世の中に起きる、すべての出来事が『 偶然 』ではなく『 必然 』ならば
どうしてこんな『 必然 』が生まれてしまったんだろう
私と彼が出逢ったこと も
私が彼に恋してしまったこと も
あの瞬間以外、彼に一度も逢えないこと も
忘れられずに、もう2年も経ってしまったこと も
すべてが『 必然 』だというなら、神様はなんて意地悪なんだろう
あの日以降、教団を出られる時間なんか作れないくらい、仕事に明け暮れて
( 雑用でも、私にとっては立派な仕事のひとつ )
そしたら、奇跡がひとつ・・・・・・降って来た
「 おい 」
「 ・・・・・・え? 」
「 お前だよ、他に誰もいねえだろうが 」
キョロキョロと辺りを見渡すと、確かに私と彼以外誰もいないみたい。
あはは、そうだよねー。ここ、教団本部の中でも端っこの方だもん。
暗がりの倉庫に備品を取りに来た、埃まみれの私の前に、仁王立ちする人の影。
「 あの、何の御用でしょうか 」
・・・その人の顔は、よく見えなかった。
彼の姿は逆光に包まれていて、低い声だけが『 彼 』であることを示している。
「 科学班室は、どこだ 」
「 科学班室、ですか?えっと、正面玄関から入って、中央通路奥の・・・ 」
「 最近、ヨーロッパ支部と合併して変ったんだろ? 」
「 ・・・あ、そっか。もしかして迷「 迷ってねえ! 」」
きゅ・・・急に大きな声を出されると思ってなかったら。
思わず肩をすくめた私に、彼ははっと気付いて、ち、と舌打ちした( 何故!? )
そのまま身を翻して、去ろうとする背中に慌てて声を掛ける。
「 ね・・・ねぇ!待って!! 」
「 ・・・あ? 」
「 私も科学班室に行くから、一緒に行こうよ! 」
「 なら、早くしろ 」
「 ちょっと待ってもらえるかな。コレ、全部台車に乗せなきゃいけなくて・・・ 」
彼は、私の足元に散らばった、大量の木箱に目を向ける。
中にはビーカーやフラスコといった備品が入っている。
こういったモノを補充したり、整理するのも、私の仕事の一つだ。
・・・ひとつ、難点なのは。
倉庫がものすごーく離れているので、持ち運びが面倒なコト、かな。
「 勝手にやってろ。お前以外の人間に聞いてくる 」
「 ( な・・・! )そ、倉庫周りに、人は少ないよ!?すぐ終わるから 」
「 時間がない。それに、俺は手伝う気も、待つ気もねえ 」
「 ・・・ひ・・・人がっ、親切で『 案内する 』って言ってるのに!! 」
「 ・・・・・・何だと? 」
「 そうやって他人の行為を振り払ってばかりいるから、ま、迷子になって!
こ、こんな辺鄙な倉庫まで、来ちゃったんでしょ!? 」
「 ・・・そこまで俺に言っておいて、死ぬ覚悟は出来てんだろうな 」
「 ひゃ・・・っっ!!! 」
ぎろり。
強い眼光にはっと息を呑んだ瞬間、首元を掴まれる。
こ・・・こ、わい、よォっ!!
恐怖のあまり声も出せなくて、ガタガタと身体が震え出した。
と、同時に抱えていた木箱が、するりと腕から落ちる。
ガラスの割れる音が倉庫内に盛大に響いて・・・二人、木箱に視線を向けた。
「 ・・・・・・っ! 」
パシ、ンッ!!
乾いた音が、空気を振るわせる。
それは・・・私が、彼の頬を叩いた音だった。
ちょっとだけ驚いたような顔を、思いっきり睨みつける。
「 ・・・・・・・・・キ、ライ 」
「 ・・・・・・ 」
「 嫌いっ、大嫌い!何で初対面の人に、こんなコトされなきゃなんないの!?
仕事の邪魔しないで!!アンタなんか、一生迷子でいればいいのよ・・っ! 」
「 ・・・お・・・ 」
呼び止められたような、気がした。
でも、そんなの構わない。彼の言葉を借りるなら『 止まる気もない 』から。
迷子になった人を置いて立ち去る、なんて
見ず知らずの人を、あんなに罵倒すること、なんて
今までしたことなかったのに・・・どうして・・・
「 ( ・・・・・・サイテーだ、私 ) 」
頬に吹き付ける風が、身体の中をも廻って
冷えた心を、さらに凍りつかせていった
神様の気まぐれ
( 怖いアイツも、こんな私も、大っ嫌い・・・! )
後編へ続きます。名前変換がひとつもなくて、すみませ・・・!(後で気付いたw)
Title:"TV"
Material:"ミントBlue"