hidden まるで遠い昔、同じ布団で眠っていた時のように、ジョセフはおやすみの挨拶と共に承太郎の額や頬に、軽い調子で唇を押し当てる。 あまりにも久し振りすぎるので反応が怖かったが、お互い先ほどまで酒場で何杯か飲んできたので、自分は明らかに気が緩んでいた。 一方の承太郎は嫌がる様子も見せずに、ベッドに腰掛けたままそれを受け入れている。鋭く睨んできてもおかしくないその目は、酔っているせいか虚ろな感じでジョセフの 行為を黙って見つめていた。 何故か胸がざわつく。普段とは雰囲気が違いすぎる、隙だらけだ。小さく息をついた、その唇に視線を動かす。さすがにここはまずいな、と酔った頭でも思った。 いくらなんでも、承太郎のほうが許さないだろう。 「どうしたじじい、急に固まっちまって」 「え、いや別に……何でもないぞ」 「したいなら、すればいいじゃねえか。俺は構わねえ」 ジョセフの心を読んでいたかのように、とんでもないことを言い出した承太郎に動揺を隠しきれない。実は一瞬だけ、道を踏み外しそうになったが。 まだ高校生の孫に、手を出してはいけない相手に、いかがわしい気持ちになってしまった自分が情けない。今日に限ってこんなことになったのは、やはり酔っているせいも あるのだろう。取り返しがつかなくなる前に、軌道修正をするべきだ。 「俺を愛してるってのは、本気じゃなかったのか」 承太郎から身を離そうとした途端、そう言われた。すっかり険しくなった表情でこちらを睨んでいる。 確かに愛していると言った、しかしそれは。 「お前は、わしの大切な孫だ」 「そんな綺麗事なんか、いらねえ」 「本当のことを言っているだけだろう」 「また逃げんのか」 「じゃあお前は、わしにどうしてほしいんだ!? その口で言ってみなさい、なあ承太郎」 責められるたびに、心の内側の何かが崩れていった。いつもは隠れている、言葉にはできないものが。承太郎の肩を掴む手に、更に力を込める。 「じじいのものになりてえ、それだけだ」 数秒遅れてその言葉の意味をようやく理解したジョセフは、頭がくらくらしてきた。これは酒のせいではない。皮肉にも、夢であってほしいと思えば思うほど、意識がはっきりしてきて これが現実だと知る。 一体どこで間違ったのか、どこから歪み始めたのか。いくら考えても分からない、分かるはずもない。 ジョセフは答えを見つけられないまま、承太郎に顔を近付けて唇を重ねた。 ふたりきりの、部屋の空気が変わった気がする。舌が触れ合い、小さく音が聞こえた。 いやらしく執拗に舌を動かしながら、承太郎をベッドに押し倒す。シーツの上で掴んだその手首には、覚えのある懐かしい腕時計がしっかりとはめられていた。 「その腕時計、まだ使っていたんじゃな」 「これ以外は使ったことがねえ」 「そうか……」 承太郎が中学生になる頃、ジョセフは今まで使っていた腕時計を祝いの品として与えた。 新しいものを買ってやることもできたが、まだ幼く素直な承太郎を独占できたような気がして、ちょっとした優越感を覚えた。当時は純粋に可愛い孫だとしか見ておらず、 これから年を重ねていけば承太郎は自分好みの腕時計を買って使うだろうと、そう思っていた。 しかし今もジョセフの腕時計を使い続けていることを知り、嬉しさで心の底から震えた。これから自分の孫を抱くという、爛れた現実を前にして。 充分に指で解した部分に、性器の先端を押し当てると承太郎は少しだけ身を硬くした。やはり緊張しているのだろうか、普段は落ち着いているくせに。 そんな孫が可愛く思えて、気持ち良くしてやりたいという想いや、我を忘れるほど乱してやりたいという欲望が、ジョセフの中で複雑に混じり合う。 「承太郎、お前は可哀想な奴だな。これから先もっと好きな相手に出会って、全てを捧げたいと思っても手遅れなんだぞ。このままだと、な」 冷静な振りをして語りかけている最中も、早く承太郎を思い通りにしたくて耐えられなかった。一気に腰を進めて奥まで犯したら、どんな表情で、どんな声を上げるのか。 考えるだけで興奮する。 「昨日や今日から考えていたことじゃねえ、ずっと昔からだ。これ以上、待たせるな」 すでに先走りで濡れたジョセフの先端を飲みこもうとするように、承太郎の後ろの穴が淫らにひくついた。その瞬間、最後に自分を支えていたわずかな理性が、あっけなく 消え失せた。ためらいも何もかも、全て。 獣のように荒い息を吐き出しながら、ジョセフは性器を埋めていった。苦しそうな表情を浮かべる承太郎が、ずっとこちらを見つめている。 こんなところに突っ込まれても、ただ辛いだけだ。それもこの行為を望んだ承太郎の気持ちを考えると、果てしなく深いところまで取り込まれて戻れなくなりそうだ。 性器を根元まで押し込み、血の繋がったふたりは身体までも完全にひとつになった。再び唇を重ねると、承太郎が背中に腕をまわしてきた。 「れ、も」 「どうした、承太郎」 「おれも、ずっと……愛してる」 熱い囁きが、ジョセフの胸を焼いた。旅の仲間にも家族にも決して言えない関係になり、もし今この部屋のドアが開いたらどうなるかと一瞬考えたが、それを振り切る ように腰を動かす。 愛している、これからもずっと。最後に行き着く先が、暗く汚れたものでも。 |