薄型の大型テレビ画面には、10代後半の少年アイドルグループ「プリズム」のライブ映像が流れている。プリズムはショウヤ、タツキ、ユウリの3人で構成されており、デビュー直後はあまり話題にならない地味な存在だったが、シングル4枚目で路線変更した途端にブレイクして一気にトップアイドルの座に輝いた。
 数多くのCM、ドラマ、歌番組に出演したプリズムの姿をテレビで見かけない日はない、とまで言われていた。しかしそんな日々は長く続かず、当時18歳だったショウヤとタツキの飲酒・喫煙写真が週刊誌に掲載されて以来、2人は事務所を解雇されてプリズムは解散となった。
 同じグループで活動しながらも、他2人とは性格の違いから距離を置いていたユウリの処分は無かったものの、控えめで口下手なユウリが1人で芸能活動を続けるのは難しく、しかもプリズムに所属していたというだけで他2人のように未成年での飲酒喫煙を疑われ、以前の爆発的な人気が嘘のようにユウリは芸能界から干されていった。それが半年前の出来事だ。
「いやー、この頃のプリズムの勢いは凄かったですねえ。私の娘もプリズムが出ている番組は全て録画するほどの大ファンでしてね」
「全くですな。うちの局でも彼らの冠番組を放送していましたが、他の局を寄せ付けないほどの高視聴率でしたよ。プリズムを起用したCMの商品はバカ売れで、まさに国民的アイドル! それが今では……まさか、こんなところにまで堕ちてくるとはね」
 宴会用の広い畳部屋で、灰色の浴衣を着た男達が視線をちらりと動かす。その先には1人の青年が、20人近くの男の席ひとつひとつをまわりながら酌をしている。
 彼が身に着けているのは学校の制服を思わせる白い長袖シャツとネクタイ、それだけだ。下半身は下着すら穿くことを許されず、その代わりに尻の間には紫色の異物が埋め込まれている。男の1人が手元のスイッチを入れると、青年の尻から低い振動音が漏れる。
 青年は酌の最中にびくっと身体を震わせ、甘い声を上げてしまう。
「どうしたのかな〜? ん?」
 中年男は震える青年の手で懸命に注がれた猪口の酒を口に含むと、青年の腕を引いてキスをする。そして彼の薄く開かれた唇の隙間から、飲み込まずにいた酒を流しこむ。
「ん、うっ……」
 中年男の口内で温くなった酒をねっとりしたキスと共に飲まされ、青年は続いて入ってきた舌を受け入れて絡ませる。やがて青年を解放した中年男は、満足そうな顔をしていた。
「いやあ、美味い酒だったよ。可愛いユウリくんの唇も堪能できたし、いい夜になりそうだ」
 永遠にも思えたキスから解放されても、まだ次の男がすぐ隣の席で待っている。上だけはプリズム時代のヒット曲の衣装を着て、この畳部屋の前方に置かれている巨大テレビには、センターポジションに立ち笑顔で歌っているユウリが映し出されていた。もう戻れない過去の自分。
 今夜のユウリは事務所社長から、某テレビ局の役員達を集めたこの宴会部屋での『接待』を命じられている。すっかり干されてアイドルとしての活躍の場を失ったユウリに与えられた、特別な仕事。上手く立ち回れる自信はなかったが、拒否すればショウヤとタツキのように解雇される。しかし最後まで頑張れば、昔のようにかいかなくてもアイドルに戻れるかもしれない。わずかに残された希望の光を失いたくなかった。
 酌をするたびに中年男達が、口内の酒を口移しでユウリに飲ませていく。その間にもそばの男から身体を触られ、尻に埋まった異物をずぼずぼと出し入れされる。そのたびに、無意識に腰を揺らしてしまう自分にユウリは絶望する。
 先ほどと同じように中年男から酒を口移しされている最中、シャツの裾から侵入してきた両手に乳首を摘まれた。背後にまわった別の男の仕業だ。前後から身体を弄ばれて、更に飲まされ続けた酒のせいで全身が火照り、気持ちまでおかしくなってくる。
「ああ、そんなにっ……だめ……!」
「一時期はトップアイドルグループのメンバーだった君も、今では私達の前でこんなにいやらしい姿を晒しているんだ。アイドルの仕事が欲しいんだろう? 最初から君に拒否権はないんだよユウリくん」
「っ、ごめんなさい……」
「いけない子にはお仕置きしなきゃね?」
 そう言って中年男は浴衣の前を広げて、股間を露わにした。すでに勃起した性器は赤黒く、だらだらと先走りを垂れ流している。
「ユウリくん、今の君にはマイクよりこっちのほうがお似合いだよ。さあ握って、シコシコしてごらん」
 尻穴を異物で犯されながら、ユウリはためらいながらも中年男の性器に触れた。硬く熱いそれは、ユウリの愛撫を待ち望んでいるかのように、ぴくぴくと小さく動いている。見慣れていないユウリにとってはグロテスク以外の何物でもなかったが、もうやるしかない。ぬめった性器を握った手を上下に動かし、中年男の反応を見る。
「いいねえ……じゃあそろそろ、そのお口でもサービスしてよ。舐めて吸って、私を満足させるんだ」
 中年男の股間に顔を埋めて、ユウリは生臭さに耐えながら亀頭を舐める。尿道の入口あたりを舌先で刺激すると、頭上で呻き声が聞こえた。
「その調子で根元まで、ね?」
 頭を押さえられながら、ユウリはゆっくりと性器を喉奥まで咥え込んでいく。口内の粘膜に包まれ、大きくなっている性器が更に膨張するのを感じた。要求通りに裏筋を舐め上げ、根元の袋を優しく揉む。そうしているうちに限界を迎えたらしい中年男が、ユウリの顔をめがけて性器を扱きながら射精した。
 頬や口元を精液で汚されたユウリは不快になるどころか、自分の中に眠っていた何かが目覚めた。半年前までは順調にアイドルを続けていた自分が性処理の道具にされた。それを改めて実感して、興奮してしまった。飢えた男達が見ている前で、いつの間にかユウリは性器を半勃ちにしていた。
 背後の男がユウリの尻に埋まっていた異物を引き抜き、畳に放り投げる。紫色の極太バイブには大小色々なサイズの突起がついていて、挿入された者を嫌でも感じさせる造りになっていた。
 アナルがバイブの形にぽっかりと開いたままのユウリを、背後の男が軽々と抱き上げて別の中年男の元へと運ぶ。
「ユウリくんの準備ができました、会長」
「おお、ついに来たか」
 この場に集まっている役員達の中の更なる頂点、テレビ局の代表取締役会長である猪田が連れてこられたユウリを目の前にして身を乗り出す。猪田が浴衣を脱ぎ捨てて全裸になると、突き出た腹と毛深い腕や足が露わになる。更にその股間では日本人離れしたサイズの巨根が、その存在を堂々と示すように反り返っていた。
 役員達の前で足を広げて畳に座りこんだ猪田に抱き寄せられたユウリは、強烈な加齢臭の漂う猪田の上半身に背中を預けた体勢のまま、逞しい腕で両膝を抱え上げられる。恥ずかしいM字開脚を大勢の男に凝視されて、興奮したユウリの性器は完全に勃起していた。
「さあユウリくん、君の本当の望みを言いなさい。何のためにここに来て身体を張ったのか、その口ではっきりとね」
 猪田はそう言って、自らの巨根にユウリの腰をじわじわと近づけていく。まだ完全に挿入はしない。えらの張った亀頭とユウリのアナルを密着させ、挿入直前で動きを止めた。
 酌をしながら長時間バイブの責めを受けていたアナルはすっかり開発されて、猪田の亀頭を飲み込もうとする。バイブを挿入される前に中に塗り込まれたローションが漏れ出し、ちゅぷっと微かな音を立てた。
 ここに来て屈辱に耐え続けた目的は、再びアイドルとしてステージに立つことだ。テレビ局の役員達を「接待」で満足させられれば、局で制作している歌番組にも出してもらえる。ショウヤとタツキはもういないが、夢を今でも捨てられないユウリは1人になってもアイドルでいたい。もう干され続ける日陰の存在ではいたくない。
 俺にアイドルの仕事をください。役員達にそう伝えようとしたユウリは口を開いたが、今までは入口に触れるだけだった亀頭が、急にずぶっとアナルに沈んだ途端に思考が真っ白になった。無機質に震えるだけのバイブとは違う、熱を持った肉棒。亀頭部分だけなのに、慣らされたアナルを拡げられる生々しさにアイドルとしてのユウリの理性はあっさりと消し飛んでしまう。
「ひっ、あ……! んっ……」
「ほら、ほら! みんなユウリくんの言葉を待ってるよ?」
 首筋や耳を荒々しく吸われ、猪田の亀頭がユウリの浅い部分だけを往復し続ける。中年男の雄臭い巨根で、もっと深く……奥まで貫かれたらこの身体はどうなってしまうのだろう。膨らみ始めた淫らな想像がユウリの頭を支配した。
 周りの役員達がよだれを啜りながら、欲望にぎらつかせた目でユウリの姿を眺めている。
 プリズムの一員だった頃、大規模なライブ会場のステージで歌っていた時の恍惚を思い出す。何万人ものファンに注目され、止むことのない歓声を浴びた日々。大勢の人間に見られるのは、気持ちいい。
「……っ、皆さんのおちんぽが欲しいです! 俺のお尻にいっぱいハメてください!」
 口移しで飲まされた酒とじれったい快感で狂わされ、目を潤ませたユウリがそう叫んだ瞬間に猪田の腕の力が緩み、浮いていた腰が一気に落ちた。ユウリの1番深いところまで沈んだ猪田の巨根はその圧迫感、熱量、全てが想像以上でユウリは喉を反らして大きく喘いだ。
 アイドルになる前も、なった後も、1度も恋愛をしたことがなかった。もちろんセックスも未経験だった20歳のユウリは童貞のまま、腹の突き出た中年男にアナルを犯され、快感を貪っている。
「ああー、スケベで可愛いユウリくんのお尻の穴、きゅんきゅん締め付けてきてたまらないよ。もうすぐイクから、奥で全部受け止めようね?」
「来て! あっついザーメン、俺の中にたくさん出して……! 俺もっ、いく……」
 巨根でがつがつと突き上げられて、ユウリは背後の猪田に背を預けながら絶頂を迎えた。そして大量に噴き出した猪田の精液の勢いを中で感じた後、欲望と性器をむき出しにして迫ってくる役員達の慰み者になった。


***


『夜遊びなんかやめろよ、俺達アイドルなんだから……』
 仕事を終えてまっすぐ家に帰ろうとしたユウリは、これから朝まで遊ぶというショウヤとタツキを呼び止めてそう言った。2人より1つ年上という立場なので、道を踏み外そうとしている仲間を正さなければいけない。週刊誌の記者達がプリズムのスキャンダルを狙って、チャンスを窺っていることも知っている。
 しかしユウリのそんな想いはあっさりと打ち砕かれた。
『あー、嫌だ嫌だ。年上だからって何リーダーぶってんだよ、うぜえな』
『真面目なユウリ君は、ぼく達とは住む世界が違うもんね。悪いけど、仕事以外でお前と関わりたくないから消えて』
 わざとユウリの肩にぶつかり、ショウヤとタツキは笑いながら廊下の向こうへと消えていく。
 3人仲良く上手くやっているように見えるのは、ファンの前だけだ。プライベートではユウリだけが浮いた存在だった。孤独に押しつぶされそうになっても、幼い頃からの夢だったアイドルの仕事をずっと続けていきたかった。
 ユウリは涙を堪えながら、変装用の眼鏡とマフラーを身に着けて帰宅した。
 ショウヤとタツキのスキャンダル記事が週刊誌に掲載されたのは、その数日後だった。


***


「皆さん、今夜は俺のステージに来てくださって本当にありがとうございます」
 床より少し高いステージの上で、マイクを持ったユウリは店内のソファに座っている客達に向けて挨拶をする。
 薄暗い店内の中で、淡い光に照らされたステージ。そこに立ったユウリは微笑みながら更に話を続けた。
「それでは早速、俺の恥ずかしい姿を見てください……」
 ユウリは黒レザーのショートパンツに手をかけ、ジッパーをそっと下ろしていく。下着を穿いていないため、まだ萎えた性器が客達の視線に晒される。そして後ろを向くと、小さな尻をわざと突き出しながらショートパンツを足首まで下げた。
 この日まで何十人もの男を受け入れても、きゅっと締まったままのアナルまで見られている。客達の低いどよめき、そして荒い息遣い。それらを背後から感じてユウリは息を飲んだ。
 ここは会員制の高級クラブで、今夜は23時から貸し切りになっている。元国民的アイドルグループのユウリが単独で出演する、裏ルートで告知された秘密のイベント。チケット代は5万円という決して安くはない値段だが、定員30人の抽選枠には全国から約600人の申し込みがあったらしい。ビデオカメラや携帯電話など、録画ができる機器の持ち込みは禁止。参加資格は成人男性であること。
 30人の男達の前で両足を開いたユウリは、唾液を絡ませた指でアナルに触れてじっくり愛撫しながら中へと潜り込ませる。店内に濡れた音とユウリの乱れ始めた呼吸音が響き渡る。穴への刺激で性器もすでに勃ち上がっていた。
「や、俺もう……勃ってる」
 恥じらいを見せながら呟くユウリに煽られた何人もの客がズボンの前から性器を掴み出し、元国民的アイドルの痴態を眺めながら自慰を始める。
「信じられねえ、あのユウリが俺達の前で足広げてオナってるぜ」
「指もう2本入ってるよ、どんだけ慣れてんだ」
「ああ、ユウリの穴にぶち込みてえ……我慢できねえ」
 客同士で交わされる下衆な会話を聞きながらユウリは、中の弱い部分を指で探り当てて甘い声を上げる。
 このショーが終わった後は、来てくれた30人の客全員に感謝を込めての「お見送りフェラチオ」が待っている。客を男性限定にしているのはこのためで、まさにチケット代の大半の価値を占めている重要なサービスだ。
 あの接待の夜から、猪田に紹介してもらったユウリの仕事は、金を持っている男達相手の淫らなショーだった。マイクを持ってステージに立ち、パフォーマンスをファンに見てもらう。歌うか歌わないかの違いだけで、アイドル時代とやることはそれほど変わらない気がした。

 大勢の人間に見られるのは、本当に気持ちいい。




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