「 ああああっ、もうヤダヤダヤダ!!! 」
机にあった書類が、ばささーっと音を立てて宙を舞った。
一枚や二枚ではない。それこそ、何百枚。
ハンコ待ちで並んでいた科学班のみんなから、溜息が零れ、
誰かが『 ・・・またか 』と呟いた。
( 何?過去にもあったってことなの、この光景!? )
「 ・・・コ、ム、イ、さんっっ!!! 」
コムイさんの後ろで、書庫の整理をしていた私は、振り返って彼を睨む。
鬼のような形相をしていた、んだと思う( 多分 )
机に突っ伏していたコムイさんが、びくりと身体を震わせた。
「 何やっているんですか、みんな忙しい中、コムイさんを待っているんですよ!? 」
「 うう・・・だって、だってだってぇぇぇ 」
「 コムイさんがどうしてもって言うから、私だってお手伝いしているんです! 」
「 ちゃんには、ものすごーっく感謝してるけど、僕、疲れたんだよーっ!! 」
「 ( こンの・・・っ! ) 」
「 まあまあ、抑えて!! 」
拳を高くかざした私を羽交い絞めにするように、リーバーさんの制止が入る。
「 許しちゃダメです、こんな子供みたいなワガママ!! 」
「 ・・・の意見はもっともなんだが、ま、休息も必要だ 」
「 リーバーさんっ!? 」
「 ワガママ言い出す時は、室長の限界だ。・・・おーい、15分休憩するぞー 」
宥めるように、大きな掌が私の頭を撫でる。
その手は、ヒラヒラと別れの挨拶を告げると、給湯室へと消えていった。
他の班員も、思い思いの場所へと去っていき・・・。
ぽつーん、と部屋に残されたのは、問題児の私たち二人だった。
「 ・・・・・・・・・ 」
横目で見下ろせば、突っ伏したコムイさんは、ぴくりとも動かない。
私は溜息ひとつ吐いて、退出しようとした時だった。
「 ・・・世間一般では、日曜日って、お仕事お休みの日だよね 」
机と身体の隙間から、そんな呻き声が聞こえてきて。
・・・思わず、足を止める。
「 でもここは・・・世間一般から、隔離された場所ですから 」
エクソシストになってからは、不思議・・・というより、非日常的なことばかり。
年頃のオンナノコとしては、普通に恋愛して、結婚して、家庭を築いて。
そんな平凡な『 当たり前 』な日常に憧れたけれど。
それでも、私は教団にいられて、必要とされて・・・とっても幸せだから。
「 コムイさん、お休みが欲しいんですか? 」
「 え、うーん・・・でも、今はひとときでいいから休息が欲しい、かなぁ 」
贅沢だとわかっていても、と彼は付け足した。
私は天井を仰いで・・・コムイさんの隣に、立つ。
気配に気づいて、むっくりと身体を起こすコムイさんに・・・微笑んだ。
「 ・・・室長、今からデートしませんか? 」
「 へ?ちゃんと!? 」
「 食堂まで行って、ジェリーさんから淹れたてのドリップコーヒーを受け取る。
それを飲みつつ、廊下をゆっくり歩いてこの部屋に戻る・・・ちょうど15分です 」
いかがですか?と問うと、コムイさんの顔が少しずつ明るくなる。
何度も頷くと、それ、いいね♪と微笑った。
「 じゃあ、行きましょう 」
歩き出した私の隣に、コムイさんは駆け寄る。
平行線に立つと、彼は私の右手を、きゅ、と握った。
驚いて見上げると、銀縁の眼鏡からはみ出した頬が、真っ赤に染まっていた。
「 ・・・デートだから、手、繋いでも・・・いいよね? 」
そう言ったコムイさんが、やっぱり子供に見えたので
私は堪らず吹き出して、彼の掌を力いっぱいっ!!!・・・・・・握り返した
Week!!
= アナタと過ごす、一週間 =
( 仕方ないなぁ・・・今だけ、甘えて良いですよ? )
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