午前10時。ゴーレムが朝を告げる。






「 ふあ、あ、あァ・・・うー、もう朝ぁ・・・? 」


 ベッドの中で、もぞもぞとしていた俺は、ゴーレムを宥めて音を止める。
 カーテンから差し込む日差しが、瞳を貫く。
 長い前髪の隙間から、差し込む眩しさに・・・思わず、細めた。


「 とっくにお天道様は空の上じゃ、このボケがっ!! 」
「 ぐふはァっ!! 」


 小さな足が放つ衝撃波が、俺の頬を襲う。
 壁にぶつかって、糸の切れたマリオネットのように、ばすんと布団に埋もれた。


「 ・・・ち・・・っく、しょぉ・・・この、パンダめ・・・っ!! 」
「 生意気な口を。起こせというから、親切に起こしてやったものを・・・ 」
「 もっとソフトタッチに起こしてくれさっ!! 」


 ふんッ、と鼻を鳴らすと、読んでいた分厚い書物へと視線を戻す。
 ちぇー・・・マイペースなヤツ・・・っと、こうしてられないさっ!!
 俺はバスタオルを掴むと、シャワースペースの蛇口を捻る。
 温度調節をして、眠気と疲れを一気に洗い流した。


「 ふーん、ふ、ふ、ふーふふーん♪ 」


 蒸気の満ちた部屋に、俺の鼻歌が木霊する。
 ボディソープを泡立てる。バラの香りが、バスルームに立ち込める。
 ・・・これは以前、俺の誕生日にがプレゼントしてくれたもの。
 俺はその時の、彼女の照れくさそうな表情を思い出して・・・ニヤける!






 うへっ、ってのはぁ・・・俺の カ ノ ジ ョ さ っ ♪
 そりゃーもう!可愛いくって可愛くって、一秒たりとも離れたくない!!


 でもさ・・・離れた時間が愛を育てる、っての??
 一晩、一緒に過ごした後も、俺は必ず一度は部屋に戻る。
 後でまた合流するんだけど・・・その『 間 』って、とっても大切、なんさ。






「 じじィ!!てめ、俺のボディソープ、使うなって言ったろっ!? 」
「 風呂場に置いているお前の方が悪いわ 」


 シャワールームから出るなり、文句を言うが。
 百戦錬磨のブックマンは、取り合ってさえくれない・・・っ( くすん )
 俺は気を取り直して、シャコシャコと歯磨きを始める。
 が好きだと言っていた、ストロベリー味の歯磨き粉。
 ( 俺の世界は、いつだって彼女中心に回っているんさ! )
 キス、する時に・・・いい匂いがするんだってさっ( えへへ )


 ・・・あ、匂いで思い出した。香水、この前買ったんだよな、任務先で。
 デートに付けていって大丈夫かな。嫌がられないかな。
 うーんうーん、どうす、っかなー・・・。


「 ・・・そこまで、気にせんと思うんじゃがのォ 」


 まるで、お見通しだと言いたげに。
 ブックマンがボソリと呟く・・・くーっ、イチイチ突っ込むんじゃねえよ!
 とりあえず!香水は、かるーく手首つけるだけにしておいて・・・。
 うお、マジで時間がなくなってきた!!急げ急げっ!!


 バン、ッ!!


 クローゼットを開けると、並んているのは大・小の団服。
 ブックマンと、俺の団服だ。ハンガーに吊るされたそれを、ぐるーりと回す。
 ・・・うん、ヨシっ!!汚れとかついてないよな?
 片手で少し引っ張って、皺を伸ばしてみる。


「 ・・・お前「 いいんさッ、これでっ!! 」」


 これ以上、何かを突っ込まれる前に、俺の方から黙らせるっ!
 彼は、ため息をひとつ零して、手元の書物のページを捲った。
 あー、絶対帰ったらまた何か小言、言われるんだろーさ・・・( げんなり )






 ・・・やっ・・・べぇぇぇ!!だ・か・ら、時間ないんだってばっ!!






 俺は、タオルで髪を大方拭くと、団服に袖を通す。
 ジッパーを閉めて、首元にはアクセントのマフラー。
 バンダナを、きゅ、と上げると、自然と気持ちが切り替わった。


「 行って来るさ、じじィ!! 」


 視線すら合わさなくなったブックマンが、しっしっ、と手を払う( ・・・ )
 ・・・ま、いか。今は出かけなければ。






 が!がっ!俺を・・・待ってるんさっっ!!






「 よぉ、っしゃーッッッ!!! 」


 俺は、マッハで廊下を駆け抜ける
 いけいけっ!俺の身体、俺の気持ち、俺の愛っ!!




 彼女の元まで、マックスでぶっ飛ばすんさーっっ!!!!!




















「 あ、ラビーっ!! 」


 待ち合わせ場所の玄関前で、が大きく手を振っている。
 真っ白い歯を覗かせて、にこにこ笑顔で出迎えてくれる姿が愛らしいさっ!


「 お待たせ!!遅れて、ゴメンな 」
「 ううん、全然大丈夫だよ 」


 このやり取りも、もう何回も繰り返しているのに。
 飽きもしないのは、俺もも、これが一種の儀式だって知っているから。
 俺は、手を伸ばす。嬉しそうに、がその手を取る。




 ぎゅ・・・・・・と、その手に相手の温度を感じ取って。




「 行こ!! 」


 と、彼女が微笑う。


「 おうさっ!! 」


 と、俺が微笑う。




 門番にことわると、その大きな身体がゆっくりと動いた。
 扉が開き、眩しい光が2人を包みこむ。朝とは違って、柔らかい眩しさ。
 『 感じ方 』が違うのは、きっと隣に君が居てくれるから。






 辛い試練も、君がいれば・・・俺は乗り越えられるんさ。どんなことも。
















 それは、とても幸せなことだと・・・・・・思った
















Week!!




= アナタと過ごす、一週間 =




( だから、もっと、ずっと、いつまでも、君の傍にいさせて )