リナリーの部屋は、廊下の一番奥。



 あの角を曲がれば、もうすぐ目の前だ・・・というトコロで。

「 、こんな夜更けに、何をしているんですか? 」

 捕まってしまった・・・あぁ、このコトがバレたら、絶対リナリーに怒られるわ!( そんなの嫌っ )
 私はくぅっ!と涙目でこっそり天を仰いで、くるりと振り向いた。

「 アアアアアアレン!ぐ、偶然だね、グッドイブニーング☆ 」
「 ・・・・・・何か、悪いモノでも食べましたか? 」

 え、さりげなーい挨拶にしたつもりだったのに、この素っ気無い反応はナニ!?
 身体中、冷や汗を流していた私を、困ったようにクスリと微笑んだ。

「 とにかく、今日は少し冷えますから、あまり薄着で出歩かないほうが良いですよ 」

 そんなの姿を見たら、誰だって食べたくなっちゃいますから。
 そう言って、アレンは自分の上着を脱ぐと、ふわりと私の肩に掛け、階段を上っていった。

「 ありがと、アレン! 」

 階下から声をかけると、アレンがにこりと笑って去っていく姿が見えた。
 私は、上着に残った彼のぬくもりに身を包んで、リナリーの部屋へとまた駆けた。






( おかえり!上手くと接触出来たんか? )
( ええ、フードにティムを忍ばせて、コートごと渡してきちゃいました )
( ちっ・・・そんなんで上手くいくのかよ )
( ・・・ブツクサ言うなら部屋に帰っても良いんだぞ? )
( まぁまぁリーバーくん、細かいツッコミは置いといて☆あ、ホラ・・・ティムキャンピーの映像が受信出来たみたいだよ )



「 ・・・れ?ティムキャンピー!?フードの中に隠れてたの?? 」

 もぞ、と動いた気配に振り向くと、ティムキャンピーが勢いよく飛び出した!羽音を立てて、私の周りを飛ぶ。
 ひとしきり飛び回ると、私の肩にちょこんと落ち着いた。頬擦りすると、ティムも身体を摺り寄せてきた(カワイイ♪)
 あ、そういや・・・と、以前アレンがティムキャンピーを探している姿を思い出した。

「 アレン、ティムがいないと心配しちゃうかな・・・どうしよう、今から一緒にアレンの所に戻る?? 」

 尋ねると、ティムはプルプルと身体(首?)を横に振った。私はクスリと笑うと、彼を肩に乗せたまま扉に手をかけた。



( 心配しませんよ、ワザと隠れさせたんですから。でも・・・優しいですね、は )
( 当たり前さぁ。俺のカノジョになる予定の女の子だもんっ )
( ・・・・・・ )
( 神田!怒るのは最もだが、『六幻』構えるのはヤメロって!! )
( し・ず・か・にっ!!なぜかコッチの音声は全て漏れちゃうんだから! )
( 室長・・・もっと完璧に作って下さいよ・・・ )
( コムイの発明って、どっか必ず欠陥があるさ )
( あ、リナリーの部屋に入りましたよ )



「 !!待ってたのよ 」

 部屋に入るなり、ネグリジェ姿のリナリーが駆け寄ってくる。
 その声に、椅子に座ってキョロキョロと部屋を見渡していたミランダも、顔を綻ばせた。

「 今夜はお招き、アリガトウゴザイマス 」

 夜着のスカートをつまんで、ペコリと挨拶をすると、リナリーも同じように会釈を返す。
 そして顔を見合わせて、私たち二人は、クスクスと笑いあった。

「 あらーン!アタシが一番最後かしら!?お待たせお待たせ!! 」
「 ちょ・・・ジェリーさん!静かに!! 」

 リナリーは、ジェリーさんの腕を掴むと、凄い力で部屋に引き入れた!( そんな力、ドコから? )

「 もう!『女の子だけで、こっそりナイショでパジャマパーティしましょ』って言ったの、ジェリーさんでしょ!? 」
「 ゴメンゴメン♪・・・さ、デザート持ってきたわよ、食べましょ! 」

 ジェリーさんが下げていたバスケットを開けると、それはもう!見るからに美味しそうな、芸術品の数々!!( ワオ )
 新品のテーブルクロスでおめかしした円卓に、それらを並べて、私たちはお互いに目を合わす。
 ワインの注がれた、グラスを掲げて。

「 ミランダ、教団にようこそ!乾杯っ!! 」

 4人はグラスの中身を飲み干した。喉を鳴らして飲み干し、全員からハァ・・・と吐息が漏れた。



( ・・・艶っぽいなぁ・・・。俺も今度、を誘ってみっかな )
( 聞き捨てならない発言さ。そう簡単にリーバーに渡すもんか )
( 僕だってラビと同じ気持ちですっ!! )
( はっ!モヤシがどう騒ごうと、当人に聞いてみねぇとわからないだろうが、そんなコト )
( モヤ・・・っ!!アレンだって言ってるでしょ!?このバカンダ! )
( テメェ・・・!!! )
( うぅぅ・・・リナリー。ワインの一気飲みが出来るようになったなんて、大人になったね・・・ )
( ・・・・・・また、シスコンが始まった・・・・・ ・)



「 どう、ミランダ。少しは教団に慣れてくれたかしら? 」

 リナリーはプティングを取り分けながら、そうミランダに声をかけた。彼女は頷いて、微笑んだ。

「 えぇ・・・皆さん、こんな私でも優しく接してくれるから、何だか私の方が申し訳ないくらい・・・ 」
「 そんなことないわ!きっとミランダの力を借りる任務が、これからどんどん増えると思うわ 」
「 その時は、ヨロシクね 」
「 ・・・有難う。リナリー、 」

 ぐすっと鼻をすすったのを見たジェリーさんが、そっとティッシュを差し出した。

「 ジェリーさん・・・私・・・ジェリーさんのお料理食べると、本当に元気、出るんです 」
「 あらン!嬉しいわ嬉しいわ、最高の褒め言葉よっ!ミランダちゃんは何が好き?何でもあるのヨ!! 」

 ジェリーさんは手の中で、トングをカチャカチャと鳴らした。
 その光景を見ていた私とリナリーは、声を上げて笑った。ミランダとジェリーさんも笑った。



( いいなぁ・・・楽しそうだなぁ・・・4人共・・・ )
( 室長!体育座りで『の』の字書くの、やめてください!! )
( しょーがないさぁ。この歓迎パーティに、男は参加できないんだとさ )
( なのに、よく今夜のこと、つきとめましたね )
( が、廊下でミランダに声をかけているのを、ユウが『たまたま』聞いたんさ )
( ・・・デカい声の女だからな )
( 『たまたま』じゃなくて、『ストーカーしてて』の間違いじゃないんですか? )
( ・・・・・・ )
( はい!リーバー班長。神田くん止めて )
( だからぁっ!何で俺なんッスか!? )
( しーっ!!声聞こえちゃうだろ!? )



 甘い砂糖菓子たちに囲まれ、どのデザートにもひと通り手を伸ばした頃、ミランダが言った。

「 でも黒の教団って・・・本当に男の人ばかりね。そう聞いてはいたけど、予想よりも多くて驚いたわ 」
「 私も入団した時、そう思ったわ。どうしてなのかなぁ 」
「 さぁ・・・体力有り余ってるからじゃない? 」
「 リナリーちゃん・・・今、適当に言ったでしょ 」

 バレた?とばかりに、リナリーが舌を出した( ホント、リナリーは何をしても可愛いと思う )( あ、友達として、よ? )

「 ミランダは緊張、するの?男の人いっぱいだと 」
「 ううん、大丈夫だけど・・・でも『意識』しちゃうと、自然と身体はこわばっちゃうものよね 」
「 ええええええ!?ミランダ、『意識』しちゃうような男の人、教団内にいるのっ!? 」

 ミランダの発言に、私とリナリーは声をあげ、ジェリーさんがぷひっとワインを噴き出しそうになって、むせていた。
 私たちの反応に、彼女は一瞬怯えたように肩を震わせたが、すかさず両手をブンブン振って否定した。

「 い・・・いないわよ!まだ、来たばかりだもの。ただ、女性としての一般論を述べただけで・・・ 」
「 そうねン、恋する女の子なら当然よね。わかるワー、私も経験あ・る・か・ら♪ 」

 零れたワインを拭きながら、ジェリーさんがこくこくと頷く。



( え・・・『わかるワー経験あ・る・か・ら』って、問題発言なんじゃないんさ? )
( ・・・だな )
( 誰なんだろうな、ジェリーに想い寄せられてるオトコって・・・ )
( そして、そこはやっぱり・・・オトコなんさ・・・? )
( ・・・誰でもいいですけど、神田じゃないですかね? )
( はァっ!?モヤシ・・・適当なコト言うんじゃねぇよ!! )
( ええ!?僕はリーバー班長だと思うんだけどねー )
( ・・・室長も、適当な発言するのやめてくださいよ。兄妹揃って・・・ )
( 僕は本気だよ? )
( ・・・・・・ )
( ・・・ま、まぁまぁ・・・あ、ホラ!女性陣の話も進んでいるみたさ )



「 ジェリーさん!教えてよ!!その男性の名前 」
「 いやーんッ!ちゃんったら。恥ずかしいわ!アタシ恥ずかしいわっ!! 」

 頬を赤く染めて、イヤイヤするジェリーさん。
 フリルが肩口にびっしりついたパジャマの裾が、弧を描く( 乙女だなァ、ジェリーさんも )
 グラスに残った最後の一口を飲み干したリナリーが、放つ。

「 フフッ。私は、の『好きな人』、知ってるけどね♪ 」








『 ええええええええぇぇぇぇっっっっっ!!!!!!!!! 』








「 ・・・・・・今、どこからか、私たち以外の声が聞こえなかった・・・? 」

 眉間に皺を寄せ、辺りに緊張を走らせる。ツインテールが揺れた。
 二人が呆然とする中、私はリナリーの爆弾発言に顔を赤く染めた。

「 リ、リ、リ・・・リナリー!!! 」
「 あら、『好きな人』がいるってコトくらい良いじゃない。私たち4人しかいないんだし 」

 大丈夫よ、ジェリーさんもミランダも口が堅いし、と彼女は極上の微笑みを浮かべた( コレをやられると、もう逆らえません・・・ )

「 ちゃんっ!!『好きな人』なんていたのね!?全然気づかなかったワ、アタシ・・・ 」
「 隠していた訳じゃないんですケド・・・一応・・・います・・・ 」
「 アラ、赤くなっちゃって・・・カワイイ〜っっ 」

 ジェリーさんが、私のほっぺを人差し指でつついた!からかわないで下さい〜、と言うと、横でミランダが胸を押さえている。
 彼女は、ちょっとビックリしちゃって心臓が・・・と顔を白くしていた( ・・・大丈夫かなぁ・・・ )



( ・・・僕も、ちょっとビックリしちゃって心臓が・・・っていうか精神的ショックが・・・ )
( そうだよなぁ・・・だって年頃の女の子だもんなぁ・・・ )
( ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・)
( ユウ、完全にフリーズしてるさ!・・・そりゃ俺だってショックさ。脳天に槌、打ち込まれた気分さ )
( うううぅぅっっ!リーバーくんリーバーくん!!リナリーにも、そういう男性(ヒト)っていると思う!?そんな奴はコムリンの餌食に・・・むぐっ! )
( 静かにしてくださいってば、室長!! )
( ちょ・・・リーバーあんまり動くなよ!アンタの髪の毛が、俺の鼻をくすぐるんさ!! )
( なら、画面から離れればいいじゃないですか )
( アレン・・・冷たいさー・・・ )
( ・・・・・・本題に入りそうだぞ )
( あれ、神田くん復活? )



 ドキンドキンと高鳴る鼓動を落ち着かせながら、ミランダは・・・。

「 ふふふ・・・でもいいコトよね、『好きな人』がいるって 」
「 そうよ、。恥ずかしがることないわ 」
「 で、教団内のヒトなのかしらン?? 」

 ひーっ!そんなに迫らないで、3人共!!
 こ・・・ここまできて答えなかったら、明日からいぢめられちゃうんだろうな・・・きっと・・・( だって無言の圧力を感じるもの )
 とりあえず・・・ジェリーさんの質問に、首を縦に振った。

「 ・・・誰なんですか? 」
「 誰なの? 」
「 誰なのかしらン? 」
「 か・・・勘弁してよ!それは言えないよっ!! 」

 ってかリナリー!『好きな人』、知ってるって言ったくせに・・・( カマかけたわね!? )
 ミランダもリナリーもジェリーさんも、瞳をキラキラと輝かせながら、私に向かってにーっこり微笑んでいた( 怖っ )



( 誰なんだ!?俺か? )
( 馬鹿か、テメェは。俺だろ )
( リーバーさんに言ったセリフ、そのままそっくり返しますよ。が好きなのは、僕です )
( アレンこそ自意識過剰さ。と一番仲の良い俺に決まってるさ! )
( リナリーが一番好きなのは、この僕だと思うけどね )
( 誰もンなコト聞いてねぇよ、コムイ )
( ・・・しくしくしくしく。神田くんがいぢめるよう・・・リーバーくぅん )
( だからぁっ!俺に振るのはやめてください!! )
( ・・・っっ!!動くなって、言った、さ・・・ )



「 いいじゃない。私たち、『親友』よね!? 」
「 ・・・と、もっと仲良くなりたいわ・・・私 」
「 教団内じゃ数少ない女友達じゃない!?教えて教えてよン!! 」

 うぅ・・・リナリーに完っ全にハメられた気がするケド・・・( がっくり )
 ・・・しょうがない・・・後でしーっかり!口止めしとけば、大丈夫かなぁ。

「 わかった・・・降参よ 」
「 ! 」
「 教えてくれるのね? 」
「 うん・・・そのかわり!絶対ナイショにしといてよ!!! 」
「 やぁねー、アタシってば口固いからダ・イ・ジョ・ウ・ブ☆ 」

 3人がもう一度にーっこり微笑みかけたのを見て、一瞬頬が引きつりそうだったけど( 我慢! )
 飛び出しそうな心臓をひっこめて、私は・・・口を開いた。



( ダメ、さ・・・ )
( ラビくん? )
( ハ・・・ )
( ・・・ラビ?どうした )
( ハァ・・・ )
( ・・・ちっ、まさか・・・ )
( ハァッッ!!! )
( 駄目です!ラビ!! )



「 私の・・・好きな、人、は・・・ 」








『 ハァァッックショイッッッ!!!!! 』








 ・・・突然、テーブルに鎮座していたティムキャンピーから聞こえた、盛大なクシャミが耳を貫いた。
 私たち4人は・・・びっくりして、目を丸くして・・・その場を動けずにいたけれど。
 誰より早く動いたのは・・・。

「 ・・・リナリー!? 」

 ヴ・・・と彼女の誇る最速イノセンス『黒い靴』が、発動した。
 瞬間、リナリーは天井へと跳ぶ!!
 石の砕ける音がして、破片となった天井が降って来る。私たちは、素早く壁へと身を寄せた。
 煙がまだ晴れない中、誰かの声がする・・・。

「 てて・・・駄目だって、言ったのに・・・ 」
「 ご、ごめんさー・・・不可抗力で 」
「 ・・・言い訳はいいから、早くどけ!! 」
「 でも、俺の髪の毛のせいじゃないよな、コレ・・・ 」
「 ふーむ・・・どうしてこんなコトになっちゃったんだろねぇ・・ 」

 重なり合うシルエットは・・・確かに・・・。

「 兄さんたち!!一体どういうことっ!? 」

 『黒い靴』の踵を、カツリと鳴らして、リナリーが近づいた。
 シュンとした姿のコムイさんと・・・青い顔をしている見慣れた人たちの姿。

「 アレン、ラビ・・・神田も・・・それに、リーバーさんまで・・・ 」
「 ッッ!!! 」
「 きゃぁ! 」

 ラビが私を見つけるなり、泣きそうな顔で飛びついてきた!( いつものことだけど・・・コレってセクハラよ! )

「 !お前の好きな人って、一体誰なんさ!? 」
「 ラ・・・ラビ、聞いてたの!? 」
「 ショックだったさ・・・でも!! 」
「 どけ! 」

 あー!と悲痛な叫びを上げたラビを見事に剥がしたのは、神田。
 彼は私の頬に手を添えると、いつもの神田からは想像もつかないような寂しそうな表情で、私と視線を合わせた。

「 ・・・自惚れていると、思われてもいい・・・ 」
「 神田・・・? 」
「 お前の、好きな奴って・・・ 」
「 そこまでだ、神田! 」

 後ろに控えていたリーバーさんが、神田の言葉を遮る。
 彼はズイっと私と神田の間に入って、私の両肩をそっと引き寄せた・・・(ちょっとビックリ)

「 リ、リーバーさん!? 」
「 ・・・お前に好きな奴がいたって、俺は構わないよ 」
「 え、あの・・・ 」
「 言わなくて良い。だけど知っていて欲しいんだ・・・俺は 」
「 リーバーさん、抜け駆けはナシですよ? 」

 赤い手が、リーバーさんの肩を掴んで押しのけた。アレンは私の前に立つと、にこっ・・・と優しく微笑んだ。
 私もつられて微笑み返すと、アレンの右手が私の髪を一房摘んで、そっと唇を落とす。

「 ごめんなさい・・・リナリーたちとの話、聞いてしまったんです 」
「 ・・・アレン・・・ 」
「 責められても仕方ないと思ってます。に好きな人がいるって知って、聞かなければ良かったと思いました。だって、僕・・・ 」
「 ちゃぁぁぁぁぁんっっ!!! 」

 タックルー!とばかりにアレンへと突っ込んだコムイさんは、私の両手を握った( 吹っ飛んだアレンから、悲鳴が聞こえた )
 えぐえぐ・・・と滝のような涙を流して、私に迫る。

「 ちゃんは・・・リ・・・リナリーにも好きな人とかいると思う!? 」
「 そ、それは本人に聞いてみないと・・・私ではわかりかねます・・・が・・・ 」
「 、伏せて!! 」

 背後からの声に、咄嗟に身体を低くした。リナリーの『黒い靴』が、コムイさんにクリーンヒット!!( 凄・・・ )
 窓を破って、キラリと闇の中へ消えたコムイさんを見送ると、今度は残った男性陣に向き直った。

「 よ・く・も!楽しみにしていたパジャマパーティを台無しにしてくれたわね・・・ 」
「 す・・・すみません!リナリー 」
「 悪かったと、思ってるさぁっ! 」
「 問答無用!!! 」

 謝罪の言葉もむなしく、仲良く『黒い靴』の餌食になった( そこまで出来るのって、リナリーだけだと思う )( ある意味、教団最強・・・よね )








「 ・・・散々な夜になっちゃったわね・・・ 」

 崩れたリナリーの部屋は、明日修理することになり。
 パーティ解散後、彼女は私の部屋で眠ることになった。

「 でも、美味しいモノいっぱい食べれたし、それなりに楽しかったわ 」

 私の言葉に、そうかなぁ・・・と布団の中で、リナリーが唸った。
 そんな彼女に笑いかけて、ナイトテーブルにあったランタンの光を吹き消した。闇が部屋を満たす。

「 ミランダやジェリーさんも、そう言ってくれると良いんだけど・・・ 」
「 大丈夫よ。二人共、きっとそう思ってるに違いないわ 」
「 ・・・がそこまで言うなら・・・信じるわ 」

 顔を見合わせて、照れたようにクスクスと笑った。

「 さ、寝ましょう。明日、突然任務が入るかもしれないし・・・ 」
「 ねぇ、 」
「 なぁに? 」

 もぞ・・・と音がして、リナリーが私の顔を見据えた。

「 ・・・の『好きな人』って、ホントは誰? 」

 リナリーになら・・・教えてあげてもいっか・・・。
 何てったって、大切な『親友』!だもんね?

「 ナイショにしてよ?」
「 約束するわ 」



「 ・・・・・・・・・・・・あのね・・・・・・・・・・・・ 」






( 誰の名前を呟いたかは・・・私たちだけの、秘密・・・ )












Material:"InvisibleGreen"