秘密の関係





カメユーマーケットで赤ん坊のミルクなどの買い物に付き合っていた時は、まさかこんな展開になるとは思っていなかった。
ホテルの部屋の中、ベッドに乗ってジョセフと舌を絡め合いながら彼の性器を扱く。緩やかな動きの合間に、先端を指で軽く抉って刺激を与える。気持ち良かったのか、身震いしたジョセフとのくちづけを更に深くした。 唇が少し離れると漏れる、小さな呻き声。夢中で動かしていた露伴の手が、垂れてきた先走りで濡れ始めた。

「ジョースターさん……このまま、イッてもいいですよ?」
「すまんのう、こんな年寄りの相手をさせてしまって……」
「日頃からお世話になってますし、このくらいは」

顔を近付けたまま囁き合った頃、ジョセフの性器はこの手の内で完全に膨れ上がっていた。この年齢になっても性欲は衰えてないようだ。
かなりの高齢で若い女と結婚したという、世界的に有名な画家の例もある。そしてジョセフ自身も、それほど遠くない過去に女子大生と不倫をして妊娠までさせた、侮れない男なのだ。
部屋に入ってすぐに、仗助や承太郎には言えないという頼み事をされた。それはこうして、長い間溜まっていた欲望を満たしてやることだった。普段は飄々とした彼が、珍しく気まずそうな顔をして露伴に告げてきた。
ジョセフの年齢を考えると性行為というより、もはや介護だ。しかしいつも興味深い話題を提供してくれている恩もあり、結局引き受けることにした。彼は男相手でも大丈夫なのかという疑問を持ちながらも。

「こうしてると、ぼくも変な気分になりそうですよ」
「ん、もっとサービスしてくれるという意味かの?」
「あなたさえ良ければ、手じゃなくてぼくの中に」

意味深に言うと、ジョセフの目つきが変わった。本当はそこまで求められてはいなかったが、握っている性器の反応に煽られるように露伴もその気になっていた。奥まで貫かれないと身体の疼きは治まりそうにない。


***


ベッドの上で仰向けになっているジョセフの腰に跨り、全裸の露伴は唾液を使って解した窄まりに性器を押し当てる。性欲はあっても正常位で攻める体力はなさそうで、こうして露伴が上に乗る形で行為を進めることにした。

「何の躊躇もなく……いけない子じゃな」
「そうさせたのはあなたですよ、ジョースターさん」

身体の力を抜いて腰を落とすと、ずぶずぶと性器が中に埋まっていく。狭い腸を犯される痛みと、やがて遅れてやってくる快感。これを味わうのは初めてではないが、相手との年齢差や誰にも言えない関係になった背徳感がたまらない。
濃密で異常な空気にやられて、狂いそうになる。やがて根元まで飲み込んで、ようやく深い息をついた。

「この町で若い子達に囲まれて過ごすうちに、わしも何だか若返った気がするんじゃよ」

ジョセフが堪えるように眉根を寄せながら露伴の腰を両手で掴み、尻のほうへと軽く撫で下ろした。突き上げられるのかと期待して、愛撫の感覚に思わず息を震わせてしまう。
動いてくれ、と言われて少しずつ腰を揺らした。

「ああ、っ……すごく、いい」
「君のような子とセックスできるなんて、生きてて良かったわい」
「は、あっ、ん……」
「いやらしい顔でそんなに腰を振って、ほら、ここもこんなになっているぞ」

勃起した性器を強く握られて、露伴は声を上げて背を反らす。無意識に中を締めると、ジョセフの呼吸が獣のように荒くなった。義手の指先が胸の尖りを摘まみ、更に追い詰められる。
我慢できず、自ら快感を求めて激しく腰を上下させた。硬く張り出した亀頭を、腸壁が貪欲に締め付けて搾り取る。
互いの肌がぶつかる音と、乱れた息遣いが絶え間なく部屋を満たす。

「もう10年近くご無沙汰でのう。さあ、もっと楽しませておくれ」

こちらはもういつ達してもおかしくない状態なのに、穏やかに微笑みながらそう言うジョセフが憎らしい。やはり老人だからと甘く見てはいけない。性器に触れるまでは、もしかすると勃たないのではと疑っていたのだ。

「ジョースターさん、ぼく、もうだめ……いく」
「もっと泣かせたかったが……ふむ、そろそろかの」

悠長に呟くと、ジョセフは再び露伴の腰を掴んで押さえつける。何事かと思い動きを止めた途端に、強く突き上げられた。たった1度だけのその動きは予想外だったが、油断していた露伴はあっけなく絶頂を迎えた。
股間に跨りながら射精するという醜態を晒して、頭が真っ白になる。やがて力の抜けた露伴の中で咥え込まれていたジョセフの性器はびくびくと痙攣し、その年齢には似つかわしくない量の精液を直腸の奥へと注ぎ込んだ。


***


「最近のじじいって、やけに元気っつーか……」

オープンカフェでジュースを飲んでいる仗助が、露伴の向かい側でぼやいた。それを聞いた露伴は一瞬、コーヒーカップを持つ手を止めてしまった。

「そうか? ぼくには何も変わってないように見えるんだが」
「いや、あれは絶対何かあっただろ! いきなりおれに小遣いくれたんだぜ、受け取っちまったけど!」

明らかに不審がっているようだが、真実を知らせるわけにはいかない。特に仗助には。
あれから露伴は、ジョセフとの密会を繰り返し、後ろめたい関係にすっかり溺れ切っていた。 薬を飲ませたり着替えを手伝うのも、そしてセックスをするのも楽しくてやめられない。日増しに多くなる、ねっとりとした言葉攻めにも興奮した。
愛の言葉を囁かれなくても、触れ合える時間は長くはないと分かっていても、あの背徳感は癖になる。この後も、面白そうな玩具を土産にジョセフの部屋を訪れるつもりだ。




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2012/4/20