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ジリリリ・・・と鳴り響く目覚ましを、手探りで探し当てる。静かになった部屋に射す光が、眩しかったけれど、素直に綺麗だと思ったの・・・。
 
 
 
 
 
 
 ・・・・・・・・・あ、れ??
 
 
 
 
 
 
 「 きゃああああぁあぁああぁぁぁぁっっっっ!!!!! 」
 
 
 ご近所に木霊した、アタシの悲鳴。同時に自宅が震える。
 ベッドを飛び出し、パジャマから制服に着替える。
 顔を洗って、髪を梳かす( 化粧はしないよ、ノーメイク派だもん♪ )
 階段を駆け下り、笑ったお父さんと、呆れ顔のお母さんにご挨拶。
 
 
 「 ふえぇんっ!!どうして起こしてくれなかったのよーっ!! 」
 「 何度も起こしたわよ。ほら、お弁当忘れないで 」
 「 ありがと!いってきまーっす!! 」
 
 
 右手にカバン、左手にお弁当。口には焼き立ての食パンを咥えて。
 アタシは、青空の下に飛び出した!( 途中、飼い犬のクッキーにも『おはよう!』 )
 腕時計が指すのは、学校まで全速力で走っても、遅刻するかしないかの瀬戸際の時刻。
 ( でもどちらかといったら、遅刻する確率85% )
 
 
 「 ・・・こうなったら!! 」
 
 
 いつもの大通りじゃなくて、曲がりくねった裏道で行こう!
 上手くいけば、門が閉まる前に滑り込めるかも・・・。
 食パンを捻じ込みつつ、厚底のスニーカーに力を込めた。
 キュキュキュッと、華麗にブレーキ・ブレーキ・ブレーキ☆
 タイミング良く、今朝は車の通りも少ない。うん、幸先いいんじゃない、コレ!
 
 
 
 
 ・・・と、調子に乗ってしまったアタシが悪かったんだ。
 
 
 
 
 「 ・・・っ!!! 」
 
 
 一瞬、視界に映った黒い影を避けきれなくて・・・。
 鈍い音。圧倒的な力に跳ね返されて、アタシはどすん、と尻餅をついた。
 
 
 「 イ、タタ・・・ 」
 「 悪い・・・大丈夫か? 」
 
 
 涙目の私に伸びた、掌。長くて、綺麗な指先だ、と思った。
 音もなく流れた長い黒髪が、制服の上からでもわかる、引き締まった肩を彩る。
 逆光を浴びたその人は、済まなさそうにアタシを見下ろしていた。
 ( あ、ちょっとタイプかも・・・ )
 
 
 「 ・・・・・・白 」
 「 へっ!?え、ちょ、ちょっと、どこ見てんっ、の、よーっっっ!!! 」
 
 
 その視線に気づき、アタシは慌てて翻ったスカートを押さえた!
 意地悪く唇を歪めた彼に、憧れの念なんか瞬殺( むしろ悪意しか沸かない )
 差し出された手を払って、立ち上がった。
 
 
 「 ち、可愛くないヤツ 」
 「 な・・・っ!! 」
 
 
 アタシを一瞥すると、何事もなかったように走り去る彼。
 怒りに身体が震えてきて、カバンを・・・・・・って!!!!!
 
 
 「 ああああああああああっっっ!! 」
 
 
 
 
 
 
 時計の針がこちっ、と音を立てて、遅刻決定打を告げた・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「 おや、遅刻かい? 」
 
 
 チョークで難しい公式を書き並べる先生に、頭を下げて。
 カバンとお弁当を抱えたアタシは、自分の席に向かう。
 
 
 「 す・・・すみま、せん・・・ 」
 「 ハイハイ、次回は気をつけてねー♪ 」
 
 
 声音ほど機嫌がいいとは思えない笑顔を貼り付け、また黒板に向かう先生。
 眼鏡の奥の眼光にビビりつつ、席に着く。
 白衣を着た実験好きの先生の朗声と、それをノートに書き留めるペンの音が耳を突く。
 いつも通りの教室の雰囲気に・・・ようやく、肩の力が抜けていった。
 
 
 まるで、朝の喧騒が嘘みたい。
 
 
 ・・・・・・ふと。
 背中をつつく気配に、そっと振り向く。
 
 
 「 遅刻にしては、随分と遅かったじゃない。どうしたの?? 」
 
 
 トレードマークだったツインテールをばっさりと切っても、相変わらず見目麗しい親友。
 クスクスと微笑った彼女に、アタシは訴えるように・・・
 
 
 「 もう聞いてよ!朝っぱらから、サイテーなヤツにぶつかられて・・・ 」
 「 ぶつかってきたのは、お前の方だろうが 」
 
 
 
 
 ・・・・・・・・・え、っ!?
 
 
 
 
 聞き覚えのある声に、身体が硬直する。
 恐る恐る・・・隣を、見る( そこは、先週転校していった友達の、席だ )
 
 
 デジャ・ヴ。
 淡い光の色に、瞳を細める。逆光を浴びたその姿が、重なる。
 長い黒髪。鍛えられた身体。白くて、すらりと伸びた手で。
 真新しい教科書を閉じて、アタシを睨んでいるのは・・・・・・
 
 
 
 
 「 あ・・・アンタは、さっき、の・・・っ!! 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「 ・・・という初夢を見ました 」
 「 ・・・・・・お前、馬鹿だろう。真性の馬鹿だな、うん、そうだ 」
 「 あ、ひっどーい、神田くーん 」
 
 
 非難の声など物ともせず。
 神田はこくこくと頷いて、自分を納得させているようだ( 本気で泣ける )
 
 
 「 でも、ユウの夢を見れると思わなかったなぁ 」
 
 
 初夢は、その一年を表す、というけれど。
 
 
 「 ふふ、嬉しいなー。ほんっと嬉しいんだけど、どうしようユウ?? 」
 「 あ?( 無理矢理、話題を振るのはヤメロ ) 」
 「 だってさ、初夢でユウに逢えたってコトはさ・・・ 」
 
 
 隣に寝転んだユウの背中に擦り寄ると、億劫そうな様子で振り返る。
 面倒くせぇ、と言わんばかりの顔に、思わず吹き出しそうになった。
 ・・・そうそう、この表情!( 夢でも見たよ!! )
 そんな彼が、愛しくて愛しくて、堪らないんだ。
 
 
 「 今年一年もユウの傍にいていい、って神様に約束してもらったんだもの 」
 
 
 ユウの瞳が、一瞬大きく見開いた・・・と思ったら、再びしかめっ面。
 ( というか、むしろさっきより不機嫌になった気がするのはナゼ!? )
 がばっ!と伸びた腕が、あっという間にアタシの首に絡みつく。
 容赦ない力に、新年早々天国からお迎えが来てしまうんじゃないかと思ったけれど。
 
 
 
 
 「 神の前に、俺に誓え 」
 
 
 
 
 囁かれた傲慢極まりない命令に、とうとう耐え切れず笑ってしまった。
 真っ赤になった彼は、拗ねた子供のように、視線を逸らそうとしたが。
 私は彼の両頬にそっと手を添えて、瞼にキスを送る。
 
 
 
 
 
 
 「 おはよう、ユウ。今年もずっと、貴方の傍にいさせてね 」
 「 ・・・・・・ふん、好きにしろ 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 悪態とは、裏腹に
 
 
 
 
 重ねた唇に、永遠とも思える二人の誓いをのせて・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ラブコメのセオリーに則って
 
 
 
 
 
 
 ( 恋に堕ちた二人の出逢いは、偶然?それとも必然? )
 
 
 
 
 
 
 
 
Title:"自主的課題"
 
 
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