Harlemアフター





承太郎の手が絶妙な力加減で身体を撫でてくるので、そちらに意識が奪われる。露伴と唇を重ねている承太郎に縋りついてしまう。

「あんたもキスしてほしいのか」
「えっ……あたしは、その」
「僕が居るからって、遠慮してるのか? 構わないぜ、見ててやるから」

先ほどまでの不機嫌は消え失せ、露伴は薄く笑みを浮かべる。鈴美は肩を抱き寄せられ、直後に承太郎にキスされる。次第に深いものになっていき、異常な雰囲気に飲まれていく。
唇が離れた後、露伴の視線を痛いほど感じた。

「キスされてる時の君って、そんな顔するんだな。女の顔だ」
「ろはん、ちゃん……見ないで」
「大丈夫、お返しにいいもの見せてやるよ。ね、承太郎さん?」

いやらしい手つきで承太郎の首に両腕をまわした露伴は、誘うように身体を擦り寄せる。

「え……露伴ちゃん、一体何を」
「いいから見てろよ」

目の前で行われている行為は普通ではないのに、鈴美は何故か視線を逸らせなかった。
承太郎の厚い手が、露伴の性器を慣れた調子で扱いている。昔は大きなスケッチブックを抱えながら鈴美の後ろをついてきていた幼馴染の、今まで知らなかった卑猥な姿。
眉をひそめ、声を堪える表情や揺れる腰を見ていると、身体の奥が疼いてしまう。こんな感覚、ずっと知らなかった。
深いキスは初めてではなかった。なので今更驚くことではないのに、煙草の苦い味が混じった大人のキスは、鈴美の奥深くまで刻まれた。時間が経っても、あの感覚が消えない。また潤してほしくて、喉が渇く。

「っあ、いかせて……」
「いつもより早いな、見られているせいか?」

承太郎の手が露伴を追い詰める。気まずそうに目を伏せる露伴はどこか淫らで、胸がぎゅっと熱くなる。鈴美の知らないうちにふたりはそういう関係で、これ以上のこともしているに違いない。有り得ない関係なのに、こうして露伴の表情や承太郎の仕草を見ていると、これが自然なことのように思えてきてならない。自分の中の感覚が狂ってきているのか。
声を上げ、露伴が達した。指に絡みついた露伴の精液を舐め取る承太郎が、こちらに視線を向けた。彼のそばでは、ぐったりとした露伴が横たわっている。

「あんたさえ良ければ、構ってやるが」

美しい色の瞳が、戸惑う鈴美をとらえて離さない。座り込んだまま、身体の疼きをごまかすように太腿を密かに擦り合わせた。


***


承太郎の長い指が引き抜かれ、達したばかりの鈴美は小さく声が漏れた。誰も受け入れたことのなかった狭い膣は、飲みこんでいた指の動きや感覚をまだ覚えている。
入れられたのは指だけなのに、すでに血の通っていないはずのこの身体は、戻れないところまで押し上げられてしまった。
そばで虚ろな目をしている露伴と目が合う。

「なあ……すごい、気持ちよかっただろ?」
「露伴ちゃん……」
「僕、もう彼の虜なんだ」

力の抜けた身体を地面に横たえている露伴と鈴美を、承太郎が見下ろしている。

「これからは、ここに来れば楽しめそうだな」

そんな声を聞きながら、鈴美は伸ばされてきた露伴の手をそっと握った。


***


先走りで濡れた露伴の唇が、勃起した承太郎の性器に何度も押し当てられる。愛しい者を見る、とろりとした眼差し。そんな彼と限りなく顔が近付いた状態で、鈴美も血管の 浮き出た根元あたりに舌を這わせる。初めてのことなので具体的にどうすればいいのか分からずに、慣れていそうな露伴の真似をして行為を続けた。
塀に背を預けて立っている承太郎は、足元に膝をついて唇や舌を動かす露伴と鈴美の髪に触れ、時々息を震わせながら撫でてくる。
承太郎と露伴が、今度は一緒にこの小道を訪ねてきた。鈴美とただ仲良く話をするために来たのではないと、何も言われなくても分かった。良くないことだという自覚はあるが、 どうしてもあの時の興奮や快感を忘れられなかったのだ。十数年もずっと、愛犬だけが話し相手だった。同じ毎日の繰り返し。そんな中で受けた未知の刺激は、自制心すら溶かした。
露伴の舌先が、亀頭の先端をぐりぐりと割っていく。すると頭上で短い呻き声が聞こえた。
濡れた音と混じる息遣いで、淫らな雰囲気は濃さを増していく。

「このまま、僕の口に出してください」
「ずるいわ露伴ちゃん、独り占めなんて……」
「僕のおかげで、こんなに勃ってるんだぜ。ご褒美を貰う権利はあるだろう?」

ちらりと承太郎を見上げた露伴の顔には、勝利を確信した表情が浮かんでいる。承太郎は露伴をなだめるように頭を撫でると、

「ふたりとも満足できるように、してやるよ」

そう言うと承太郎は、自らの性器を扱き始める。何が起こるのかと思いながらそれを見ていた鈴美と露伴の顔に、熱いものが放たれた。どろっとした白い精液だ。
露伴は少しも動じずに、唇についた精液を舌先で舐め取る。その後でこちらを見ると、精液が流れ落ちていく鈴美の頬に指を伸ばしてきた。それを見た承太郎が口を開く。

「おい、何やってる」
「鈴美の顔についてるのも、きれいにしてやろうと思いまして」
「舌で舐めてやればいいじゃねえか」
「……それは」
「やれ、露伴」

容赦ない承太郎の言葉に、露伴は気まずそうな顔をした。頬が赤いのは気のせいだろうか。
少し前までは余裕の表情で承太郎の性器を咥えていたとは思えない、腰の引けた様子を見せている。嫌なら拒むという選択肢は許されていないのか。
露伴は覚悟を決めたらしく、鈴美の頬に唇を寄せて遠慮がちに精液を舐める。今までは弟同然の存在として見てきた露伴が、鈴美の知らないひとりの男になっていく。

「露伴ちゃん、嫌なら無理しないで」
「してないよ」
「気持ちだけでいいの……嬉しいから」
「もう、黙ってくれ」

急に抱き締められて、鈴美は驚きで呼吸すらも忘れてしまう。最後に視界に入った露伴の顔は今にも泣き出しそうで、それは目を閉じても記憶から消えなかった。




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2011/6/11