たち、常連さんになったんだね 』とクスクス笑うお前に、俺は頷く。


 ・・・何だか、気恥ずかしいな。
 でも、同時に嬉しくて、溜まらないんだ。
( 最初のデートも、ここだった・・・なんて思い出したら )








 いつの間にか繋ぐようになった、二人の手。
 初めは、お前から差し延べてきたような気がする。


「 あの・・・手、繋いで、いい? 」


 おずおずと伺うように聞いてきたに、ろくな返事も出来なかったけど、
 本当は天にも昇る心地だったんだ・・・・・・嘘じゃない。
 次のデートは、俺から繋いだ。
 その次も、そのまた次も。その行為が、当たり前になるまで。
 繋いだ瞬間、すごく嬉しそうに微笑むお前の顔。
 握った瞬間、きゅ、と少しだけ握り返してくる小さなてのひら。


 この手にあるのは、お前の手と、お前といる幸せ、その2つなんだな。








 たくさんの季節、廻る中で。
 お前と、あとどのくらい一緒にいられるんだろうな。
 時々・・・夢なんじゃないかと、思うんだ。
 ( 泣きたくなるくらい、幸せな日々だから )


「 約束 」


 約束。
 その言葉を、あの思い出を信じて・・・俺たちは、もう一度惹かれあう。
 それを『 運命 』と呼ぶのかは、わからない。
 ただ・・・俺には、もうお前しか見えないんだ。もう、ずっと前から。
 淡いステンドグラスの光の中で、小指を絡めた、あの瞬間から。


「 日曜日、珪くんとプラネタリウム行くの、すごく楽しみにしてる 」


 先週、誘った俺に、頬を染めて笑いかけるお前の笑顔を。
 これからもずっと・・・守っていきたい。








 ブブブ・・・と携帯電話がくぐもった音を立てている。
 濡れた髪をタオルで拭きながら、俺は携帯を開いた。
 ・・・メールだ。発信者は、


『 件名:プラネタリウム、楽しかったね
  珪くん、お誕生日おめでとう!!明日、学校で改めて伝えます
  今度、どこかで珪くんのお誕生日会、やろうね         』


 時計を見れば、ちょうど0時をまわったところ。
 きっとアイツのことだから。このメールを送信するために、
 時計の針が動くのを待っていたんだろうな・・・そう思うと、嬉しさも増して。
 俺は、慣れない手つきで返信する。










『 件名:ありがとう
  俺の誕生日、覚えててくれたんだな。
  明日、お前に逢えるのを、楽しみにしている 』










 この想いをどう伝えたらいいのかわからなくて、俺はたくさん迷うけれど
 どうか・・・もう少しだけ、待っていて欲しい


 きっと、姫を・・・を、迎えに行くから










 彼女のメールを何度も見ながら、眠りについて






 明日、くれるであろう・・・満面の笑顔の『 おめでとう 』を夢に見た












( あの時の約束も、この想いも、永遠に・・・ )






Title:"群青三メートル手前"
Material:"NOION"