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嫌いなんです、僕。自分の髪の色も、星型のアザも
 
 きょとん、とした顔をした後、彼女は笑う。
 陶器の皿の上に置いたスプーンが、かちゃりと音を立てた。
 
 
 「 それで、フードを被っているってワケね 」
 「 すみません、食事中なのに 」
 
 
 失礼だな、と思ったけれど、やっぱり被らずにはいられなかった。
 ・・・街中のレストランで、ただ独り。
 料理を運んでくるボーイさんも、あんまり好い顔をしなかったけれど、
 外した時より、ずっと居心地が良い。
 
 
 
 
 向けられる、好奇の瞳
 
 
 
 
 目立つ背丈でもないのに。
 それでも、群れの中で毛色の違う羊に、自然と視線が集中する。
 加えて・・・この、紅いアザ ( しかも逆星型 )
 誰にも言い訳できない分、各々の心の中で勝手な想像が繰り広げられている。
 
 
 「 恥ずかしがることなんて、ないじゃない。見せたいヤツには見せときゃーいいのよ 」
 「 ・・・それはジョイスが、他人からそんな瞳で見られたことが無いから言えるんです 」
 「 違う違う。両方とも、マナからもらったモノじゃない。胸張ってろ、ってコト 」
 「 ・・・・・・・・・ 」
 
 
 ジョイスのセリフに、言葉が詰まった。
 例え、これがマナの"呪い"だったとしても・・・二つとも、マナが最期に僕に残したもの。
 愛すべきものなのに。好奇の視線に耐えられない、僕が弱いのか。
 
 
 「 でもさ、アレン 」
 
 
 ず、と紅茶を一口含んで。
 カップを持った手とは反対の手が、僕へと伸びる。
 白くて、すらっと長い指。今まで手入れしたことないであろう、健康的なピンク色の爪。
 見惚れていた白は、頭を覆った黒に触れた。
 
 
 
 
 
 
 「 私は好きだけどな。アレンの白髪も、紅い星も 」
 
 
 
 
 
 
 目頭まで下ろされた垂幕を、チラリと捲って。
 射しこむ光の世界で、ジョイスは微笑む。
 
 
 
 
 
 
 
 
 それは・・・・・・僕が、一番好きな”彼女の表情(カオ)”
 
 
 
 
 
 
 
 
 逆星と同じ色に染まってしまう前に
 
 
 
 
 ・・・僕は慌てて、フードを被り直した
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
君の指が僕に触れる、
 
 
 
 
 
 
 
 それだけの
魔法
 
 
 ( 劣等感すら愛情に変えてしまう、彼女はきっと魔法使い )
 
 
 
 
Title:"alkalism."
 
 
 
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