禁漁区





 トニオとここを初めて訪れた時は散々な目に遭ったが、あれは明らかに調査不足というか密漁者を陥れる文献の罠にはまったせいだ。
 下半身を覆っていたものはとっくに脱ぎ捨て、足場の安定した場所を選んでひっそりとこの行為にふけるのが、原稿の合間の息抜きになっていた。
 大きなアワビに性器を吸われ、露伴は堪えることなく声を上げた。その形は昔から女の性器に例えられているだけあって、いつ見ても卑猥だ。アワビと言っても先日獲ったクロアワビではない。そして事前にローションや玩具を使って慣らしておいた尻の中にはナマコを仕込んである。中で蠢くたびに、敏感な腸壁に無数の小さな突起が擦れて露伴はびくびくと身体を痙攣させていた。しかもアワビに劣らずグロテスクな外見で、こちらは明らかに男性器を想像させる。本当はナマコを挿入して更にタコの足で激しく突かれるのが理想だったが、捕獲したナマコが予想より大きかったため、物理的に不可能となった。現に入りきれなかった部分が尻からはみ出して暴れている状態だ。
 挿入には使えなかった2匹のタコは、左右から足を伸ばして露伴の太腿に絡みついている。まるで股を開いた状態で拘束するかのように。
 前後から人間ではない生物に犯されて、露伴は狂う寸前まで追い詰められていた。言葉の通じないこれらの生物には、先日のタコと同様にスタンドを使い、この身体を犯すように命じてある。
 今のように地面に両膝をついて尻を突き出す体勢だと、特にナマコの動きを制限することなく行為を楽しめるのだ。
 アワビの中に射精しても更に吸い付いてくるので、一旦萎えても休む間もなくビンッと勃起してしまう。そしてまた強烈に性器を搾り取られる。
「あ、ああ……これ、すごい」
 前に意識を奪われていた露伴を咎めるように、尻の中で蠢いていたナマコが、絶妙なタイミングで激しいピストン運動を始めた。ナマコの柔軟な身体は、人間の男性器とは違い予想もつかない動きをするので、そのスリルがたまらない。
 スリルと言えばここは監視カメラの死角になっている場所だが、アワビやナマコで自慰をして悶えている姿がカメラに映されていたら……という洒落にならない妄想をすると、途端に興奮して尻を犯しているナマコを無意識に締め付けた。
 密漁者以外、この場所にはめったに人は訪れない。こうしていかがわしい目的のために来る人間は、自分だけだろう。自慰というよりは、海洋生物とのセックスだ。
 露伴の最奥に妙な刺激を感じた。人間の性器にはない、ナマコの口周辺にある短い触手が腸壁を小刻みにかき回しているのだ。何これ、と荒い息遣いと共に繰り返し呟く。
「アワビやナマコに犯されて……ぼく、また、イクっ……!!」
 口の端から涎を垂らしながら、露伴は今夜2度目の絶頂を迎えた。すでに精子にまみれたアワビはスタンドの力で、未だに露伴の性器を吸い続けている。
 タコの足が露伴の性器にも伸ばされ、ねっとりとした感覚が根元の膨らみや裏筋を刺激してきた。もはやその動きは、スタンドをかけた露伴にも読めない。タコは知能が高いという話を思い出し、次は何をしてくれるのかと期待してしまう。
 こんなに月明かりの美しい夜、トニオは今頃あの彼女とセックスをしているのだろうか。クロアワビの捕獲は命がけだったが、2人が幸せになれたのなら良かった。
 かけたスタンドを解除しない限り、この快楽地獄は延々と終わらない。露伴の気力と体力が尽きるまでは、夜明けまで続けられる。
 恋愛は今のところ興味がない。ここに来て、海洋生物を相手にしていたほうが刺激的で面白い。




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2013/10/12