映画館で 今日はここに入りましょうと誘われ、足を踏み入れた映画館で上映されていたのは『淫乱人妻 秘めやかな媚肉』という、いかにもなタイトルのポルノ映画だ。 視界に広がるスクリーンの中ではおそらく30代前半と思われる裸エプロン姿の女優が、いかつい男に背後から激しく腰を打ちつけられるたびに、演技丸出しの甘い喘ぎ声を上げた。 座席に腰掛けている承太郎の股間に顔を埋めた露伴が、唾液なのか先走りなのか分からない液体をすすりながらフェラチオに没頭している。女優の淫らな台詞に混じりながら、じゅぼじゅぼと下品な音が耳に届く。 上映開始から数分も経たないうちに、隣に座っていた露伴が承太郎の股間を撫でてきた。この時点で露伴は純粋に映画を観たくてここに入ったわけではないと気付いた。最初からこうするつもりでポルノ映画館を選んだのだ。 自分達の他は遠く離れた席に初老の男が1人いるだけなので、露伴は何の遠慮も恥じらいもなく行為を続け、承太郎は中出しされた女優の太腿の奥から、白い液体があふれ出す場面を眺めていた。あれは本物の精液ではないだろうと冷静に考え、露伴の頭をそっと撫でる。こうしてやるとたまらないのか、露伴は息を震わせ薄闇の中で承太郎を見上げながら、そそり立った性器を根元から亀頭に向かって舐め上げる。 「まだ、イカないんですか」 「足りねえ、もっとだ」 「もしかして遅漏……?」 「早いよりマシだろう」 「ま、そうですけど」 再び露伴は性器を深く咥え込み、頭を上下に振る。自分の身体も疼いてきたのか、フェラチオをしながらズボンと下着をずらし、ここからでは隠されてよく見えないが片手の動きからして露伴は自慰を始めていた。もはやスクリーンに映っている下手な演技よりも、いやらしく揺れる露伴の尻を見ていたほうが興奮する。 「ああ……もう、承太郎さんのペニスでめちゃくちゃにしてほしい」 「そろそろ映画が終わるぞ、ここでは無理だな」 「あなたはこのまま出せば終わりですけど、ぼくは疼いたままホテルまで我慢しなきゃ……あ!」 文句ばかりでうるさい露伴を抱き上げると、承太郎は彼を自身の股間に跨らせた。亀頭は少しだけ尻の窄まりを割り、露伴は小さく声を上げる。いいんですか、と呟く彼の頭を抱き寄せて貪るようなキスをする。いつ館内の明かりがつくか分からない状況でも構わなかったのか、欲望を優先した露伴の腰が性器に落とされた。 「っあ、あ! 声……出る」 「今更じゃねえか」 「さっきまで、と、ちがうっ、から」 ろくに露伴の尻穴を解していなかったが、すでに何度も挿入を繰り返しているせいか痛がってはいなかった。承太郎が気付かないだけで実は耐えているかもしれない。 熱い粘膜に性器をきつく締め付けられ、息を荒げた承太郎はしがみついてくる露伴の腰を掴むと奥へ向かって何度も突き上げた。 行為を終えても館内は薄暗いままで、明かりがつくこともなく次の映画が始まった。長居するつもりはなかったので身支度を整えた後、露伴と共に映画館を出た。後で聞いた話によると、先ほど入ったポルノ専門の映画館は常に館内は暗いままで、閉館時間まで同じ3本立て作品が繰り返し上映されるらしい。しかもゲイの溜まり場になっている時もあるという。 運が良ければ複数のゲイに囲まれて遊べると言うが、勧められても困る。 「……あんたは全部知っていたのか」 「ぼくは入るの初めてじゃあないですし。あなたには教えないほうが面白いかと思いまして」 また行きましょうね、と目を細めて誘う露伴は心底楽しそうだった。 |