キャンディー 脇腹にうっすらと残っている傷跡を指先でたどってみると、くすぐったかったのか承太郎が小さく息を漏らした。 彼の身体にはこういう傷がいくつもある。多分スタンド使い達との戦いで付いたのだろう、古そうなものからまだ治りかけのものまであちこちに刻まれている。 ジョースターの血統は平穏に一生を終えることはない。首筋の痣と共に、この傷跡はその証と言ってもいい。仗助ならきれいに治せるだろうが、承太郎がそれを望むかどうか。 「描いてもいいですか? あなたの身体」 「ずいぶん元気だな」 「汗まみれになって動いていたのは、承太郎さんだけですし」 押し倒されたベッドの上で喘いでいたこちらも少しはだるさを感じていたが、一度意欲がわいてくると止まらない。ソファに置いてあるスケッチブックを取ってこようと身を起こした時、こちらに顔を向けた承太郎と目が合った。 見つめられると弱い。数分前までの最中の出来事が次々と頭によみがえり、息を飲んだ。 大きな手に腕を掴まれて、再び承太郎のそばに引き寄せられた。汗の匂いが残る、まだかすかに湿った逞しい身体。彼は露伴に触れている時も左手の指輪を外すことはなく、最中にちらりと金属の光が見えるたびに動揺する。 回数を重ねているうちに、完全に開き直れる日が来るだろうか。 露伴の耳朶を軽く吸った承太郎は、至近距離で唇の端を上げて意味深な笑みを浮かべた。 「あんたは面白いな」 「……え?」 「普段は変わり者でわがままだが、抱かれている時だけは可愛げがある」 「抱かれてる時だけ、ね……それはちょっと違いますよ」 承太郎の目蓋に触れ、柔らかいそこをそっと撫でる。確かに快感に流されて多少は大人しくなっているが、彼はまだこちらのことをよく分かっていない。 「あなたの瞳の色、すごく好きですよ。子供の頃は色々言われたかもしれないけど、ぼくはきれいだと思う。あなたがぼくを抱いている間、ずっと想像してるんですよ。口に入れて舐めたらどんな味がするんだろうって」 潰さない程度に、承太郎の目蓋を少しだけ強く押してみる。いくら最強のスタンド使いでも、ここだけは鍛えられないはずだ。彼の緊張が指先から伝わってくるようで愛しかった。 |