heavenly





承太郎と口論になった。
きっかけは本当に小さくてくだらないことなので省略するが、この時の自分は怒りを抑えられなかった。こちらから折れるのも面白くないので、行き着くところまで行って しまうしかない。
よく考えなくてもこの男に腕力で勝てるとは思えず、ねじ伏せてやるための方法はひとつだけだ。
露伴は自らのスタンドであるヘブンズドアーを発動させた。最後の手段に出てきた露伴に、承太郎は眉をひそめる。卑怯な奴だと思われているだろうか。

「ヘブンズドアー、そいつを本に……」

いつもの調子で言い放ったが、最後まで口に出すことはできなかった。ヘブンズドアーは露伴の元を勝手に離れ、承太郎に近付くとその頬に嬉しそうにキスをした。 あまりにも衝撃的すぎる展開に露伴は言葉を失い、凍りつく。先ほどまで口論をしていた相手なのに、何故そんなことになるのか分からない。
最初は驚いていた承太郎だが、全てを悟ったかのように目を細めてにやりと笑った。

「本体より、こいつのほうが素直だな」

お返しとばかりに、今度は承太郎がヘブンズドアーに触れて何のためらいもなく唇を奪った。露伴自身にもその感覚がしっかりと伝わってきて、思わず唇を指先で押さえる。

「な、何やってるんですか! 僕のスタンドにおかしなことをするな変態!」
「あんたに変態呼ばわりされるとはな……やれやれだぜ」

わざとらしくため息をつく承太郎の首に、ヘブンズドアーは小さな手を伸ばしてしがみつく。
露伴がどれほど刺々しい言葉をぶつけても、スタンドがこの様子では格好がつかない。
スタンドの有り得ない暴走かと思ったが、どうやら本心がそのままスタンドの行動に現れているようで、ここまで堂々とやられてしまっては今更ごまかせない。
密かに唇を噛む露伴に承太郎は目線を動かすと、

「誰かとは違って、こいつは可愛げがあるな。寂しいなら俺のスタンドを貸してやるぜ」
「本気で言ってるんですか、それ……」

とんでもないことを言われ、露伴は動揺を隠せなかった。あのスタープラチナに組み伏せられて、色々どうにかされている自分を想像してしまう。もし癖になってしまったら、 本体のほうは責任を取ってくれるのだろうか。いや、多分期待できない。
行為自体に興味はあるが、刺激が強すぎて1度でも味わったら戻れない気がする。危険だ。

「顔が赤いぞ、想像したのか」
「してな……いっ!」

何故ここまで恥ずかしい目に遭わなければならないのだろう。最初にしていた口論のことなど、綺麗さっぱり吹き飛ぶほど翻弄されている。本当に小さくてくだらないきっかけ だったので、もう忘れてしまった。それくらい、実はどうでもいいことだったのかもしれない。
承太郎はまるで露伴に見せつけるように、片手でヘブンズドアーの背中を抱き寄せる。
間接的に承太郎の温もりを感じながらも、実際に抱かれているのはこの身体ではない。
先ほどまではためらっていたが、こうなったら本体の言葉に甘えてスタープラチナと濃密に絡んでやろうかと本気で考えた。調子に乗ったことを悔やむほど、嫉妬させたい。




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2011/5/11