運命とはなんて残酷!





 好きになった奴が、たまたまエクソシストだった・・・なんて
 きっと言い訳に過ぎない。ロードあたりに言えば、ゲラゲラと笑われることだろう
 ( ・・・あ、ちょっと想像できるのが、嫌だなぁ・・・ )


 ノアとエクソシスト


 見事に相反する、俺と彼女の立場
 恋に堕ちるのが運命ならば、この逆境も乗り越えられるのも運命のうち、だろ??












「 ・・・さて、一人に、なった訳だけれど 」


 ぐしゃりと醜い音をたてて、最後の一人が地面に伏す。
 崩れ落ちたエクソシストに、彼女が駆け寄り、声をかけるが、返事は無い。
 ・・・当然だ。彼の心臓は、今、俺の手元にあり、ティーズを音をたてて食している。


「 どうする? 」


 どうもこうも、答えは一つなのだが。
 俺は敢えて『 エクソシスト 』の彼女に問うてみる。
 ユラリ・・・と、立ち上がると、意志の強い瞳で俺を睨んだ。


「 よくも・・・よくも、仲間をっ!! 」


 己のイノセンスを発動させるが、とうに彼女は体力の限界を超えている。
 苦しいだろうに。辛いだろうに。それでも動くのは、転がった屍たちの為だというのか。


「 ・・・妬けるねェ 」
「 からかわ、ないでっ!! 」
「 マジだって。俺が死んでも、そこまで立ち上がってはくれないだろ? 」
「 黙れ、ノア!! 」
「 ひっどいなー、いつもみたいに呼んでよ。ティキって・・・ 」
「 お前は・・・ティキじゃ、ない・・・っっ!! 」


 叫んで、が顔を覆う。指の隙間から零れ落ちた雫が、乾いた地面を濡らした。
 『 白 』い俺しかしらなかった彼女に、『 黒 』の俺はキツ過ぎたか・・・。
 そりゃそうだよなぁ。しかも仲間のエクソシストを、目の前で殺しちゃったし?
 ( あ、でも待てよ。もう一人、いたような・・・ )
 彼女だって、俺に好意は感じていてくれていただろうに( もちろん俺のは恋愛感情だけど )
 仕方の無いことだとはわかっていても、裏切られたとあっちゃ、誰だって嫌いになるよな。


「  」


 嫌いでも、構わない。


「 い・・・、や!来ないで、近づかないで!! 」


 受け入れられなくても、構わない。






「 ・・・俺のモノに、なれよ 」
















 を・・・・・・愛してるんだ
















「 ・・・・・・お生憎様 」


 彼女はそう言って、瞬時に発動したイノセンスの刃を、俺へと向けた。
 俺の身体に触れる寸前でかわすが、刃先だけが、頬を掠る。
 ピッ・・・と、空気の裂ける音がして、飛びずさった俺は、頬へと手をやる。
 指先に付着した・・・血の色に。


 何かが、内側から破る音がした。


「 ・・・・・・っ!! 」


 目の前のが、無意識に頬を引きつらせる。
 ああ、わりィ・・・俺、今、すんごい顔してんだな、きっと。
 でもさ、これも俺の『 一部 』だから。ノアの一面だから。
 きっといつか、わかってくれるよな。お前なら・・・理解してくれる、よな。




 お前は、俺の・・・運命の『 恋人 』なんだから、さ・・・




 倒錯した愛だ、と・・・他人は俺を笑うだろうか。
 澄んだ瞳に映った俺は、酷く、醜い顔をしていたが
 彼女を手に入れたという、この上ない幸福に、今は酔っていたかった。
 にっこりと最大級に微笑んだ俺に、彼女が一段と顔を強張らせて、身体を固くした。
















 これで、ようやく・・・・・・お前が手に、入る・・・・・・
















 錯覚とも思えるような・・・運命という名の鎖に捕らわれながら


 俺は、ゆっくりへと手を伸ばした






( そんな様子さえ、愛しく思えて・・・一瞬だけ、殺してしまいたい衝動に、駆られた )



Title:"いちいちく。"