地下室の絶望 薄暗いバーで仗助は、ひとりでカウンター席に座って連れの帰りを待っていた。 若い姿のジョセフに連れられて来たここは、妙に落ち着かない。自分の他に客は2,3人しかおらず、煙草の匂いが常に満ちていて気分が悪い。 長年住んでいる町の中にこんな店があったことすら知らなかった。 高校生を飲み屋に連れてくる自体どうかと思ったが、制服姿の仗助を見た店主は何も注文をしないうちからオレンジジュースを出してきた。 ジョセフは30分くらいで戻るからと言い残して、店の奥に消えて行った。しかしすでに1時間近く経っても戻ってくる気配がない。 どうせ知り合いか何かと話しこんで時間を忘れているのだろうが、妙な胸騒ぎがする。このまま黙って待っていることはできなくなっていた。 仗助はトイレを探す振りをして、ジョセフが消えて行った店の奥に向かう。店主と一瞬だけ目が合ったが、すぐに他の客のための酒を作り始めた。 地下へと続く階段を降りた先にあるドアの前に立った途端、かすかに誰かの声が聞こえた。途切れ途切れに聞こえてくるそれは、喘ぎ声を思わせる。しかも男の。 それに混じって、違う人間の声が上がる。どうやら中には何人も居るようだ。 ジョセフは間違いなくこのドアの向こうに居るのだが、ドアを開けようとすると何故か手が震えてしまう。今なら何事もなかったように引き返せる。 しかし、ジョセフがとんでもないことに巻き込まれているかもしれない。そう考えるともう引き返せなくなった。 なるべく音を立てずに、ドアを細く開ける。そして中を覗いた途端に、仗助は顔色を失った。 ソファとガラスのテーブルが置かれているだけの、狭い部屋だった。そこで床に膝をつきながら、ジョセフが正面に立っている中年男の性器を口に咥え込んでいる。 着ているのはシャツ1枚だけという、卑猥な格好で。ジョセフが口を離すと、中年男の勃起した性器は唾液にまみれていやらしく濡れていた。 その後ろでは金髪の若い男が、ジョセフの尻に触れて何かをしている。よく見ると指を尻の穴に入れて激しく動かしていた。 ジョセフは嫌がるどころか、腰を揺らして甘い声を上げると再び中年男の性器を咥える。先端を吸い上げたり舌で根元から舐め上げたりと、かなり慣れた様子だった。 「おじさんのおちんちん美味しいかい? 君が喜ぶと思って、一昨日から風呂に入らずに来たんだよお」 「っふ、あ……俺、舐めてるだけでもう、やばい」 「汚ねえもんしゃぶりながら感じてんのかよ、変態だなこいつ。ほら、そろそろ入れてやるからケツの力抜きな」 他にも数人の男が、口も尻も犯されているジョセフを眺めながら自分の性器を扱いている。 一体何が起こっているのか、上手く頭が働かない仗助は混乱していた。男同士で、まさかこんなことが。それよりも、どういう経緯でジョセフがこんな目に遭っているのか。 原因不明のおかしな現象で若返っているとはいえ、今のジョセフも仗助の父親である事実は変わらない。悲しさと憤りが頭の中で複雑に混じり合い、涙が出そうだ。 ドアから離れようとしたが身体に力が入らず、脚がもつれて転んでしまった。勢いよく全開になったドア、部屋の中に転がってきた仗助に集まる、男達の視線。 「じ、仗助……?」 それまではとろけそうな表情で犯されていたジョセフが、焦ったように仗助の名を呼んだ。 若い男はすでにジョセフの腰を掴みながら、性器を根元まで挿入している。それをまともに見ることができず、仗助は床に這ったまま目を逸らした。 「おい、誰だこのガキ」 「……俺の息子」 「えっ、マジかよ!?」 事情を知らない人間から見れば、親子にしては明らかにおかしい年齢差に驚くのも無理はない。本当のジョセフも79歳の老人で、仗助と並べば祖父と孫にしか見え ないのだから。 「待ってろって言ったのに、しょうがねえ奴だな……」 「あんたが遅いから、心配になったんだよ。でも、こんな」 ジョセフは少し前にこのバーで男達と知り合い、酔った勢いでこういう関係になったらしい。 今日は仗助を連れていたので、1階の店内で待たせて挨拶だけして帰るつもりだったが、結局こうなってしまったという。 「俺、気持ちいいこと我慢できなくてさ……刺激が欲しかったんだよね。まさかお前を巻き込むわけにはいかねえだろ」 「だからって、こんな奴らに好き勝手されていいのかよ!」 「じょ、すけ……ごめん」 若い男が腰を動かし始め、気持ち良さそうに喘ぐジョセフの顔に、中年男が大げさに呻きながら射精した。頬や髪が精液で汚れ、ジョセフは流れ落ちそうになった精液を 指に絡めて口に運ぶ。中年男が離れると、別の男が勃起した性器をジョセフの頬にぐりぐりと押し付けた。 ジョセフの性器も勃ち上がっていて、触ってもいないのに先走りが滴り落ちている。この状況に、身も心も興奮しているようだった。 「じじい、もうやめてくれ……」 手のひらを爪が食い込むほど握り締め、涙を浮かべながら訴える仗助の元に、先ほどの中年男が近付いてきた。好奇の目でじろじろ見られて不快になる。 「君、あの子の息子さんだって? 確かに顔そっくりだよねえ」 「くっ……来るんじゃねえ」 「そんな冷たいこと言わないでさあ、お父さんと一緒に楽しめばいいじゃないか」 その言葉を聞いて全身から血の気が引いていった。一刻でも早くジョセフをこの場から連れ出したいと思っているのに、こんな趣味の悪い遊びに付き合っていられない。 今のジョセフの姿を、承太郎に知られるわけにはいかない。顔を合わせてから日の浅い自分でも、これほど衝撃を受けているのだから。 重い絶望感で、スタンドを出して男達を殴り飛ばす気力も生まれなかった。 何とか立ち上がった仗助に、いつの間にか背後にまわっていた別の男が抱きついてきた。尻のあたりに勃起したものを押し当てられてぞっとする。 「いい匂いするね……君、可愛いよ」 シャツ越しに乳首をいじられて、仗助は声が出てしまった。ただ触っているだけではなく、摘み上げたり指先で引っかいたりと、ねっとりした手つきだった。 「ん、嫌だ、やめっ……」 「ほら、乳首もビンビンになってきちゃったね。あのお父さんの血を引いてるだけあって、スケベな子だ」 正面に居る中年男も、仗助の股間をズボン越しに扱き始めた。前後から同時に攻められ、立っていられなくなる。 顔を上げると、ジョセフの尻の穴から溢れた精液が床に落ちていた。先ほどの若い男が、ジョセフの中で射精したのだ。このままではいずれ自分も……。 「仗助君だっけ? 君もおじさんのおちんちん舐めてね。お父さんみたいに美味しそうにしゃぶってよ」 強引に頭を掴まれ、口の中に性器を押し込まれた。呼吸を塞がれた上に、精液のこびりついた陰毛まで飲み込みそうになり、吐き気がこみ上げてくる。 ジョセフは仰向けになった男の股間に跨り、腰を振りながら嬌声を上げていた。 「お父さんも頑張ってるし、仗助君も……ね?」 その囁きに、仗助は我に返った。後ろの男にズボンと下着を脱がされ、尻の穴を左右に拡げられる。そこに熱い息と、ぬるぬるとした舌の動きを感じてぞくぞくと震えた。 階段に続くドアが閉まる音が、やけに大きく聞こえた。外の光も空気も届かなくなったこの地下室で、仗助は完全に心を閉ざした。 |