出撃中に練度が99に達した叢雲が執務室に戻ると、司令官である山岸は指輪を用意して待っていた。
 ケッコンカッコカリ。まさに自分が、この鎮守府で「儀式」を受ける最初の艦娘となった。



 ごつく長い指で充分に解された叢雲のそこは、逞しい性器をじわじわと飲み込んでいく。ベッドに仰向けに寝転んでいる山岸は何も言わずに、叢雲が腰を落としていく姿をまるで目に焼き付けるように眺めていた。
 山岸の性器は想像していたよりも太く大きい。避妊具越しでも、浮き出た血管や張り出したカリの感覚がはっきりと伝わってくる。処女を失ったばかりの叢雲は、圧迫感と痛みに耐えながらようやく膣の最奥まで山岸を受け入れた。
「ずっと夢見ていたんですよ。叢雲さんと僕がこうして結ばれるのを」
 山岸は息を震わせながらそう呟くと、叢雲の腰を両手でそっと押さえながら1度だけ軽く突き上げた。叢雲は短く声を上げて背を反らす。あれだけドMだの変態だのと罵り続けてきた男の性器に支配されて、この身体は淫らに悦んでいる。このまま自ら腰を振って、覚えて間もない快感を貪りたい。そんな自分に戸惑った。
 この鎮守府が立ち上がって以来、山岸の元には強力な艦娘が続々と集まった。戦艦や大型空母が資材を大量に消費しても、山岸は動揺するどころか「活躍した者がそれなりの報酬を得るのは当然のこと」だと、むしろ歓迎していた。
「そういえば僕、何故かは分かりませんが同性愛者だと思われていた時があったんです。昔の話ですけど」
「えっ?」
「まだ海軍に入る前の学生時代に、そっちの趣味の方を突然紹介されまして。さすがにびっくりしました」
 この男が同性愛者ではないことは、叢雲と性交をしている今の状況からして理解できる。出会う前の山岸がどのような振る舞いをしていたかは知らないが、男が好きだと誤解される何かがあったのかもしれない。
「僕はずっと、普通に女性が好きですよ。ほら、こんなふうに」
 今度は下から何度も突き上げられる。すでに山岸の性器が内側で馴染んでいるのか、子宮口を攻められるたびに叢雲は快感で我を忘れて山岸の上で喘ぐ。
――――――――『僕が艦娘に興味を持ったのは、あなたが海で戦う姿を見たのがきっかけでした』
 以前告げられた、山岸の言葉が頭によみがえってきた。叢雲が前に所属していた鎮守府の解体が決まり、行き場を失っていた時のことだった。
――――――――『砲撃で敵艦を沈める姿が誰よりも美しくて、それからもあなたのことばかり考えていました。提督としてはまだ未熟な僕を、そしてこれから着任する艦娘達を、叢雲さんに導いてもらいたい』
 上層部から新しい鎮守府を任されることになった山岸は、初期艦として叢雲を誘ってきた。あまりにも突然の申し出に驚いたが当時は深刻な出来事が重なり、叢雲は心身共に弱っていた。だからこそ、彼の言葉が胸に染みたのか。迷った末、山岸の元に身を寄せることを決めた。
 今改めて思い出すと、あの言葉は山岸からの告白のようにも聞こえた。そう勘違いしてしまうほど真剣な顔でまっすぐに見つめられて、呆然としてしまったのを覚えている。
 賢く気前の良い山岸は多くの艦娘達に慕われているが、自分の部屋に招き入れたり休日を共に過ごす艦娘は初めから叢雲だけだった。そうしているうちに叢雲のほうも少しずつ山岸に特別な感情を持つようになり、前から2人で決めていた通り指輪の儀式と共にこうして結ばれた。
 練度が上限に達するまでの長い時間を、山岸はキス以上の行為はせずに辛抱強く待っていたのだ。
「もう大丈夫、みたいですね」
「……なにが?」
「叢雲さん、さっきまでずいぶん緊張していましたよね。無茶をしたら怒られてしまいそうで、様子見してたんですよ」
「きっ、緊張なんか! してないわよっ……!」
「女性は敬うものだと、教えられて育ちましたから」
 明らかに面白がっている山岸に乳首を軽くいじられ、叢雲は身体をびくっと竦ませた。中に埋まったままの山岸の性器を強く締め付けてしまう。
 それまでは余裕の笑みを浮かべていた山岸が、眉根を寄せて低く呻いた。わずかに見せたその隙を逃すまいと、叢雲はにやりと笑った。
「私を甘く見た罰よ、根こそぎ搾り取ってやるんだから!」
 更に追い詰めてやろうと振り始めた腰は、山岸の両手でがっちりと掴まれて動けなくなった。
「だめですよ叢雲さん、僕のことちゃんと分かってくれないと。僕は前からあなたに言われている通り変態でドMなんですから、罰を与えたいなら動かずに焦らすのが1番です」
「あ、あんたねえ……っ!」
「根こそぎ搾り取ろうだなんて、僕にとっては最高のご褒美ですよ」
 そろそろ体勢変えますか、と言って山岸は叢雲の返事を待たずに身体を起こし、繋がったまま叢雲を仰向けに寝かせた。長身で体格の良い山岸が視界いっぱいに覆い被さってきて、逃れられなくなる。
 山岸は自らの両肩にそれぞれ叢雲の足を乗せて、身体を前に倒す。すると自然に叢雲の腰が浮き、山岸との卑猥な結合部を見せつけられた。避妊具に包まれた太く逞しい性器と、そこに絡みつく愛液のいやらしい音に眩暈がしそうだった。先ほどの体勢よりもずっと、山岸の腰の動きがよく見える。奥まで深く入ってきたかと思えば次は浅く、巧みに変化をつけてくる山岸の挿入に、叢雲は翻弄され続けていた。
「あ、はあっ……すごいっ、いいの……っ」
「僕も……叢雲さんの中、気持ち良すぎて、本当に全部搾り取られてしまいそうですよ……」
 山岸の動きに合わせてベッドが軋む音が大きく、激しくなる。息継ぎがうまくできずに、叢雲は口の端から唾液がこぼれてしまうのを隠せなかった。互いの欲望丸出しで求め合う、男女の行為がこんなに快感だとは思わなかった。今までずっと知らなかった。
 叢雲が誘うように山岸の頬に手を伸ばすと、唇を重ねた後で舌を絡め合う。上も下も山岸と繋がっているのだと実感する。
 キスの最中も山岸の腰は止まらない。叢雲を怒らせないための「様子見」は終わったのか、遠慮なく腰を打ち付けてきた。先ほどとは違い、焦らすことなくひたすら子宮口をがつがつと攻められる。
 山岸とは、前に所属していた鎮守府で出会った。そこの指揮を執っていた男の友人というだけで、特別な用もないのにやたらと鎮守府に出入りしていた。やがて目的が叢雲と絡むためであると本人から聞いた時は、心底呆れた。
 当時の山岸はすでに中佐という地位にあった。30代前半という年齢を考えると少し高い気もするが、それだけ有能である証かもしれない。
「もうだめ、いっ、いっちゃうの……っ、いくぅっ……!」
「そろそろ僕も限界……あなたの中で、いきますよ」
 低い声でそう囁かれ、身震いした。確かに山岸は避妊具を着けているのに、熱さを感じさせる囁きを聞いた途端に膣内へたっぷりと精液を注がれる想像をしてしまったのだ。そんなことは決して望んでいない。まだ……今は。
 一旦ゆっくりと引き抜かれた性器は、叢雲が気を緩めた直後に一気に押し入ってきた。薄い膜に包まれた性器が脈打ち、叢雲の中でどくどくと射精しているのが分かる。目も眩むような快感の中で、叢雲の膣壁は山岸の性器を無意識のうちに再び締め付けていた。少し前の宣言通り、熱い精を一滴残らず搾り取るかのように。



「叢雲」
 翌日、執務室に出向いた叢雲を山岸はそう呼んだ。不意打ちのような呼び捨てに、思わず耳を疑った。やはり指輪の儀式を済ませて身体を交えたので、今までの関係から更に一歩踏み込んだのか。
 振り向いた先で机の前に立っている山岸は、いつも通りの穏やかな笑みを浮かべていた。
「……さん、これが今日の遠征スケジュールとそのメンバーです。よろしくお願いします」
 呼び捨てだと思い込んでいたが結局違っていた。しかも名前と「さん」の間にはわずかな沈黙があったのが気に入らない。あまりにも思わせぶりだ。
「どうしました? 機嫌悪そうですね」
「別に! 何でもないわよ!」
 差し出された書類を受け取ると、叢雲は山岸に素早く背を向けた。
 一瞬でも期待してしまった自分が馬鹿みたいで情けない。同時に、山岸に呼び捨てされるのも悪くないと感じて恥ずかしくなった。
 あの白い軍服の下の体温や欲望、山岸の「男」の部分をすでに知ってしまったのだから。






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2018/1/7