手探りの果て 承太郎の指先が、触れてほしい部分とは違うところをかすめた。しかし今の状況では仕方がない。こちらも承太郎がどんな顔をしているのか、全く見えないのだから。 じれったくて手を伸ばしても承太郎の肌に触れることはできなかった。彼は一体どこにいるのだろう。自分から言い出したこととはいえ、早くも苛立ってきた。 細長く切った布を2枚用意して、片方を承太郎に手渡した。普通のセックスに飽きてきた露伴は、これを使って視界を塞いだ状態で求め合うことを思いついたのだ。夜まで 待って真っ暗な部屋でやれば一緒じゃないのかと言われたが、そんな無粋な意見は受け付けなかった。 「なあ、これのどこが面白いんだ」 「いつもと違う気分になれるのがいいんですよ。それとも、がちがちになっててもう我慢できないんですか?」 「まともに触れてねえのに、なってるわけねえだろ」 「じゃあ早く、ぼくのいいところ見つけてくださいよ」 挑発的に言うと、舌打ちが聞こえた。すると再び承太郎は露伴の身体を手で探り、ようやく股間にたどりついた。今の雰囲気に浸かっているうちに半勃ちになった性器を 軽く握られ、息を飲んだ。腰をかすかに揺らしながらそのまま強く扱いてほしいと願ったが、大きな手はそこを離れてしまった。 「……何で」 「悪いな、なかなか上手く探せなくて」 感じる部分を探り当てたくせに、承太郎はそう言って露伴の内腿を撫でた。そこも悪くはないが、強い刺激には結びつかない。露伴に挑発されたのが面白くなかったのか、 ぎりぎりまで焦らして楽しむつもりなのだろう。 手のひらで太腿を愛撫した後は、指先が奥へと潜り込んで尻の窄まりに触れる。思わせぶりに軽く突かれたり円を描くようにされているうちに、早く入れられたくて息を漏らす。 「そこ、早く」 「簡単に終わっちまったら、面白くねえだろうが。それとも、おれに突っ込まれたくてもう我慢できねえのか?」 先ほど露伴が口にした台詞をなぞられて、何も言えなくなった。承太郎の性器は今どうなっているのか分からないが、セックスのたびに凝視してしまう血管の浮き出た逞しい ものが身体に埋め込まれていく瞬間を思い出してぞくぞくした。拡げられる感覚を早く味わいたい。息を荒げながら獣のように貪ってほしい。ベッドと重い身体の間に挟まれて、 汗まみれの背中にしがみつくのがたまらなく幸せだった。 そう考えているうちに、荒い息遣いと濡れた音が聞こえてきた。ふたつの音が絡み合って露伴の耳に届き、見えなくても色々な想像をしてしまい胸がざわついてくる。 「なに、してるんですか」 「当ててみろよ」 「教えてくださいよ」 「さあ、な」 渋る承太郎に露伴は堪え切れなくなり、自分の指に唾液を絡ませると欲しがっていた窄まりに少しずつ指先を埋めていく。いつまで待っても与えられず、いい加減辛くなって きていた。 他人を前にして、自慰をする羽目になるとは思わなかった。しかし見られていないのをいいことに、快感に流されて大胆になっていった。膝を立てて大きく開いた両足の間で、指を増やしながら感じる部分を強く抉る。 もう片方の手は性器を扱き、中途半端に火をつけられた身体を懸命に満たす。 「ひっ、ああ……んっ」 「何やってるんだ」 「あなたがいつまでも待たせるから、自分でしてるんです」 緩く息を吐き、承太郎の性器の感覚を思い描きながら腸壁を拡げていく。あの太く硬いものには敵わないが、愛撫の続きを大人しく待っているよりはずっとマシだ。 射精の瞬間が近づき、扱く手の動きが早くなる。 「もう、たまらなあ……っ、いきそう、いく……」 「見ててやるから、いけよ」 「え……?」 それを聞いて我に返り、露伴は両目を覆っていた布を外した。すると視界に入ったのは、片手で自身の性器を握りながらこちらを見下ろしている承太郎だった。彼がつけていたはずの 目隠しは、ベッドの端に置かれている。しかも縛っていれば必ず刻まれているはずの皺が全くない。ということは、最初から承太郎は全て見えていたのだ。わざと焦らすような 愛撫をして、見えない振りをして露伴の自慰を眺めていた。 現実が見えていなかったのは、自分だけだった。羞恥と怒りで全身が燃えるように熱くなる。 「騙して、いたんですか」 「ちゃんと付き合っていただろ、あんたの遊びに」 「そういう問題じゃな……あっ!」 腰を掴まれ、充分に拡がった窄まりに承太郎の亀頭が押しつけられる。先端だけが浅く沈んだだけで、貫かれる快感を知っている身体はそれを飲みこもうとして止まらなくなった。 家族を裏切り、年下の男に手を出す最低な人間なのに。こんなにも蝕まれて、元の自分には戻れない。 |