恐怖体験





爆発音と共に、右足のふくらはぎの肉が抉れた。
感じたことのない、激しく燃えるような痛みに呼吸が乱れ、じわりと汗が浮かぶ。こんな時でも、狙われたのが腕や手じゃなくて良かったと思った。そう、漫画が描けなくなるなら生きている意味はない。
目の前に居る男が薄く笑いながら、また1歩僕に近付く。
数分前に町ですれ違ったこの男が落とした紙袋を拾って渡したのが、そもそも間違いだった。変な親切心なんか起こさなきゃ良かったのだ。紙袋の中に入っていたのは、切り落とされた人間の手首。真っ赤に塗られた爪の色が脳裏に焼き付いている。ばらばらだった思考が僕の中で繋がり、ひとつの形になった。
続く痛みで、立っているのがやっとだった。他人の目が届かないこの薄暗い路地裏で、僕は男を睨みつける。
殺したエステティシャンの能力で顔を変えて逃げたと聞いていたが、まさかこいつが。

「威勢がいいな……その目、ぞくぞくするよ」
「……うるさい」
「アレを見られたからには、君を始末させてもらう」




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2011/6/14