高級薄膜 薄茶色の膜に刻印された海外ブランドのロゴのせいで、いつもは猛々しく濃厚な雄の匂いで露伴を狂わせるその性器が、今はどこか滑稽に見える。正直、想像以上だった。 ひとつ7千円近くのコンドームを、惜しげもなく20個ほどまとめ買いした露伴は、早速承太郎が泊まっているホテルの部屋へ向かった。普段の流れ通りにセックスへ持ち込み、承太郎を口淫で勃起させてからバッグの中から例のコンドームを取り出して見せた。当初から快楽重視のナマ派だった露伴の行動が意外だったのか、承太郎は眉をひそめていた。 「ねえ、すごいですよ承太郎さん……まるでブランドもののペニスじゃあないですか。斬新すぎてたまらないな、スケッチしたい」 「あんたのその発想のほうが斬新だと思うぜ」 「まあ、ぼくのお気に入りのブランドはこういうの出してないので、試せなくて残念ですが。もう……あなたのがでかいせいで、せっかくのロゴが広がり気味になってる。サイズこれしかなかったので、きつかったらすみません」 すみませんと言いながらも口先だけで、露伴はアルファベットが2つ重なったロゴが散りばめられた承太郎の性器の感触を確かめようと、握って扱いたり、裏筋を指先で刺激したりを延々と続ける。そうしている間にも、露伴の愛撫に反応しているのか性器はびくびくと痙攣して存在を主張した。頭上から聞こえる荒い呼吸も含めて、早く挿入させろと訴えている。 「ぼくにも入っているところが見えるようにお願いしますね」 ベッドに仰向けになると、露伴は解れた後ろの穴を指で拡げて挑発する。長い時間お預けを食らっていた承太郎がすぐに襲いかかってきて、強引に露伴の腰を浮かせてリクエスト通りにこちらに見せつけるように挿入を始めた。愛するブランドのものではないロゴをまとった承太郎の性器が、ずぶずぶと沈んでいく。この圧迫感、彼のサイズでないと味わえない。 コンドームの根元の輪の部分まで挿入を終えて、奥深くまで承太郎と繋がった。初めてではないのに、今日はいつもと違う。慣れていない薄膜越しの行為がそうさせるのか。 「ぼくにはグッチというものがありながら…違うブランドに犯されてる! もしかしてこれって浮気ですかね?」 「何言ってんだあんた、わけがわからねえ」 「ふふ、言ってみたかっただけ。気にしなくていいです」 動いて、と呟くと承太郎は腰をがつがつと打ちつけてくる。焦らしもせずに本能のままに犯してくれるのがいい。生々しい熱は遮られているが、張り出した亀頭や竿の部分で腸壁を擦られる感覚はしっかりと伝わって、露伴を昂らせる。 「やっぱり承太郎さんは、ナマのほうがいいですか?」 「ああ、窮屈だ」 「サイズ合ってなさそうだったし、じゃあもったいないんで他の人と使います」 「おれ以外の野郎とセックスするのか」 「あなたは向こうに帰ったら、ぼく以外の相手とセックスするのに?」 からかい半分で露伴が言うと、承太郎は舌打ちして性器を引き抜いた。入口付近を太い亀頭が通り過ぎる瞬間、思わず短い声が出た。そしてコンドームを性器からむしり取り、それを雑に投げ捨てると今度はナマの欲望を再び露伴の穴に沈めてきた。感じる熱が全然違う。すでに浮き上がっていた先走りを思い出し、腰がうずいた。 「ふあっ、これすごい……あつくて」 「さっきと締まりが全然違うな。くだらねえ遊びはもう終わりだ、先生」 「じょう、たろさんも、さっきよりはげしっ……!」 「こっちのほうがずっとイイだろう?」 低い声で、承太郎がねちっこく囁いてくる。心身共にこんなに甘くて薄暗い刺激にはまり込んでしまったら、別の恋ができなくなる気がした。永遠に自分のものにはならない男に、この先何年、何十年も縛られ続けることに自分は耐えられるだろうか。 もがいても、苦しんでも光が見えてこない暗闇のようだ。 やがて奥へと熱い塊が何度も注ぎ込まれて、露伴はぞくぞくと身震いした。まるで排泄を終えたような調子であっさりと承太郎は露伴の中から出て行く。最近は行為の最中に粗末に扱われることにも快感を覚えるようになってきている。 妻子持ちのこの男から大切に愛されるなんて所詮は幻想で、一時的な夢でしかない。こんな扱われ方のほうが現実的で、後腐れなくて好都合だ。 役目を果たさないままそばに投げ捨てられたコンドームを眺めながら、露伴は汗で湿ったベッドの上で目を閉じた。 |