ジョセフ/森津とおる様(http://tegaki.pipa.jp/393974/)  マライア/鳳梨様(哂饗宴




絵からイメージしたSSっぽいもの(※不健全な表現があります)
書いた人/ハシノ








あの女が再び目の前に現れた時、夢か幻に違いないと思った。
1本や2本、骨が折れただけじゃ済まなかっただろう。あれから一体何日が経った? 娘の命がかかったこの戦いの中で、日付の感覚だけは狂っていなかったはずだ。 いくらここまで歳を取っていても。
開いている窓の外から、町のざわめきが聞こえてくる。人々の声、自転車が走っていく音。古びた宿屋の一室でそれらを聞き流しながら、ジョセフはベッドの上で 女の褐色の肌に唇や舌を這わせていた。薄い服越しに摘まんだ乳首は、すでに硬くなっている。
自分はここで何をしているんだ、という考えは、女の甘い喘ぎ声で乱れた。
黒いストッキングに包まれた脚が動いて、股間を膝で何度か擦られる。勃ち上がりかけていたそこを巧みに刺激されて、堪え切れずに呻くと女は小さく笑う。

「何、興奮してんのさ……ジョースター」
「お前も人のことは言えんだろうが、なあ?」

意地悪く耳元で名前を囁いてやろうとしたが、そういえばこの女の名前を知らない。女のほうは出会った時からすでにジョセフの名前を知っていたのに。 しかしここで聞くのも今更のような気がしたので、あえて興味のない振りをした。
その日に会ったばかりでも、中身を知らなくても、欲情さえすれば男は女を抱ける。前に散々な目に遭わされたこの女を、決して愛しているわけではない。 しかし戦っている最中にも結局意識していたその身体には、かなりそそられている。
弾力のある豊かな乳房と、そしてこの女と言えば脚だ。太腿から足首までのラインが、文句の付けどころがないほど完璧なのだ。
女の脚に踏まれて興奮するという性癖を持つ男の気持ちが、今なら理解できる。
ジョセフは女の脚の間に身体を割り込ませると、太腿に触れた。手袋を着けた義手を操り、膝から付け根までをじっくりと愛撫していく。逆側の手なら感触まで味わえたの だが、こればかりは仕方がない。

「あたしの脚、そんなに好きなの?」
「惚れぼれするくらい、きれいな脚だからな。性格は下品でえげつないが」
「一言多いわよ」

女は機嫌を損ねた様子も見せず、指先をジョセフの唇に軽く押し当てる。これからやろうとしている行為の予想はついているだろうに、大した余裕だ。年齢は20代半ば くらいに見えるが、どれほどの経験を積んできたのかを想像すると恐ろしくなる。気を抜けば翻弄されてしまいそうだ。

「わしの恋人になってもいい、と言っていたな」
「さあ、どうだったかしら」
「この口が言ったくせに、今になってとぼける気か」

悪い女だ、と呟いてからジョセフは女の唇を奪い、息を乱しながら貪った。ためらいもせずに応えてくる舌は、煙草の味がする。肉厚の紅い唇が、滴る唾液で濡れていく。
細い腕が首に絡みついてきて、互いの距離が更に縮まった。女の乳房はジョセフの胸板に押しつぶされて、形を変える。

「あんた、女に一途なタイプじゃないでしょう」
「……どうして、そう言い切れる?」
「そういう匂いがするもの、悪い男のね」
「性格の悪さならお前には敵わんよ」
「いつかきっと、痛い目に遭うわよ。その時にはあたしの言葉なんか忘れてるでしょうけど」

身に覚えが全くないとは言えないのが、辛いところだった。実はまだ、家族は知られていない後ろめたさを抱えている。孫に会うために訪れた日本で、ひとりの女と深い関係になった。 しかも相手は現役の学生だった。あの時のことは忘れられるわけがない。
女の長い指がジョセフのズボンのジッパーを下ろし、すっかり硬く張り詰めたものを下着越しに弄ぶ。
こうして立場も忘れて甘い誘惑に身を委ねようとしている自分を、いつか裁く者が現れるだろう。
例えそれが、今は存在すら知らない誰かだとしても。




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