ぎゅ、ぎゅむむむ・・・・
「 ひっ、え、ちょ、待っ、ストップストップ!リナリー!!! 」
のひきっつった悲鳴が上がり、ふいに手を止めた。
正面を見ると、鏡越しに・・・今にも泣き出しそうな、彼女の顔。
「 なーに弱音吐いているの、貴女らしくもないわ 」
「 いや・・・これは、さすがに吐かせて、よ・・・ 」
・・・諦めて、私はやれやれとため息を一つ吐いた。
青くなっていたは、申し訳なさそうに背中のジッパーを自分で下げていく。
彼女の身体を締め付けていたワンピースが、呪縛から解かれて力なく床に落ちた。
も、ほう、と一息吐いて( 私とは別の意味で )
「 ・・・ありがと 」
と、簡単に畳んだワンピースを差し出す。
「 ふぅ・・・どう、いたし、まして 」
「 もう、リナリーったら、拗ねないでよー 」
「 だって、絶対似合っていると思ったのに・・・ 」
若草色のワンピースを摘んで、彼女に当ててみる・・・うん、似合う。
店内で、一番に似合うのを選んだつもりなのに。
「 うーん・・・1サイズ、大きいものがあったらなぁ 」
教団直下にある街は、程よく品揃えも良い筈なのに。
残念ながら、このワンピースだけ彼女に適したサイズがないらしい。
が苦笑して、下着姿のまま、その場に座り込んで。
リナリーとは細さが違うからなぁ、と唸る。
「 何言ってるのよ、だって痩せているじゃない 」
「 ・・・リナリーに言われても、嬉しくなーい!欲目だ、贔屓だ!! 」
「 大丈夫だって!・・・ホラ、次にコレを着てみてちょうだい 」
「 ふあーい 」
が体型を気にしているのなら、と用意したツーピース。
ぱっと飛び起きて、私の差し出した洋服を抱え、カーテンを閉めた。
・・・そして、試着室の外で待つこと3分・・・。
「 ・・・・・・?? 」
声をかけて、カーテンの中に首だけ突っ込んでみる。
すると、はバツが悪そうに笑って見せて・・・。
悪いけど・・・また、ファスナー上げてくれる?と、背中を差し出した。
私は、わ・ざ・と!盛大な溜息を吐いて、彼女の白い背中に手をかける。
ジ・・・と小さく音を立てて、身体を布地が覆っていく。
「 ありがとうね。リナリー 」
「 ホーント、ってば私がいないと、なーんにも出来ないんだから! 」
「 ・・・うん、そうなの 」
棘のある言葉だったのに、素直に返ってきたから、少しだけ焦る。
傷つけてしまったかしら・・・と心配で( そんなつもりはなかった )
鏡越しに見れば、予想に反して・・・彼女は、笑顔だった。
「 リナリーにはいつも助けてもらってばかり。独りじゃダメなの 」
「 ・・・私 」
「 有難うね、リナリー 」
そう言って・・・花がほころびるように、ふわりと微笑んでみせる。
ほんっとに・・・助けられてばかりなのは、私のほう
そんなに純粋な眼差しで『 有難う 』なんて言われたら
私のほうが、反対に照れてしまう
・・・だけど、内心、すごく嬉しい
彼女の役に立てることが、とっても光栄に思えるの
自分に無い部分を、妬むのではなく、心底尊敬できる
それがいかに大切なことかって
気づかせてくれるのは、彼女の言動だったり、行動だったり・・・
私は、いつだって・・・のそんなところが
羨ましくて、羨ましくて、仕方ないのに
「 ・・・さ、出来たわ 」
鏡から、彼女の眼差しから瞳をそむけるように。
ファスナーを一番上まで閉めて、ぽん、と背を叩いた。
「 ありがと!・・・あ、いいカンジ 」
はスカートの裾を摘んで、くるりと回ってみせる。
シフォン素材のスカートが、風に乗って舞った。
今度はどこもきつくないわ、と声を上げて笑う彼女は、心底嬉しそうだった。
「 でも、独りで着れないと意味ないんじゃないの? 」
「 練習する!あとは、リナリーのいる時にしか着ない 」
「 やれやれ・・・ 」
肩を竦める真似はしても、自分の頬が緩んでいるのがわかった。
私は少し離れた場所で、彼女が団服に着替え終わるのを待つ。
私たちは、今がお年頃、と呼ばれる年齢で
そのうち気になる異性が出来て、過ごす時間も減っていくのかもしれない
けれど・・・
どんなに離れていても、ずっと『 友達 』だから
傷ついたら励まして、泣きたい時には肩を貸してあげる
2人で喜べたら、嬉しさも2倍よね
女同士のほうが、分かち合える絆は断然!強いんだから!!
それを知っているから、私たちの関係は、永遠に続いていくんだわ
「 リナリー、お待たせ!・・・すいませーんっ、コレくださーい 」
シャッとカーテンを開くなり、がレジに向かって叫ぶ。
返事がして、店員さんがこちらに走り寄ってきた。
私は、そんな彼女の背中を黙って見つめている。
きっと・・・・・・これからも、ずっと・・・・・・
Week!!
= アナタと過ごす、一週間 =
( 身近にいる貴女が、最大の好敵手で親友だなんて、素敵なじゃない? )
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