ゲーム





「オイ仗助、ゲームをしないか?」

半ば客間と化したリビングまで招かれてのマトモな第一声がソレだった。
思わず怪訝な顔をしてしまうと家の主はニヤリと紅い唇を持ち上げる。
恐ろしくもあり、同時に妖艶な表情。
ドキリとした。



この日仗助は放課後露伴邸へと足を運んでいた。
何か用事があったと言う訳では無く、かと言って全く無い訳でもない。
しかもその頻度はかなり高い、ほぼ毎日と言って良いほど仗助は家の主と会っていた。
用事は無い、でもある。
詰まり仗助は露伴へ会いに彼の家へと行っていたのだ。
週末なんかはよく泊まったりもする。・・・平日でも時々あるが。
泊まりまでして何をしているのか?と聞くのは藪蛇である。
しかしながら家の主は仗助の訪問に対して大概不機嫌顔で応えるのが常だ。
“何のようだ、スカタン?“と。
恋人に対してそれはちょっと酷ぇ〜んじゃねぇの?
そう思わないでも無いが、基本的に口で勝てない仗助は不服な表情を見せる以外の手だてを講じた事はない。
それに何だと言って家から追い出される事もそうそう無いし、何より偶に見せてくれる優しい表情や寂しくて拗ねた様子が日頃の不満を合わせてもお釣りがくるんじゃねぇかって位大人っぽくてエロいのに可愛い反則顔で、結局何も言えなくなる。
特別に甘い飴な分、頻度は少ないし、尚且つ日頃の鞭捌きの厳しい事この上ないのだ。
が、何故だろうか?
今日の露伴は仗助の訪問に嫌な表情を作る事もなく、手短ではあるが“入れよ。“とまで言って招いた。
しかも何時もの小言も一切無しで、リビングの戸を閉めた途端に不可思議な言葉と妖しい笑み。
仗助が身構えて仕舞うのも仕方無いだろう。
まさか何時ぞやの雪辱を果たさんとしているのだろうか?
チンチロリンでの出来事をなんと今でも根に持っている節があるのだ、不思議ではない。次はイカサマされる側になる、かもしれない。
いや、まぁ良いけどよぉ〜・・・それで機嫌が良くなるなら。
露伴は勝ち負けに酷く拘り、侮られる事を殊更厭う性質だが、仗助は人並みにある程度だ。恋人を立たせる位抵抗はない。
と言うかそれ位で妖しくてエッチで蕩ける様な表情で笑ってくれるなら、正直安いものだ。
・・・しかしながら露伴の事である、仗助が“別に負けても良いや“などと思っている事を知ったら烈火の如く怒るだろう。
それを分かっている仗助であったから、慎重な姿勢にならざるを得なかった。

「どうしたんだよ?僕は聞いてんだぜ、ゲームをする気はあるのかってな。」

露伴は仗助が自身の案に対して怪訝な表情をしているのだと解釈しているのかも知れない。
本当は露伴にゲームへの真剣さが欠けている事を知られない為に慎重になっているだけなのだが。
ムッとした表情で器用に眉を上げる彼の様は多面性と言うのか、子供っぽくて可愛いくせに大人っぽくて色っぽい。
言ってる事は無茶苦茶かも知れないが本当にそう見えるのだから仗助には仕方が無かった。

「あるにはあるけどよぉ〜、まず何のゲームするのかも聞いてねぇし。」

露伴の妖艶な表情に思わず照れてしまい、言い難そうに視線を傾ける。
仗助の様子に黒紫色の瞳は暫し細まったが、露伴は追及する事無く話を続けた。
ゲームに乗り気が無いのか、そうで無いのかの判断が付かなかったのかもしれない。

「ポーカーだ。アンティ(簡単に言うと参加費)は取らないし、基本ルールは同じだ。親は僕がなってやる、まあ詳細については遣りながら説明してやるぜ。
一応言って置いてやるが、別に金は要らない。僕はお前からはした金貰っても何ら嬉しい事は無いんだからな。」

「そうッスね、」

正直な話、露伴の表情に照れたのも確かだが、同時にゲームに対する執着というものを仗助が持っていない事も確かだった。
露伴が此方のお金を欲しがらない位金持ちだという事も知ってる。
強いて言うならそんなはした金持った学生相手に金を巻き上げて困らせるのは好き、なのだが。
ハッキリ言ってそっちの方が立ち悪い。
しかし今回の露伴にそういう気持ちは無いらしい、と言うかそんな巻き上げる為のレートだと俺がゲームしないと踏んだんだろう。
・・・やっぱりあの時のチンチロリン、初めからバレてたんだな・・俺がイカサマする積もりなの。
今回は安全と言えば安全だ、お金を掛けないって事はどうせチップを手渡されてそれで勝負するだけだってんだから。
そしてまた同時に失うモノの無い勝負に必死さが無いのも事実だ。
まあ、適当に露伴を勝たせて機嫌良くなりゃそれで良いか・・・。
仗助は既に内心勝負を放棄する積もりで相槌を打っていた。
その様子を黒紫色の瞳が具に観察いしているとも知らず。
露伴は仗助のある意味挑発的なその態度に片眉と口角を同時に上げた。

「その代わりにだ・・・このポーカーでは自分の身に付けているものをチップとして賭ける。」

「へぇ〜・・・っ!?エエッ!?」

”ハイッ!?”バッと改めて露伴に視線を定める緑翠色の瞳。
その中に驚愕の色合いが広がっているのを確認し、紅い唇は一層愉快そうに弧を描いた。

「良い手が回ったらベット(賭け金)を釣り上げる事も可能だ、青天井では無いがな。
負けた側は即座に脱いで勝者にチップを手渡す。しかし手に入れた相手の身につけていたものを次回以降の賭けに回す事は出来ない。
どちらかの賭けるものが無くなった時点で終了、最終的な敗者は勝者の言う事を聞かなくてはいけない・・・どうだ?ヤル気になったか?」

”お前が勝ったらご奉仕でも何でもしてやるぜ・・・”
挑発する様に・・と言うか挑発する為に刺激的な言葉を紡いだ唇をぺろりと舐める露伴。
紅い唇が唾液で滑りのある光沢を帯びる・・・粘性のテラテラとした鈍い輝きが酷く、エロティックだ。
そんな口でご奉仕とか、言うな・・よなっ、
卑猥な表情で圧倒的に誘惑する恋人に仗助の方が頬を紅潮させてしまいそうだった。しかし、侮られるのは少し悔しい。
だから敢えて仗助は淫靡な空気を濃密にする露伴に対し、不遜とも言える表情を取った。

「東方仗助、遣らせて頂きます!」

「フン、さっきの不抜けた顔が嘘みたいだぜ?安心しろよ、僕はイカサマはしないからな、お前みたいに・・・なぁ?」

そう言ってテーブルの表面を爪でなぞる指のやらしい事、この上ない。
クスクス・・・
仗助の瞳が欲に濡れているのが分かったのだろうか、露伴は声を上げて笑う。
意地悪く聞く男の表情は、男だと分かるくせに今まで出会ったどの人間よりも色気がある。

「さあ、始めるぜ?座れよ仗助くん・・・」

露伴が如何いう積もりでこんなゲームを始めたのか、はっきりとは分からない。
しかし彼の中にチンチロリンの仕返しがしたい気持ちがある事だけは仗助にも分かった。




ポーカーでは基本、ディーラー(親)対その他(子)で賭けをするのだが、今回の場合は二人で勝負なので、親と言っても唯”カードを相手に配る側”と言うだけの役に留まる。
難しいルールも一切省くとの事だ。カードの役も変わらない。
で、チップの話になるが初めに絶対一つはチップを賭けなければならない。
良い手が手元にあって値段を釣り上げる事が出来る一方、最終的なカードチェンジをしてもブタみたいな手しか作れなかった場合はゲームを降りても良い。又、相手が余程強い手を持っていて負けると確信した時も。
その場合は初めに賭けたチップを相手に手渡す事になる。
詰まり自分が何とか勝つ為には相手の心理状態をある程度読んでおかないといけない。
相手がどの程度の役を作っているのか、相手の表情や様子から探らないといけないのだ。
チラリと仗助は露伴の様子を窺う。
彼は日頃余りお目に掛かれない様な艶のある嬉しそうな笑みで仗助の視線を受け止めた。
成程、露伴の好きそうなゲームだ。
心理戦好きだもんな、コイツ・・・目キラキラしてるよ。つか、ギラギラ?
凄ぇ〜色っぺぇ顔・・・嬉しいけどよぉ、絶対カジノとかには連れて行きたくねぇよな。
このエロい顔を他人に見せるとか絶対ぇヤダ!俺がもし勝ったら”俺以外との賭け事禁止”ってしようかな・・あ、いや、でもやっぱご奉仕は捨てがたいよなぁ・・・

「で、如何する?何を賭けるんだ?」

露伴は何時の間にか用意していたトランプを切りながら仗助のチップを確認する。
シャッシャッ
目で追うのがやっとなぐらいの速さで切る長くて細い手の動きは意外な事に滑らかにさえ見える。
偶に角度を変える為に淡く光る爪の光が奇妙に扇情的に映った。
やらしくてエロい、白い手、ホント何度見てんだよと言われそうだがそれでもドキドキしてしまう。

「俺は・・、じゃあ・・・・・・」

適当なチップを探す。
探さなくとも学ランや学生ズボンは視界に入っていたが、初めての勝負だ、何と無く失ってもダメージの少ないものを選びたい。
特に視界的にダメージを受け難いものを。
しかし色々考えれば考えるほど思考は妙に焦ってしまう。
逃げ腰の癖に勝つ気でいる仗助の様子に露伴は痺れを切らした。

「こんな序盤で迷うなよな、・・もう良い、勝者が後で要求する事にするぜ。」

「・・・了解ッス。」

露伴が強い語調で言うと仗助は腹を括って了承した。
どうせならこういった時は思い切った方が上手く行くし、心の平静を保ちやすい。
仗助はイカサマやトリックしかける筋は悪くないが、如何せんプレッシャーに弱いところがある事を知っているのだ。
ここまで言うとまるで露伴が仗助の為を思って誘導したようだが、勿論岸辺露伴の事がそんな事は無い。
いや、深く言えば彼にも仗助を思う気持ちはあったろう。
しかし今露伴の目下は如何に仗助相手でゲームを盛り上げるかが問題であった。
その為の気遣いなら彼だって厭いはしないのである。
”じゃあ始めるぜ。”長く白い手は華麗に仗助の手元までテーブル伝いにカードを流した。


初戦は仗助がルールを呑み込むと言う意味もあり、露伴がレートを釣り上げるという事も、フォルド(ゲームから降りる事)を揺さぶる事も無かったので心理戦は無かった。
純粋に配られるカードの良さ、運の強さと言った所でゲームをしていた。
勝負は仗助が辛うじてワンペア、一方の露伴はスリーカードで後者が勝利を収める。

「ククッ・・・僕の勝ちだな。」

露伴は表に広げた互いのトランプをもう一度確認し、仗助のまだ緊張が抜け切れていない表情に愉快そうに目を細めた。
そんな彼の様子を盗み見る仗助。
心底嬉しそうに、意地悪そうに、妖しく笑う露伴。
紅い唇から漏れる笑い声は卑猥な色を帯びている様に感じてならない。
エロさ全開の顔で顎に手を添えながら、此方の何処を脱がそうか思案する。
勝負の勝ち負けを気にする余裕を与えてもくれない、この目の前の妖魔の様な男は・・・。
視姦・・・されてるみてぇ、
見詰められている所がゾクゾクと粟立つ。
顔から学ラン、学生ズボン、靴まで一通り見られた。
同時に皮膚の粟立ちも下肢へと移動していく。
息苦しい、仗助は襟元のホックを外した。

「フフ、もう自分から脱いでどうすんだよ?」

露伴は仗助の視線に性的興奮を感じている事を分かった上で意地悪く片眉を上げてみせた。
その表情は一層妖艶だ。

「どうせっ、・・・学ランかズボンって言うんじゃないんッスか?」

仗助は負けじと反論しようとするが如何せん語調が弱い。
黒紫色の瞳は若い肢体が興奮する様を満足気に見詰める。
ソレを囲う目元は性的興奮か、紅く熟れ始めていた。

「フン、・・・どうだろうな?」

鼻を鳴らし、小馬鹿にした風に答える整った顔。
しかし目元が紅くなっているだけでなく、既に瞳の濡れ具合も前戯時と同じ位で・・・コクリ、仗助は忍びながら生唾を飲み込んだ。
アンタも興奮してんじゃねぇかよ・・・。
仗助は悪態を付くしかなかった。

「それじゃあ脱いで貰うぜ、僕が要求するのはお前の靴だ。」

長くて細い、何処か卑猥な想像をさせる皮膚の指が、ツイと仗助の足下を指差す。
意外な答えだ。
もっと素肌を晒させる箇所にするかと思っていたのに。
それとも焦らされているのだろうか?
若しくは何時もの天の邪鬼か・・・いや、だったらもうちっと不機嫌な顔になる筈だしな・・・兎に角正直な話、拍子抜けだ。
しかし滑らかな指の動きは、愛撫する時のものに酷似していて、仗助の背筋は甘く疼いた。

「靴は一対で一つだからな、両方脱いで貰う。・・・どうした?早く脱げよ。」

露伴は仗助の困惑気味な表情と紅潮した頬の意味が分かっているのか?
更に妖しい表情で妖魔の様な笑みを浮かべる。
クスリと笑う口元は今にも蜜が滴り落ちそうな程強い色だ。
今すぐ吸い付いてやりてぇ・・・
仗助は自身の息が荒くなるのを自覚しながら粗雑に両足共脱ぎ捨てた。
”言われた通り脱いでやったぜっ?”挑む様に睨むと、切れられるどころか眩暈を催しそうな位卑猥に”良い顔してるじゃないか。”と紅い唇はハッキリ口角を上げる。
ぺロ、またソレよりも濃い色の舌をチラつかせた、うねる卑猥な肉。
・・・・エロ・・過ぎるだろ、アンタ・・・
仗助が堪らずもう一度首元を緩めると、今度はハッキリとした笑い声まで上げられる。
クックッ・・・小さく体が揺れる様さえ妖艶だ。
露伴は仗助の様子に愉悦を抱いている事を隠そうともせず、切り直したトランプをまた相手の元、そして自分の元へと滑らせる。
熱に熟れる目元の色っぽさ、黒紫色の瞳の塗れ具合、確認する此方の方がドキリとしてしまう。

「あのさぁ〜・・露伴、一つ提案があるんッスけど、」

仗助は手配されたトランプを確認する振りをして黒紫色の瞳から視線を逸らした。
あんまり見ているとゲーム所では無くなりそうだから。
それに今から話す此方の要求をあの濡れた瞳を見続けて言える理性が無かった。
露伴は相手の要求に片眉を器用に上げて聞いていた、しかしこれといった驚きは無い様だった。

「粗方予想は付く、今回も脱がせる場所を勝者が指示したいってんだろ?」

「えっ、あ、ハイ・・・そうッス、」

言おうとした事を先に言われてしまった。
この場合余り良い結果は望めない、こんな時素直に要求を飲む男では無いから。
ああ・・・結構イイ手だったんだけどな、これ。
仗助は自分の手札を見てちょっとしょんぼりしてしまった、どうせ買ってもサスペンダーか・・と。
が、事と言うのは時に考えている以上に上手く進む事もある。

「ククッ・・・良いぜ。」

「・・・・マジっ!?」

予想外にあっさりと承諾が取れてしまった事に仗助は驚きを隠せなかった。
・・・え、もしかして、露伴も俺を早く脱がしたい・・とか?
ドキドキッ、胸の高鳴りが亢進する。
もしかして同じ気持ちだったら、凄ぇヤバイかも・・・

「僕が一度言った事覆すかよ、何ならこれからずっとでも良いんだぜ?」

露伴の言葉は挑発的な言葉に変わりなかった。
しかしその声色は何処か甘やかなものが含まれていて仗助はその心拍を余計に亢進させる他無かった。
仗助はコクリと頷いて、手持ちのカードから二枚を抜き取り、露伴に差し出す。
親である露伴はカードの束上から二枚を取り、テーブルに滑らせた。
そして露伴自身も一枚カードを捨て、新たに一枚を束から取っていく。
互いにチップを倍にする事は無い。
仗助は兎に角様子見の為に、露伴に至っても様子見の為だろう。
相手がフォルドをする気も無い事を確認し、互いに手札を表に晒した。
露伴がストレート(5枚のカードの数字が連続して揃っている事)で仗助がフラッシュ(5枚のカードのマークがすべて一緒)だった。
役の優劣から二戦目の勝者はフラッシュを決めた仗助だ。

「俺の勝ちッスね!!」

思わずガッツポーズまで取ってしまった。
今更だが自分は本気の本気で勝つ気でいたみたいだ。何処のどいつだ、恋人を立たせるとか言ってたのは。
自分の心に芽生えつつある罪悪感を突っ込む事で乗り切ろうとする。

「・・・フンッ、まあ良い、負けは負けだ。」

勝っている筈であるのに齷齪する仗助に対し、負けた方は不機嫌だが比べて冷静だった。
爪でピンとトランプを弾く様は矢張り不機嫌ではあるが。

「仗助、僕の何処を脱がせたい?」

露伴はテーブルに前のめりで肘を付き、黒紫色の瞳で緑翠色の瞳を覗き込んだ。
不貞腐れているのだろう・・・悪いと感じつつも仗助は恋人の様子に心臓が高鳴るのを感じる。
その上目遣いはちょっと反則だ、と思いながら。

「・・・じゃあ、上の服で、お願いしたい・・ッス。」

頭を掻きながらもそもそと伝える。
助平心丸出しだろうな、ほんのりと羞恥が込み上げ仗助の方が視線を伏せてしまった。
普通逆だろうと思うのだが、この二人の関係や性格上必然と言えば必然だった。
露伴は仗助を見詰めながら座っていた椅子から立ち上がった。
カチャ、ブチンッ・・・サスペンダーの留め具を外す音。
そんな音、まだ服を脱いでもいない。それは仗助にも分かっている。
緑翠色の瞳はこれからストリップを始める世にも色っぽい恋人を見た。
露伴は男の欲に濡れた瞳が此方を見ている事を確認し、薄っすらと微笑む。
普段なら頭から脱ぐのが一番手っ取り早く簡単なのだが露伴は敢えてそうしようとはしない。
彼は肩に手を滑り込ませ、ゆっくりと、緩慢な動きで鎖骨から肩にかけてを露わにして行く・・・
元々鎖骨がかなり見える口の広い服なので肩から脱ぐ事も可能は可能だが、それでも頭から脱ぐ事に比べれば各段に時間は掛かる。
肩から滑り降りる衣類、肩から胴と腕の割れ目が微かに見え、適度な筋肉のある柔らかそうな二の腕がほんの少し見えた所で止まってしまった。
じくり、見ている側の胸は焦燥感に焦げた。
それを見計らう様に細く白い指がツツーと自身の肩と衣類の間に滑って行く。
指の動きがいやらしい。
露わにされた肩と関節を繋げた腕がこの時やっと動き出した。
滑らかな動きで腕に絡み付く服を解いて行った・・・その手慣れた、器用な手付きに仗助は微かに胸を掻き乱される。
どれだけ慣れてんだよ、アンタ・・・ッ、

スルリと腕が抜ける、片方の腕は完全に大気に晒される形となった。
ブチッ、露伴はもう一方の留め具も外していく。
だらりと力無く腕に垂れ下がるサスペンダー、後に残るのは後部の留め具だけだ。
服は半端にその形を留め、特に腕の抜けた方は動きによっては偶に胸の突起が見えたりする・・。
桜色の小さな突起がちらりと、恥じ入る様に忍びながら現れる様はその可愛らしい色に合わず淫猥過ぎた。
露伴は仗助にじっくり忍ぶ様を確認させ、そしてゆっくりと作業に取り掛かる。
先程と同じ様にいやらしい指を滑らかな肌の肩と服の間に滑り込ませて、腕を露わにして行く。
同時に体からも覆うものが取り除かれる様はいっそ背徳的でさえあった。
見てはいけない様な、でも目を離せない様な・・・・・
スルリ、もう一方の腕も完全に大気に晒され、彼の胸も露わになる。
桜色の突起が隠れる事はもう無い。白磁の肌に淡い色の乳輪が何とも言えず、卑猥だ。
バサッ・・・服が重力に従って、床に吸い込まれていった。
見た目の痩身よりも実際は随分良い体をしている、寧ろ筋肉質なぐらい。
それでも見ていてゾクリと来るのは、滑らかで何処か人に触られる事を期待している様な肌理の細かい肌と、驚くほど細くて白くて・・猫の様にしなやかな動きをする腹と腰のせいだ。
一言で言っちまうと綺麗でエロい体だと思う。
艶めかしいその様子に目が離せない仗助を意識しているのかそれともしていないのか、露伴の手は未だ止まらなかった。

カチャ、ブチッ
彼は一度外したサスペンダーをまた付け始めたのだ。
サスペンダーはダークブラウンで白い露伴の肌には良く映える。
後角度によっては偶に乳首が見え隠れなんてしたりする・・・擦れたりしねぇのかな?
エッチな想像が男子高校生の頭を過った。
・・・・何と無く理由は分かる、未だ取られていないものだ、見に付けるって事で主張したいのかもしれない。
何より今日のズボンはサスペンダー付けてても若干パンツが見えてるぐらいだ、付けてないと脱げちまう事もあると思う。
・・・・うん、まあ、考え様は色々出来るぜ・・、
でも、その、なんての?
上半身裸でサスペンダーってのは・・何か、想像以上に・・・・
目の前に座る、上半身裸のサスペンダー姿の露伴。
白い肌に、桜色の乳首、紅い唇。そして黒っぽいサスペンダー。
口元に笑みが灯されている様な気がするのは気のせいだろうか?
態と、じゃ・・・ねぇよな・・・・?
仗助は自身の頬が熱を帯びている事を自覚せざるを得なかった。



その後の勝負の軍牌は完全に露伴にあった。
仗助が平静を保てないで露伴を直視するのが困難だった事も勿論起因していたが、何より最悪なのはそんな状態にも拘らず相手の露伴が全く手を抜かずにブラフを平気で吹っ掛ける事だ。
今や仗助はパンツとピアスが残るのみとなっている。
対する露伴は未だに裸サスペンダー姿だ、詰まり上の服を脱がされてから一回も負けていないという事。
それでもエロいからこのままで満足・・・と言う訳にはいかない。
何故ならもし仗助が負けた場合、仗助は露伴の言う事を聞かなくてはいけない、あの岸辺露伴の、だ。
どんなとんでもない要求をされるのか分かったものではない。
しかも、だ、露伴の事である、恐らく仗助が大きくショックを受けるものか自分が本気で楽しめるもののどちらかを要求してくるだろう。
後者は良い、未だマシだ。でも前者が頂けない。
あんなエロいストリップショーを行われてこっちの息子はカチカチだ。
それを見てない露伴じゃないだろう、だからこそ困る。
滅茶苦茶意地の悪い、”禁止令”の類を要求するんじゃないだろうかと思うと、居ても立ってもいられない。
俺の今の手札はもう一手でストレートという手だ・・・これなら行けるんじゃないか?
クスクス・・・仗助の様子に笑う紅い唇。

「せめて靴ぐらい脱がせろよ。ベッド入るのに邪魔で仕様が無い、そうは思わないか?なぁ仗助?」

”まあ、お前が勝てたら・・だがな。”
愉快そうに性交渉時みたいな上気した表情で、今にも熟れ落ちそうな唇を舐める。
目元の紅さも黒紫色の瞳の妖しい輝きを彩る・・・頬まで薄っすらと紅潮してる様がまた恨めしい。
何だよ、滅茶苦茶エッチしたいみたいな顔しやがって・・・っ!
クソ・・ッ、もし逆転したら絶対そのやらしい唇で口一杯吸い付いて貰うからなぁ・・・見てろよっ、
絶対ぇ泣かしてやる・・・!




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