こんな体位は好きじゃないんです、と文句を言っていた露伴も、承太郎の下で足を開いて挿入される瞬間は言葉を失くした。
 別にこちらもおかしな体位を望んだわけではない、数ある中でも正常位というごくノーマルなものだ。今までも何度かセックスをしてきたが、騎乗位や後背位ばかりでそろそろ 飽きてきた。しかもそれらは全て露伴からのリクエストで、一体何を基準に選んだのかは知らない。
「前から聞こうと思っていたんだが、これの何が嫌なんだ」
「だって、面白くないでしょう。刺激もないし」
 性器を半分ほど埋めたところで問うと、露伴は冷めた調子で答えた。確かに他と比べると面白みには欠けるかもしれないが、この体位にそこまで不満を持つ人間も珍しい。
 間違った使い方をしている器官の中は狭く、ぎちぎちと締め付けてくる。
 成人して間もない、若い露伴の身体は全体的に肉付きが薄い。もう少し体重を増やしてもいいのでは ないかと、最中にも関わらず冷静に考えてしまった。今、頭の中を読まれたら大きなお世話だと怒られそうだが。
 根元まで挿入した後、腰を引いてから一突きすると露伴は喉を逸らして声を上げた。面白くないと言いながらも、しっかり感じている。勃起している性器を握って指先で尿道を抉り、更に追い打ちをかけた。
「あ、っう……」
「面白くないなら、やっぱりやめるか」
「ここまでしておいて、何言ってるんですか」
 露伴の性器が分かりやすく反応を示す。握った手の中で猛々しく脈打ち、とろとろと先走りが溢れてきた。何かを堪えるように目を固く閉じている表情にそそられる。
「顔つきが変わったぞ、感じてんのか」
「もう、いいだろ……早く終わらせてほしい。こんな」
 震える声で要求してくる露伴に覆い被さり、その唇を塞ぐ。身体を重ねながら舌を絡ませると、不慣れな動きで応えてくる。腰は動かさず、性器を中に収めたままで深いキスを続けた。 まるで恋人同士のような甘い雰囲気に、自分の立場を忘れて密かに浸る。
 ためらいがちに承太郎の背中に伸びてきた露伴の両手は、途中で止まると再びシーツに落ちる。面白くないだの早く終わりたいだのと言った手前、自分から求めるのは気まずいのかもしれない。
「おれはこっちのほうが好きだ、あんたの顔もよく見えるしな」
「あなたとは、趣味が合わないみたいですね」
「身体の相性は、悪くないようだが」
「それは……」
 かすれた声で呟く露伴の両足を抱え上げ、貪るように腰を激しく打ちつける。きつい腸壁の中を往復しているうち、良い部分に触れたのか露伴が目を潤ませながら何度も喘ぐ。
 達する直前に中から性器を抜いた。そんな承太郎の様子を瞬きをして見ている露伴の顔に亀頭を寄せ、何度か扱きながら精を吐き出す。頬や口元が、粘ついた白濁で汚れる。
 乱れた前髪の隙間から額にくちづけると、まだ濡れた目で睨まれた。
「刺激が欲しかったんだろう?」
「……最悪」
 精液を拭った指に吸い付く露伴は不機嫌そうだが、律儀に飲み込んだらしく喉が動いた。
 正常位は刺激がないと言われたが、こちらにとっては高慢でひねくれた露伴を見下ろしながら苛めることができる、最高に燃える体位だと思う。




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2011/11/16